岩手県北部に位置する軽米町にある地名「蓮台野」(れんだいの)。町の中心部を流れる雪谷川と軽米小学校の間に位置する地域だ。そして、町の北部には、声をかけると返ってくるという不思議な伝承を持つ「ヤイホイ」という場所もある。どちらも、地元の人々に親しまれ、語り継がれてきた地名だ。
岩手県軽米町にある地名「蓮台野」(れんだいの)は、軽米町の中心部を流れる雪谷川と軽米小学校の間に広がる地域で、古くからこの名で呼ばれてきた。
長年にわたり岩手県内の地名を調査してきた宍戸敦さんは次のように語る。
宍戸敦さん
「『蓮台野』という地名は全国的にあり、例えば京都にもある。蓮台野の蓮台には仏様の座るところという意味があって、蓮台野は葬送する極楽浄土に導いてくれる場所という意味もあったと考えられる」
「蓮台野」という地名に含まれる「蓮」の字が示す意味について、この地に450年以上続く徳楽寺の住職・清水大徳さんは、「ハスの花は、泥の中から美しい花を咲かせる。仏様に縁のある花といわれている」と話す。
また蓮台野の地名の由来について清水住職は「色んな説がある。お釈迦様がお座りになっている台座、蓮の花の台座・蓮華台(れんげだい)。かつて蓮台野に隠居した人々が集まっていた、仏様に縁のある場所という意味もある」と説明する。
一方、町の北部には、なんともユニークな地名がある。その名も「ヤイホイ」。
町の中心部から雪谷川沿いを車で10分ほど進むと、大きな岩が見えてくる。これが「ヤイホイ岩」と呼ばれる場所だ。
「ヤイホイ」という場所は、「ヤーイ」と叫ぶと「ホーイ」と返ってくるという伝承がある。
軽米町政策推進課 小田島碧海さん
「ここ一帯が『ヤイホイ』と呼ばれている。後ろにそびえ立つヤイホイ岩。『ヤーイ』って叫ぶと『ホーイ』って返ってくるのが名前の由来となっている」
軽米町教育委員会 山下海斗さん
「詳しい文献は分かっていないが、映像として残ってるのが1988年ヤイホイまつりというのが行われていた映像が残っている。こちらの川を使ってニジマス釣りをしたり、団子を食べたりしていたという記録が残っている」
宍戸敦さん
「『ヤイホイ』も一つの地名だと考える。住所に使われる名称だけではなく、複数人が認識したものも地名となりえる。『ヤイホイ』も場所が地域の人々の共通認識になっている。これも一つの地名と言うことになる」
地域の人々に親しまれる「ヤイホイ」、軽米町で生まれ育った小田島さんも子どもの頃に訪れていたという。
小田島さんは「小さい時、親とヤイホイに来て、川で遊んだり、「ヤ―イ」と言ったりした。当時は、かすかに「ホーイ」と聞こえると感じた」と話す。
地元で親しまれてきた自然の楽しみ方がそのまま地名となっている「ヤイホイ」。体験できる「ヤイホイ」の歴史も地域を彩っている。