世界に2枚だけのムササビの標識!?

道路標識は道路交通の安全を確保するために欠かすことの出来ない重要な物である。車で街を走ると「止まれ」や「駐車禁止」など普段見慣れたさまざまな道路標識を見かける。
また、山道を走るとサルやイノシシ、シカなど動物注意の標識を見たことのある方も多いと思う。

そんな中、ある動物に注意を促すかわいい標識が話題になっている。

これがこちら。

黄色の背景に、黒でムササビが飛んでいる様子が何とも可愛らしく描かれている。標識の下には「ムササビ横断注意(夜間)」と書かれている。

そう、これはムササビ横断注意の標識で長野県軽井沢町に設置されているのだ。



ひらち(@hiratira)さんが投稿すると、「初めて見ました」や「ムササビが通るのを待っちゃいそう」などのコメントが寄せられ、3万超のいいねが付いている。(7月18日時点)

しかし、一体いつ誰が設置したものなのか…

気になる設置者だが、森の生き物との出会いを楽しむ自然観察ツアーの開催や、ツキノワグマの保護管理をしている「ピッキオ」が制作、設置をしたもので、このムササビの標識は世界に2枚しかないという。

提供:ピッキオ

そして、「ピッキオ」はムササビが夕暮れの森に飛んで行く姿を観察する「空飛ぶムササビウォッチング」を開催していて、ツアーでのムササビ目撃率は90%以上となっている。(2017年:93.3%/2018年:97.8%)
高い目撃率なのは長年の調査により、生態や飛行ルートを把握しているためだという。

なぜこんなかわいらしい標識を作ったのか。そして、そもそも標識は自由に作れるものなのか。
「ピッキオ」にお話を伺った。

特に手指の位置についてはこだわった

ーーいつから設置した?

2011年5月頃に軽井沢星野エリア内で、野鳥の森へ続く道路の脇に、上り下りに向けて計2箇所に設置しました。

ーー設置の経緯は?

以前からムササビが道路上を滑空して横断することも把握しており、時に人の高さほどの超低空で横断する姿も目撃され、交通事故の可能性が懸念されていました。
ムササビは完全な夜行性のため、日中にその姿に気づくことはほとんどありません。お客様が看板を見ることによって、軽井沢には身近な場所にムササビをはじめとするたくさんの野生動物が生息していることを知ってもらいたかったためです。また、タヌキやシカ、ウサギ、サルなどは正規の道路標識として存在するため、あえてそれを模した看板を作る意味はありませんが、ムササビの道路標識は存在しないので、作ればオリジナリティがあって面白いと考えました。


ーー標識はどのように制作した?

スタッフが原画を描き、黄色いプラスチックの板に、原画に合わせて切り抜いた黒いプラスチックの板を貼り合わせて制作しました。


ーー標識はムササビのどんな所を表している?

滑空中の姿を表しています。ムササビは木の高いところから飛び降り、両手足を伸ばして皮膜を広げることで揚力を得て滑空します。はじめは落ちるスピードを生かして頭から落ちるように飛びますが、次第に頭を上にして迎角を大きくし、皮膜に当たる空気抵抗で減速しながら木の幹に着木します。標識のムササビは、その滑空終盤の姿を表しています

提供:ピッキオ

ーー標識でこだわった部分は?

本物の道路標識の動物注意に多い黄色地に黒のシルエットで、滑空中のムササビとわかるようにデザインしました。特に手指の位置については、誤ったイラストが世の中には多いのでこだわりました。また、目鼻口でムササビの可愛らしさと標識のパロディーとしてのユルさを、後ろの3本線と尻尾、耳の角度で滑空のスピード感を表現しました。

手指の位置にもこだわって作成 提供:ピッキオ

標識設置に自治体の許可は?

ーー標識を設置するにあたり自治体などに許可は必要なのか?

長野県では「屋外広告物条例」があり、その中で、軽井沢町は広告物の特別規定地域に指定されているため、原則として広告物を出す場合には、町の許可が必要です。しかし、今回の看板については、許可のいらない看板例の「国、県または町が設置するもので、公共上必要と認められるもの」に類するとの判断から、軽井沢町から申請不要であることの確認をとっています。


ーームササビは付近にたくさんいる?

ムササビは軽井沢の森林や別荘地には普通に生息し、ピッキオでは3月中旬から11月まで、毎日夕方に「空飛ぶムササビウォッチング」というプログラムを開催しています。2018年には、97.8%の確率でムササビの滑空を観察できています。


ーー他の標識を作る予定は?

他にもすでに「カエル横断注意」の標識を、3〜5月にはムササビ標識と入れ替えで設置していました。必要であれば、別種の看板も検討したいとは考えています。

提供:ピッキオ

ーーネイチャーウォッチングなどさまざまなツアーを行っているが今後挑戦したいことは?

ムササビをはじめとする野生生物の魅力を伝え、より多くの方に、生息環境も含めた自然への理解を深めてもらいたいと考えています。また、日本に生息するムササビは世界最大級の大きさです。ムササビの魅力をきっかけに、海外の方々にも日本の自然の価値を知ってもらえればと考えています。

世界に2枚だけのムササビの標識。かわいらしいイラストが話題になったが、そこには軽井沢の周辺にたくさんの野生生物が生息していることを知ってもらいたいという思いが込められていた。