池袋暴走事故から1年半…ついに初公判

東京・池袋で2019年4月、当時87歳の被告が運転する乗用車に母と娘がひかれて、死亡。通行人ら9人が負傷した事故の初公判が10月8日、東京地裁で行われた。

旧通産省の幹部だった飯塚幸三被告(89)は起訴内容を否認、無罪を主張した。

起訴内容を否認・無罪を主張した飯塚幸三被告
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初公判の日、雨の中、家族の遺影を持ち、東京地裁に向かう松永拓也さんの姿があった。

2019年4月、東京・池袋で暴走する車にはねられ、妻の真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃんを(当時3)を亡くした。

ようやく始まることになった裁判に、松永さんは何を思うのか?加藤綾子キャスターが松永さんを訪ね、その胸の内を聞いた。

5日、松永さんとともに向かったのは家族3人が事故直前まで暮らしていた部屋。

加藤綾子キャスター:
ここが3人で住んでいたお部屋ということですよね?

松永拓也さん:
そうですね。事故の後はもう住んでないんですけど、ここで、3人で生活していました…

事故の後はつらさのあまり、入ることができなかった部屋。しかし今では二人の面影を感じに、時々、足を運んでいるという。

加藤綾子キャスター:
以前、1年前に来た時はこの中には入れないとおっしゃってたんですけど、いつから入れるようになったんですか?

松永拓也さん:
そうですね。あの後、取材の後からはわりかし普通に入れるようになって。つらい思い出でも思い出してしまうというか、幸せだったなとか。それと同時に、いい思い出だったなと思えるようになってきて…こうならないのが一番でしたけどね…

部屋はあの日から時が止まったまま

部屋はあの日から、時が止まったまま。部屋にはキッチンセットのおもちゃが置かれていた。

加藤綾子キャスター:
これ莉子ちゃんのですか?

松永拓也さん:
そうです。これ2歳の誕生日の時にプレゼントしたものなんですけど、店によく買い物を行っていたんですけど、そこで莉子が見本で一番よく遊んでたので、買ってあげようって。

加藤綾子キャスター:
あの壁に飾られている絵というのは?

松永拓也さん:
これは平成31年の4月11日なので、事故が4月19日だったので、8日前にサンシャイン水族館に行って。カメを見てカメを描いたみたいで。本当はこんなつもりで描いた、こういう思い出の残し方をするつもりはなかったんでしょうけど。でもこうなってしまったときに、こうやって描いてくれているから僕もこういう意味で、莉子が描いたんだなと振り返ることができるから。これも当時のまま、ここに張ったままなんですが…

部屋には真菜さんが残していた、家族の写真も。莉子ちゃんが生まれてからの思い出を、毎月アルバムにしていたという。

また部屋にかけられたカレンダーは2019年4月のもの…

加藤綾子キャスター:
このカレンダーも事故当時のままというこということですか?

松永拓也さん:
そうですね。4月19日が事故のあった日で、そこからめくれてないんですけど…

加藤綾子キャスター:
これをはずせないということですよね。このまま残しておきたいと?

松永拓也さん:
これをめくっちゃうと、自分だけが時を進んでいくというのを認めちゃう気がして…

始まる裁判から「逃げたくない」

事故から1年半。松永さんはどのような日々を送ってきたのだろうか?

松永拓也さん:
一日一日が苦しみと悲しみと、一瞬一瞬向き合う時間で。一日終わるごとに、「終わった また明日から」またその一日が始まってというのを繰り返している…

今も二人を失った悲しみに向き合い続ける松永さん。

加藤綾子キャスター:
初公判が木曜日(8日)にありますけれど、今どのような気持ちでいらっしゃいますか?

松永拓也さん:
恐怖心とか、緊張とかが本音を言えばありますけれども。でも私は逃げたくないんで…

加藤綾子キャスター:
初公判で初めて、飯塚被告を目の前にされるということですね?

松永拓也さん:
面と向かってというのは初めてなので。正直だから、自分自身がどうなってしまうのかという恐怖心もあるんですよ。(被告を)見たときに。でも、それから逃げたくないので…

冒頭に謝罪も…飯塚被告は無罪を主張

そして迎えた、8日の初公判。飯塚幸三被告は罪状認否の冒頭に謝罪した。

飯塚幸三被告:
事故により奥さまとお嬢さまを亡くされた松永さまとご親族に、心からおわびを申し上げます…

レストランでの昼食に向かう最中に起こした事故。暴走の原因についてはこう述べた。

飯塚幸三被告:
アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶しており、車に何らかの異常があって暴走したと思っています

と、起訴内容を否認・無罪を主張したのだ。

イラスト:石井克昌氏

これに対し検察側は事故の直前も正常に運転できていた、車に異常は確認できずアクセルペダルの破損もない」として、飯塚被告の主張を否定した。

裁判後、松永さんは…

松永拓也さん:
加害者が謝罪をしたときも、私の目を別に見ているわけじゃなかったので。誰に向けて謝っているのかなと。公判中はずっと伏し目がちだったので。1回だけ目が合ったんですけど、すぐそらされてしまったんですけど。車の不具合を主張するのであれば、私は別に謝ってほしくはない…

飯塚被告の言葉に遺族は何を思うか?

スタジオではジャーナリストの柳澤秀夫さんに話を聞いた。

加藤綾子キャスター:
飯塚被告は無罪を主張しましたが、柳澤さんはどのようにご覧になりましたか?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
事実関係はこれから公判で明らかにされていくと思うのですけれども、でも自分に非がない、謝罪の言葉があったとしても、自分に非がないという言葉をご遺族が聞いたときに、どういうふうに受け止めるか考えるだけで、胸が締め付けられるくらいに切ない気持ちになりましたね

加藤綾子キャスター:
事故から1年半が経って、松永さんの今の気持ちを取材させていただきました。亡くなった奥様、そして娘さんの思い出を穏やかに話してくださった一方で、印象的だったのがVTRにもありましたが、「どんなことがあっても逃げない」とまっすぐに目を見て話す姿に、「二人の命を絶対に無駄にしないんだ」という強い覚悟を感じました

加藤綾子キャスター:
この事故は高齢者の免許返納など大きく社会を動かしたにもかかわらず、それでもまだ事故は後を絶ちません。松永さんは同じような悲しい思いをする人が一人でも減るようにとの思いで、本名を公表して活動されています。同じような悲劇を繰り返さないために、私たち一人一人が当事者意識を持たなければならないと思います。

(「イット!」10月8日放送より)