南米原産の大型ネズミ・ヌートリア。静岡県湖西市や浜松市では農作物を食い荒らされる被害が相次いでいて、隣の磐田市も食害への警戒感を強めるとともに利活用の道を探る取り組みを始めました。
磐田市の北部に位置する豊岡地区。
県西部猟友会磐田分会・柳沢重博 分会長：
わなを設置するため、きょうは来ている
ターゲットはオレンジ色の特徴的な前歯を持つ南米原産の巨大ネズミ・ヌートリアです。
湖西市や浜松市では10年ほど前から目撃情報が増え、磐田市でも近年目撃されるようになっています。
県西部猟友会磐田分会・柳沢重博 分会長：
いずれ天竜川を渡って磐田市内に入って来るのではと前々から言われていた。頭数で言ったら今のところ10～20ではないか
このため磐田市・JA・地元の猟友会などは2025年9月、ヌートリアの対策に向けた協定を結びました。
JA遠州中央・山田耕司 代表理事：
ネズミなので何でも食べるということからすると、コメもあるしキャベツ・ネギ・イモもあるので、生産者に（脅威を）どのように伝えていくか、1回被害が出てしまうと手が付けられないと思うので早く広めていく必要がある
生態系や農作物に悪影響を与えることから特定外来生物に指定されているヌートリア。
11月10日。
浜松市から委託されている業者の駆除現場に同行させてもらうと…
ルーツ ジャパン・岡本浩明 理事長：
あっ！ここも入っていますね
記者：
いました。ヌートリアですね
捕獲されていたのは体長40cmほどの成獣。
さらに、すぐ近くに設置されたワナにもヌートリアの姿が…。
ルーツ ジャパン・岡本浩明 理事長：
（Q.ヌートリアはこういう場所を好む？）やはり水辺。水辺を好んで住みついたり移動したりしている。（Q.草も生えているが適している？）これだけ雑草も生えてあまり人も入らないところならば比較的安心していられるので好んで住みつくと思う
ヌートリアは明治時代に毛皮を利用するため日本に持ち込まれ、その後、野生化し、西日本を生息域としていましたが、10年ほど前からは浜松市でも出没するようになりました。
掛川通信部・大村秀行 記者：
もともと浜名湖の畔に生息していたヌートリアですが、このような水路を移動しながら生息する地域を拡大しています
市内では2020年度に30件程度だった目撃情報が年々増加していて、2024年度は619件に。
このため、市は4年前から業者に委託して駆除に乗り出していますが、2024年度に捕獲されたのは239頭に留まっています。
ルーツ ジャパン・岡本浩明 理事長：
目撃があったところで捕獲できるかというとまた別で、住んでいるところや巣の場所、エサを食べる場所を見つけて効率よく獲ることを心がけており、なかなか目撃件数と比例して捕獲頭数も伸びるという具合にはいかない
繁殖力が高いことで知られ、年に数回出産し1回あたり5頭前後の子供を産むと言われています。
さらに、噛まれたり、糞や尿に触れたりすることで感染症を媒介する可能性も…。
ルーツ ジャパン・岡本浩明 理事長：
（対策の）スピード感は一番重要。増える前に手を打つ。捕獲することが肝
農家・足立宗久さん：
田植えの時に休憩するところでヌートリアを見た。（Q.どんな感じだった？）動きがゆっくりで逃げもしなかった。（Q.この辺でも目撃情報は多い？）去年はそんなになかったが今年は急に増えた
浜松市ではすでに浜名湖から離れた浜名区と天竜区にまで生息域を拡大していて、足立宗久さんは2025年5月、稲をかじられる被害に遭っていて、農林水産省によればヌートリアによる農業被害は全国で年間 約5000万円に上っています。
農家・足立宗久さん：
たくさんの被害は出ていないが、今後どんどんひどくなるのが怖い。ここの川沿いの上の方でもけっこう出たらしいのでヌートリアが移動してどんどん繁殖しているのかと心配
こうした中、ヌートリア対策の一環として磐田市などが取り組んでいるのが捕獲した個体の利活用。
この日、草地博昭 市長が試食していたのはヌートリアの肉を使ったソーセージとトマト煮込みです。
磐田市・草地博昭 市長：
おいしい。ヌートリアかどうかわからないくらい
菊川市にある西欧料理サヴァカ。
西欧料理サヴァカ・山口祐之オーナーシェフ：
こちらがヌートリアの肉。（Q.どの部位？）大きい方がモモ、細長いのがロース。これで一頭分。中型の個体だがこれしか取れない貴重な肉
こちらではジビエコースの料理の1つとして、5年ほど前からヌートリアを提供しています。
西欧料理サヴァカ・山口祐之オーナーシェフ：
お待たせいたしました。こちらヌートリアのローストになります
掛川通信部・大村秀行 記者：
お肉やわらかいですね。独特の臭みというものは感じなくてしっかりと旨味が詰まっていて本当おいしいですね
西欧料理サヴァカ・山口祐之オーナーシェフ：
これは食べた人にしかわからないおいしさ
特徴は脂が少なく、タンパク質が豊富なこと。
食用に出来るのはきれいなところで捕獲され、すばやく処理されたものに限るといった条件はあるものの、来店客からの評判も良いと話します。
西欧料理サヴァカ・山口祐之オーナーシェフ：
食べる前はみなさん「えっ？」という顔をするが、食べた後に何が一番おいしかったか聞くと、「ヌートリアが一番」と言ってくれる人もたくさんいる。オスでもメスでも平均的な味でやわらかくておいしく、扱いやすい肉。タンパクなので和食から中華まで幅広く使える
磐田市は今後、研究者とともにヌートリアの肉に含まれる栄養分などを分析した上で本格的な活用方法について検討を進める考えです。
磐田市・草地博昭 市長：
どのくらいのコストで売れるものになっていくのか、流通の関係や処理施設をどうするのかなど課題がたくさん出てくると思うので、そうしたものを乗り越えていけばジビエとしての可能性はある
まずはヌートリアが生息する地域の拡大を防ぐことが第一ですが、繁殖力が高いだけに磐田市の取り組みが注目されそうです。
