てつたま。
鉄道の魅力を熱くお伝えする野川キャスターの「てつたま」です。

【野川キャスター】
全線開業90周年を記念して呉線を取材してきましたが、今回で最終回、終着駅へ到着します。
それでは…

<前回放送>
【野川キャスター】
「おっ!実物ですよね、うわー!」

前回は呉駅周辺で、列車のヘッドマークから駅舎や高架まで!呉線の歴史を紡いできたこん跡を取材しました。

<今回VTR>

続いて向かったのは、呉駅から広島方面へおよそ800m。
急斜面に家屋が密集する両城地区です。

【野川キャスター】
「この坂道もいかにも呉というね、そんな風景ですけれども、下って来ましてですね、左手にこちら。呉線の線路がありますが、ちょっとご覧いただきたいんですね。右側にね、今まさに呉線が使っているトンネルがあるんですが。その左側に目をやりますと、

もう一つ奇妙な穴があるんですね。左側に見えるあちらは旧線のトンネルでございます」

呉線は太平洋戦争開戦前の1941年3月に複線化工事が始まりました。
20キロのうち15キロの路盤と11のトンネルのうち9つが完成したところで、戦況悪化で工事はとん挫します。
終戦から25年が経過した1970年にこの路盤とトンネルを使って、呉線は全線電化されました。

旧線のトンネルの多くは、現在もそのまま残っています。

【野川キャスター】
「ですから、左に見えるあちらは、いわゆるSLが走っていた時代のトンネルなんですね。
その名残が手前の今、赤が灯っているあの信号なんですね。
もちろん現役です。
今も列車に指示を出し続けているわけですけど。


ちょっと『ん?』と思いませんか…ちょっと離れていませんか?今の線路から。
あの信号に関しては旧線時代から場所が変わっていないんだそうですね。
旧線時代からあの場所であの信号は灯り続けていたということで。
この不思議なスペースが空いているのは、そういった事情によるものなんだそうです」

せっかくなので、かつてSLも走っていた旧線のトンネルを間近で見てみましょう。

【野川キャスター】
「こちらが電化に際して放棄された旧線の線路および両城トンネルですね。ちょっと圧倒されます。右下のところはペンキでトンネルの概要を書いてありますね。両城トンネルとありますけども。中にこんもりと(土が)盛られていて、そこに緑がまた生い茂っているっていう…トンネルそのものは、非常に綺麗なアーチを描いて、一番上のキーストーンもシュッと端正な形で埋め込まれていますけども。ここをかつては、SLが通り抜けていて。
時が止まったかのような、とは申しません。やっぱり、時は経っているんだなと、今も進んでいるんだなと思いますが。やはりここに様々な物語があったんだろうなと。
SLが走っていた時代にこの場所に立っていたら、おそらく轟音を立てて、SLが迫り来る、そういうシーン立ち会ったんでしょうね」

続いては、川原石駅を過ぎたこの付近に戦時中の遺構があると聞き、訪れました。

【野川キャスター】
「あちらの方を見ていただくと、呉の港がこちらからも様子が伺えるというそんな場所なんですが。この近くに呉線の歴史を語る上で、非常に興味深い遺構が残っているということなんです。この先ですね、あ、あっ!ちょっと見えました。

あの線路の脇のところ、草が生えていますけど。その向こう側、コンクリートの支柱の土台のような物が確認できますか。かつて戦時中、呉線がここを走る際にですね。
ここから先、海の方には海軍工廠など様々な軍事施設がある中で、機密が漏えいするのを防ぐために、目隠しの板が設置されていたと。
あのコンクリートはその目隠し板の支柱(の土台)であるということなんですね」

その機密漏洩を防ぐための目隠し板なんですが、戦時中の広島と呉を舞台にしたアニメ映画『この世界の片隅に』で、その様子を見て取ることができます。主人公、すずさんの嫁入りが決まり、家族と共に呉へ向かうシーンで、列車が呉に近づくと、軍の基地がある海側の鎧戸をおろし、外が見えないように…

そして、トンネルを抜けると海側を覆い隠す板が延々と連なっている様子が描かれています。当時の呉で、いかに軍の機密が統制されていたか、わかりますよね。

【野川キャスター】
「こちらが昭和9年の呉鎮守府の検閲済の地図ということで。今、港関係のものがある場所はですね、縦に四文字漢字が並んでいまして…海軍用地と書いてございます。
ですから、海軍の用地なんだけども、詳しく何に使っているかというのは、地図に書いてはいけないということで、隠されている地図ということになるんですね。
そういった所を見せないようにするために、目隠しの板が設置されていた。
当時はここから呉方面に向かって、この辺り800mくらい目隠しの板がついていたそうで。その間、もう車窓はずっと板だったということになるわけです。
呉の街の歴史もそうですし、呉線の歴史を語る上でも、貴重な遺構になっています」

一日かけ呉線沿線をめぐって、すっかり日も落ち終着駅の海田市駅へ到着しました。

【野川キャスター】
「まさに今、帰宅ラッシュアワーです。たくさんのお客さんに日々使われている路線であるということを改めて感じましたし…おお!ちょうど呉線がやってきました…本当にたくさんの人に朝な夕なに使われている路線だということも改めてわかりました。海にとても近い区間もあって、車窓も楽しめますから。観光にももってこいの路線ということで、これからもますますたくさんの人に愛されていってほしいなと今日改めて感じた次第でございます。ちょうど上下線の列車が揃っているところですので、改めてこの度の呉線全線開通90周年、本当におめでとうございます。今日は一日ありがとうございました」

テレビ新広島
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