植木鉢の中で珍現象

神奈川・横浜市内のとある自宅で撮影された珍現象が、FNNビデオPostに届いた。

植木鉢に植えられた、高さ150cmほどのモミの木。
22日夕方、幹の表面に違和感を感じ、近寄ってみたところ…ボコボコの正体は、なんと「ニイニイゼミ」の抜け殻! 少なくとも20個はあると思われる。

10年前から木を育てている投稿者の母は、「鉢の中の土に数カ所、穴ができていたので『何だろう?』とは思っていました。まさか、セミだったとは…」と、驚いた様子。
抜け殻は、2cmくらいの大きさで、表面はみな泥だらけだったそう。

なぜ、抜け殻が鈴なり状態になってしまったのだろうか?
昆虫生態学が専門の長崎大学の大庭伸也准教授にお話を聞いた。

植木鉢が安全な場所だった

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ーーなぜ1本の木に集中したのか?

ニイニイゼミの卵は、枯れ木などに産みつけられ、およそ40日でふ化し、幼虫は土中で3年ほど過ごします。
幼虫の死亡率が高いのは木から土に降りる時で、外敵に狙われてしまうため、すべての幼虫が無事、成虫になれるわけではありません。

そのため、植木鉢の中がセミにとって安全な場所だったことで、同じメスが産んだ卵が無事、羽化した可能性が考えられます。

ーーこの抜け殻のセミたちは、きょうだいということ?

複数のメスが卵を産んだ可能性もありますが、20個のうち、数個の抜け殻のセミはきょうだいである可能性が高いですね。

この植木鉢の中には、成長が遅れた個体が残っている可能性もあると思います。
これからも出てくるかもしれませんね。

泥だらけの理由は、体の乾燥を防ぐため

ーーニイニイゼミの抜け殻は、なぜ泥だらけ?

幼虫が生存するには、湿気を多く含んだ土壌が必要で、乾燥している場所では見つかる数が少ないセミです。

抜け殻が泥だらけになる理由は、体の乾燥を防ぐためで、何らかの分泌物を使って塗るのではないかと思われますが、詳細は不明です。

ニイニイゼミ以外では、対馬のみに生息する「チョウセンケナガニイニイ」や、南西諸島にいる「クロイワニイニイ」というセミも泥がつくようです。
いずれもニイニイゼミと近い仲間ですね。


動画の投稿者によると、この植木鉢にはコケも植えていて、まめに水やりをしていたそう。
いつも湿っている状態だったことも、大量羽化にひと役買っていたのだろうか。


(執筆:清水智佳子)

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