過去に例をみないペースで増えるクマの目撃件数は、12月に入っても増え続けている。「クマは雪が降れば冬眠するもの」と思っている人も多いかもしれないが、私たちはいつまで警戒を続けなければならないのだろうか? 専門家に聞いた。
クマの生態に詳しい森林総合研究所の大西尚樹さんは、「冬眠の時期」と「雪」の関係について次のように指摘する。
(森林総合研究所・大西尚樹さん)
「タイミングとして、雪自体はクマの冬眠にそれほど影響しない。クマの冬眠を左右しているのは食料。“食べ物があるかないか”、これがなくなったら冬眠していく」
大西さんによると、山の中で生息するクマは、エサが尽きてしまいすでに多くが冬眠を始めているという。
一方で、市街地に出没するクマについては…。
(森林総合研究所・大西尚樹さん)
「遅くても今年いっぱい、今月いっぱいには冬眠してくれると思うが、もしかしたら1~2頭年越ししてしまう個体もいるかもしれない。例えば、柿が残っていれば1月まで残ってしまう個体もなくはない。可能性としては多少あるか。市街地に出没している個体は、個体単体でみると良いエサ場を押さえている。出没している個体のエサがなくなるまでは、なかなか冬眠してくれない」
東北森林管理局の調査では、2025年はエサとなるブナやドングリが2年ぶりの大凶作。
エサを求めるクマが市街地に多く出没した。
以前も実りが少ない年は人里にクマがおりてきたというが、近年は個体数が増えすぎたことで異常なほどの出没数に。
つまり、生息数が増えた分、ブナが大凶作になるたびに私たちの生活圏にクマがやってくるケースが増えるという。
(森林総合研究所・大西尚樹さん)
「クマの数が増えて分布域が広がっていて、私たちの生活圏とクマの生息域がくっついている。もしくは地域によっては重なっている。この状況が今後改善する見込みはあまりない。今年のような状況が2~3年に一度は起きると考えたほうがいい」
2025年の冬眠を待って、一度は出没数が減っても、2026年以降、危険と隣り合わせの状況は続く可能性がある。
2025年、県内ではクマによる被害で亡くなった人はいないが、大西さんは人への被害が多発する岩手・秋田の状況は「他人ごとではない」と強調する。
(森林総合研究所・大西尚樹さん)
「山形もクマの出没は相次いでいると思うが、岩手・秋田ほどではない。北東北、特に岩手・秋田は個体数が増える時期が早いというか、顕在化してくるのが早かった2023年から大変な状況だった。山形、となりの宮城とかは多分5年後とかに今の岩手・秋田と同じような状況になり得ると考えられる」
取材して一番驚いたのは、「寒くなり雪が降ってもクマが冬眠しない」ということ。
クマによる人的被害は13件(2025年度)と過去最多。11月には4件の人的被害があった。
県内では死者はまだ出ていないが、寒くなっても雪が降っても油断してはいけないということで、これ以上大きな被害を生まないためにあらためて注意していく必要があると強く感じる。
「秋田・岩手の状況は他人ごとではない」という専門家の話を心にとめたい。
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