顧客が暴言を吐いたり、不当な要求をするなどの行為を指すカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」。
今年6月には事業主に防止対策を講じることを義務付ける法改正が行われるなど、深刻な社会問題となっています。
こうした中、14日、カスハラの対応策を学ぶセミナーが富山市で開かれました。
セミナーはカスタマーハラスメントの防止対策を学んでもらおうと県が開いたもので、企業の経営者や人事・総務の担当者など約30人が参加しました。
セミナーの講師を務めたのは、日本カスタマーハラスメント対応協会の酒井由香副代表。
カスハラ増加の背景として、いわゆる「神対応」と呼ばれるサービスの提供により客が過剰な期待を持ってしまったり、SNSの普及によって苦情を言うことへの抵抗感が低下したことがあげられると指摘しました。
スタジオでは、一体、何がカスハラにあたるのか厚生労働省によると、カスハラになる可能性があるとして、次のような行為を挙げています。
「身体的・精神的な攻撃」たとえば暴行や威圧的な言動土下座を求めるなどの行為。
そして「要求内容の妥当性に照らし不相当とされる場合があるもの」たとえば商品交換の要求金銭補償の要求などです。
ただ、消費者としては一般的なクレームもありますよね。
どれがカスハラになるのか、悩む場面もあるんじゃないでしょうか。
クレームとカスハラ。
どのような場合がカスハラにあたるのか専門家に聞きました。
日本カスタマーハラスメント対応協会 認定講師 酒井由香副代表
「まんじゅう屋でまんじゅうを10個買った。そのうち1つがパッケージが破れていたので交換をお願いしたいと言った。交換するそのことまでは普通の申し出。その時に気分が悪いからさらに10個くれと言えば要求程度がおかしいとうことでカスハラっぽくなる。これに対して、すごく気分が悪いから土下座しろとか店主が出てきて詫びろというと態度が悪いことになるのでこれもカスハラになる可能性がある。要求態度が悪かったり、要求の程度が良くなかったりそれが常識の程度から外れるとカスハラに転換する可能性がある」
厚生労働省が2023年度に行った調査によりますと、過去3年間に従業員からカスハラの相談があったと回答した企業の割合は、27.9%にのぼり、3年前の調査に比べ8.4ポイント増加しています。
法改正で事業主にカスハラ対策が義務付けられ従業員などが働きやすい環境をどう整備するかが課題となっています。
県内でも行政や企業で取り組みが進められています。
県庁県民の窓口、富山県庁です。
これまで窓口の業務時間外に連絡なしで訪れ、同じ主張を何度も繰り返すといったものや…。
「知事に会わせろ」などといった特別扱いを要求するなどのカスハラ事案があったということです。
去年10月に行った調査では、対象とした1年半の期間に実に全体の4分の3の部署で、カスハラ事案が確認されました。
こうした事態を踏まえ、今年2月に策定したのが、カスハラの対応指針です。
指針では、カスハラを4つの類型に区分。
その上で、・時間拘束・リピート型・暴言・脅迫型・権威型・SNS等での誹謗中傷型それぞれに対応策を示しています。
例えば、時間拘束・リピート型の長時間の電話などの行為に対しては、一定の時間をもって対応を終了すると定め、悪質な場合には警察や弁護士に相談する等法的に対応するとしています。
こうした対応は企業でも進んでいます。
北陸銀行では、これまで窓口の対応が遅い場合に行員が客から叱責されたり、本部に設置している相談窓口で、カスハラに該当する電話を受けるなどの事案が確認されていました。
*北陸銀行 お客様相談室上席推進役 上村栄一さん
「長時間の拘束、同じ話の繰り返しやなかなか納得しないケースで長時間対応するケースや、暴言といった電話がかかってくる」
北陸銀行は去年11月、カスハラへの対応に関する基本方針を策定。
カスハラと判断される場合には、まずは落ち着いた話し合いを求めるとし、行為が継続する場合や悪質と認められる場合には警察や弁護士に相談するなどと定めました。
一方で、こんな難しさもあると言います。
北陸銀行 お客様相談室上席推進役 上村栄一さん
「どこまでを正当なクレームとみなすか、どこからがカスハラとみなすか、線引きが非常に難しい」
法改正で事業者側に求められるカスハラ対策。
セミナーで講師を務めた酒井由香さんはどういう行為がカスハラに当たるのか、認知が広がることでカスハラは抑制できる話し、顧客側と従業員側、双方で理解を進めることが大切だとしています。
日本カスタマーハラスメント対応協会 認定講師 酒井由香副代表
「何人たりともカスハラをしないさせないことが東京都の条例でも示されている。従業員が消費者になった時にカスハラの行為者になることはゼロではない。立場が違えばそのことが起こるかもしれないということを知っておくことも重要だと考えている」