血圧を下げるトマト、毒がないジャガイモ、さらに肉厚のマダイ…これらは、いずれも「ゲノム編集食品」だ。

厚生労働省は、10月1日からこうしたゲノム編集食品の流通の届け出の受付を始めると発表。まもなく食卓にのぼるとみられる。
しかし、消費者庁はゲノム編集食品の表示を義務化せず、任意の扱いにするとしていて、消費者からは不安の声も聞かれた。

女性A:
(表示が)あった方が安心して買えることはありますね。

男性A:
子供たちの世代にどういう影響が出るか心配ですね。

話題のゲノム編集食品について、メリットと不安な点を見ていく。

味や栄養を自在に編集 最新技術で生産量アップ

この写真は、上がゲノム編集されたマダイ、下が通常のマダイだ。ゲノム編集されたマダイは、身の量が通常よりも1.2倍と肉厚になっている。

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上から見ると、厚みの違いが一目瞭然。

また、肉厚マダイが水槽の中で泳ぐ映像を見ても、目がくぼんで筋肉が発達していることがわかる。

そもそも「ゲノム編集」とは、遺伝子を切断するなどして、遺伝情報を改変する技術のこと。

例えば、この肉厚マダイの場合は、筋肉の発達を抑える遺伝子を切断することで、肉厚に育つような変異が起きる。ゲノム編集は、味や栄養などを自在に変えられる最新の技術だ。

これは、実際にマダイのゲノム編集を行う貴重な映像。まず、マダイから卵を採取して人工授精を行い、次にいよいよゲノム編集へ。

受精卵の中に「遺伝子を切断する物質」を流し込み、筋肉の発達を抑える遺伝子を切断する。

気になる味に変化はあるのか?

近畿大学水産研究所・家戸敬太郎教授:
味はあまり差がないように思いますけど、ちょっとモチっとした食感で、やや普通のマダイよりは柔らかいかなと。

また、価格についても…

近畿大学水産研究所・家戸敬太郎教授:
餌代は少なく(抑えられる)上に、(私たちが)食べる量が増えるということになるので、(値段は)下がりそうな気がします。

ちなみに、よく耳にする「遺伝子組み換え」は、例えば白いバラの遺伝子の一部をパンジーなどの青い性質をもつ遺伝子と組み替えて、自然界には存在しない「青いバラ」などを生み出す技術。
遺伝子を切断するなどして遺伝情報を改変する「ゲノム編集」とは異なる。

また、ゲノム編集で成長を促進させたフグも、1年半で通常のフグよりも大きくなっている。生産量が増えることで、 高級食材のフグも安く食べられるかもしれない。

野菜にも応用される一方「表示義務化なし」に賛否も

同じ理論でできたものに「毒のないジャガイモ」がある。

通常のジャガイモは芽などに毒が含まれていて、食中毒を起こす恐れがあるが、ゲノム編集をすることで「毒を作る遺伝子」を壊すと、毒なしのジャガイモができるのだ。

大阪大学大学院工学研究科・村中俊哉教授:
毒がないということになると、管理コストがなくなることが考えられます。毒がないばかりか、芽がのびにくいというものも今開発しようとしていて、そうすると長期間保存できて安定供給もできるようになります。

このジャガイモの開発に携わった村中教授によれば、ゲノム編集は通常の品種改良よりも的確で、効率的に食品をよいものに変えられるという。

さらに、筑波大学の研究者らが開発しているのが「血圧を下げるトマト」で、GABAという血圧を下げるアミノ酸を多く含んでいる。

まさに、いいことずくめにも見える「ゲノム編集食品」。しかし、警鐘を鳴らす専門家もいる。

北海道大学・石井哲也教授:
ゲノム編集食品は、リスクなどの届け出をする義務は基本的にはないので、そこが非常に問題点。表示義務が課されないので、不安に感じる人はいるだろうと思います。

既に流通している遺伝子組み換え食品は、審査を受けることが法律で義務づけられている一方、消費者庁は9月19日、ゲノム編集食品については表示を義務化せず、任意の扱いにするとした。

また、厚生労働省もゲノム編集食品を取り扱う開発者や輸入者からの届け出は任意とし、届け出のあったものについてはホームページで公表するという。

では、実際に食品を扱うこととなる販売業者はどう受け止めているのか?東京・足立区のベニースーパー佐野店で話を伺った。

ベニースーパー 本部長・赤津友弥さん:
非常に販売するにあたって心配です。お客様が不安に思う商品は積極的には売らない、もしくは不安になる商品でも、私たちの方で自信を持って売ることができる商品ならば、そういったものを払拭するための努力はしていきたいと思います。

消費者庁によれば、別の遺伝子を加えることなく、自然界や品種改良で起こる変化の範囲内であるため、安全だとされるゲノム編集食品。広く一般に認知されるまでには、課題もあるようだ。

(「めざましテレビ」9月20日放送分より)