豪華女優陣と共演…ポスターの五星紅旗に“違法”指摘

2018年に脱税騒動で日本でも話題となった中国の有名女優ファンビンビン(范冰冰)さん。税務当局から追徴課税など約146億円の支払いを命じられ、謝罪を表明したが、しばらく表舞台から遠ざかっていた。

あれから2年が経ち女優業を再開させたファンさんは、ハリウッド映画にも復活を果たした。復帰第一作となるのはジェシカ・チャステインさん、ペネロペ・クルスさん、ルピタ・ニョンゴさん、ダイアン・クルーガーさんという豪華女優と共演したスパイアクション映画「The 355」。2021年1月15日に全米で公開されることが決まり、このほどトレーラーと公式ポスターが発表された。

それぞれの国の女性スパイが共通の目的のために国際スパイチームを結成するストーリーだが、そのポスターのデザインをめぐり中国内で「国旗法違反ではないか」などと問題視する動きが出ている。

映画「The 355」のポスター 5人の女優の後ろに国旗が描かれている  (ファンビンビンさんの公式インスタグラムより)
映画「The 355」のポスター 5人の女優の後ろに国旗が描かれている  (ファンビンビンさんの公式インスタグラムより)
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「国旗法」とは…

ポスターは、5人の国際的女優がそれぞれ映画で演じている役どころの出身国の旗を背景にして写るデザインだ。しかし、中国のネット民の間でこの国旗の扱いが中国の「国旗法」や「広告法」に違反するのではないかと議論になっている。

中国では「国旗の尊厳を守り、公民の国家観念を高め、愛国主義精神を発揚するため(第1条)」として、1990年に国旗の扱いを定めた「国旗法」が制定されている。

中国の国旗法17条には「規格に合わない国旗を掲げてはならない」との一文があり、中国国旗が横向きになっている今回のデザインについて一部のネット民は「明らかに法律の規定に反している」と主張している。

また、国旗法18条には「国旗及びその図案は商標や広告に使ってはならない」と書かれているほか、広告法9条では「国旗、国歌、国章、軍旗、軍歌、軍章の使用と形を変えた使用」が禁じられている。

このため中国版ツイッター・ウェイボでは「法律違反」との指摘のほか、「中国国旗を侮辱している」との怒りの声が挙がっている。一方で、「(ポスター上の)他の国の国旗も同じじゃないか」といった冷静な声もある。

中国国内上映に影響も?

実際、中国国旗が映画のポスターに使われたケースは以前にもある。2017年の人気アクション映画「戦狼2」のポスターでも主人公が中国国旗を腕に着け高々と掲げるデザインが採用されていた。

中国メディアによると、この時も同様の指摘があったものの、結局問題とならなかったばかりか、映画は大ヒットを記録した。「戦狼2」は愛国主義を高揚する内容であるため、問題となるかどうかは国旗の扱われ方による可能性がある。

ちなみに、外交官による過激な言動や好戦的な手法で最近の中国外交の代名詞となっている「戦狼外交」はこの映画に由来する。

愛国映画「戦狼2」でもポスターに中国国旗が使われていた
愛国映画「戦狼2」でもポスターに中国国旗が使われていた

中国では海外映画の上映本数に制限がかけられているほか、中国を貶める内容や中国共産党や政府の見解に合わない内容の映画は上映が許可されない。

中国メディアによると、ファンさんはこの映画のために、英語の特訓や、各種の美容のほか、長時間にわたってジムでボクシングのトレーニングを積むなど多くの努力をしてきた。

中国国内の上映はまだ決まっていないが、ポスターが問題視されてしまったことで、影響が懸念されているという。

【執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋】

高橋宏朋
高橋宏朋

フジテレビ政治部デスク。大学卒業後、山一証券に入社。米国債ディーラーになるも入社1年目で経営破綻。フジテレビ入社後は、社会部記者、政治部記者、ニュースJAPANプログラムディレクター、FNN北京支局長などを経て現職。