「ネット選挙」が当たり前の時代に

参議院選挙も、7月21日の投開票日まで残りわずかとなった。
消費税や老後の年金問題など、私たちの生活と密接に関わる政策の在り方も問われていて、街頭では候補者が舌戦を繰り広げ、支持拡大に奔走している。

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そして今回の参院選では、インターネットを活用した選挙活動も目立つ。
ネットサーフィンをすれば、ウェブサイトに各党の広告が流れ、SNSを見れば、支持を呼びかける候補者の動画が拡散されている。ネット社会を象徴する光景と言えるだろう。
(参考記事:SNS発信はOKだがメールはNG! ネット選挙の仕組みと注意点

それでは、SNSユーザーはそんな選挙をどう捉えているのだろう。
今回は7月8日~15日の1週間を対象期間に、Twitterの公開投稿を収集。ビッグデータの解析ツール「Social Insight」で分析したところ、さまざまな傾向が見えてきた。

形容詞は「難しい」が1位

選挙があると毎回話題に上るのが、有権者の関心があるかどうか。
「投票しなければ変わらない」「行っても行かなくても同じ」...というやり取りはよく聞かれる話だ。

そこでまずは、「参院選」と「投票」を含む投稿を分析してみる。
すると、1日当たりで平均2万1,000件程度つぶやかれていることが分かった。土日祝日には投稿が増える傾向にあり、3連休最終日の7月15日には2万7,000件を超えていた。

「参院選」「投票」を含む投稿の推移
「参院選」「投票」を含む投稿の推移

気になる内容だが、「参院選」「投票」と同時に発信された言葉はさまざま。
単語の出現回数や重要度などをスコア化して、順位付けしたところ、名詞では「選挙」「政策」「投票率」など、動詞では「伸びる」「見直す」「減らす」など、形容詞では「難しい」「忙しい」「良い」などが上位にランクインした。

動詞と形容詞の分析結果
動詞と形容詞の分析結果

「参院選」「投票」と同時に発言された、特徴的なキーワード
【動詞】
1位:伸びる
2位:見直す
3位:減らす
4位:進める
5位:行く

【形容詞】
1位:難しい
2位:忙しい
3位:良い
4位:やばい
5位:強い


※順位は出現回数や重要度などから自動算出。高いほど特徴的とされる
※名詞は政党や候補者名が含まれるため除外


分析結果には政党関係者の投稿も含まれているため、一概には判断できないが、「行く」「決める」「変わる」など、政治への興味を感じられる言葉も目立った。形容詞で一番多かった「難しい」という言葉は、実際の投稿を見ると、政策・政党を選ぶのが「難しい」という意味だった。

「消費税」「改憲」「賃金」といった政治的争点もランクインしていたものの、どの政党や候補者に投票するかの決め手には欠けているようだ。

投稿はポジティブ?ネガティブ?

続いて投稿の感情を分析してみると、ポジティブが約6.5%、ネガティブが約4.6%、88.9%が中立という結果に。ポジティブがやや優勢だが、ほとんどが中立的な投稿と判断された。

ポジティブな言葉の例は、名詞が「選挙」「投票率」「期日前投票」など、動詞が「行く」「決める」「できる」など、形容詞が「嬉しい」「欲しい」「良い」など。実際の投稿内容では、投票を呼びかけるものなどがあった。

反対にネガティブな言葉の例は、名詞が「選挙」「消費税」「政治」など、動詞が「行く」「考える」「思う」など、形容詞が「ない」「酷い」「おかしい」など。実際の投稿内容では、消費増税への不満を訴えるものなどがあった。

年齢層で見ると...10代が寂しい結果に

そして、投稿者の傾向をみてみると、性別割合は、男性が約67%、女性が約33%となり、男性がやや多い。

ユーザーの年齢層で分類すると、投稿の約29%が20代、約32%が30代、約23%が40代で、これらの年代だけで全体の8割以上を占めている。

総務省の調査報告書によると、Twitterのメイン利用層は10~40代であり、これを反映した結果とはなっているが、10代の投稿が全体の約3%にとどまっているのは、投票権があるのは18歳以上とはいえ寂しい結果とも言える。
若い頃は政治に興味を抱きにくいものだが、選挙権年齢を18歳以上に引き下げる「18歳選挙権」の導入から、3年経過してこの数字なので、若年層の投票を促すアイデアなどがなければさらなる“選挙離れ”が進むかもしれない。

「ガチャ」や「玉子」まで...注目ワードが続々

このほか、選挙に関連したさまざまなキーワードを含む投稿も分析してみた。
投開票日の前に投票できる制度「期日前投票」を含む投稿は、1日1万~1万5,000件程度だが、7月15日には2万8,000件以上に。著名人が「期日前投票してきました」と報告するつぶやきがリツイートされ、触発して投票するユーザーも見られた。

「期日前投票」を含む投稿数の推移
「期日前投票」を含む投稿数の推移

投開票日に向けて、投稿数が増えているのは「選挙に行こう」という言葉。投票を促すスローガンとして用いられ、Twitterではハッシュタグ「#選挙に行こう」として使われることが多い。こちらは日を追うごとに投稿数が増え、7月8日は約5,000件だったが、7月15日には2万件を超えた。SNSでの盛り上がりがうかがえる。

「選挙に行こう」を含む投稿数の推移
「選挙に行こう」を含む投稿数の推移

このほか、一見すると選挙には関係ない言葉も注目を浴びた。
その一つが「ガチャ」。これはソーシャルゲームの課金システムで、ガチャを回してより良いキャラクターを獲得する仕組みだ。今回は東京都のある区議が、参院選を「ガチャ」、キャラクターを「議員」、課金を「税金」に例え、投票を促したツイートが話題となった。

選挙をガチャに例える投稿も(画像はイメージ)
選挙をガチャに例える投稿も(画像はイメージ)

このほか、「参院選」「投票」と同時に投稿された言葉には、「玉子」というキーワードもあった。
これは、ラーメンチェーン店の「一風堂」が行うキャンペーンの影響で、参院選の投票済証明書を見せると「替玉一玉」か「半熟塩玉子一個」が無料となる。一風堂の公式アカウントはキャンペーンについて「若い方が社会のことを考えたり、話し合ったりするシーンが生まれたら嬉しく思います」と投稿しており、ユーザーからも好意的な反応が寄せられていた。

一風堂のポスターの一例
一風堂のポスターの一例

参院選に関連する言葉を分析したところ、生活の困窮を訴える声、政治への関心を求める意見など、さまざまな反応が見られた。
「難しい」というワードが象徴するような今回の参院選だが、政治に興味がある人、興味がない人も「日本がより良い国になってほしい」という思いはあるはず。当日投票に行けない人は、期日前投票という方法もあるので、政治に参加してみてはどうだろうか。



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7月21日の投開票日の夜は、【Live選挙サンデー 令和の大問題追跡SP(よる7時56分~)】
MCの宮根誠司・加藤綾子が、古市憲寿・石原良純ら手加減なしの痛快ゲスト陣と共に令和の主役たちの素顔や、私たちに身近な新時代の大問題を徹底取材。怒濤の開票速報を展開しながら、各党首や候補者に「今聞きたいこと」を本音生直撃する。プライムオンラインでも、開票や全国の候補の当落の最新情報をリアルタイムでお伝えする。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。