“街を盛り上げたい”室蘭の夜空を鮮やかに

9月19日、北海道・室蘭市で、夜空をレーザー光線で照らすイベントが行われた。
“工場群の夜景”で有名な室蘭市。
コロナ禍で落ち込む街を盛り上げたいと願い、始まったイベントの実現には、さまざまな人たちの思いが込められていた。

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夜空に浮かび上がる鮮やかなレーザー光線。
港に集まった約3,000人の観客を魅了した。

企画した荒井純一さん。舞台などの照明の仕事をしている。

プロジェクトを企画した荒井純一さん:
室蘭市の大黒島で、レーザー光線を夜空に投射する企画を進めている

巨大な工場群とライトアップされた白鳥大橋の夜景が美しい室蘭市。
そこにレーザー光線を放ち、光の共演で、コロナ禍で落ち込む街を元気づけるプロジェクト「希望の光を照らしたい」を企画した。

ーー資金は?

プロジェクトを企画した荒井純一さん:
クラウドファンディングで支援を募りまして

さまざまなイベントが相次いで中止となり、荒井さんも仕事が激減。
プロジェクトの費用を募ったところ、1カ月間で111人から、およそ140万円が集まった。

プロジェクトを企画した荒井純一さん:
最高額は25万円ですね

最高額の25万円を出資したのは、ある夫婦。
その特典は、当日に湾内をクルージングして船内で結婚式を挙げること。

「末期がんの父親に何としても花嫁姿を」

登別市で整体サロンを営む五十嵐祐哉さん(28)と幸江さん(35)夫婦。
2019年4月に入籍、2020年2月に開業したばかりの2人にとって、25万円は小さな金額ではないが、出資したのには訳があった。

五十嵐幸江さん:
父が6年前にがんになり、結婚式まで体調がもたないのではないかと思いまして

7月に結婚式を挙げる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で、2021年1月に延期した。
末期がんの父親に、何としても花嫁姿を見せたいという。

プロジェクトを企画した荒井純一さん:
工場夜景や白鳥大橋も一緒に撮って、観光につなげたい

プロジェクトの実現のため、荒井さんは室蘭市や企業を回り、協力を求めた。

プロジェクトを立ち上げた理由は少年時代に…

荒井さんが、このプロジェクトを立ち上げた理由は…

プロジェクトを企画した荒井純一さん:
元々は室蘭に両親が住んでいて、僕が生まれて登別市に引っ越した。子どものころから、室蘭に買い物や映画を見に来ていた

1970年には人口16万人以上を数えた室蘭市だが、現在は8万人にまで落ち込んでいる。

「少年時代の思い出が詰まった街を活性化したい」

こうしてプロジェクトが始まった。

「きっと、この空のどこかで」

衣装合わせのため札幌にやってきた、五十嵐祐哉さんと幸江さん。
当日の打ち合わせを進めるが、残念なことがあった。

五十嵐幸江さん:
感謝の手紙を結婚式で読むようにやりたかったんですけど、父が亡くなってしまったので…

闘病中だった父親の深戸善勝さんが、念願だった娘の花嫁姿を見ることなく、7月10日に亡くなった。

五十嵐幸江さん:
天国の父に見てもらえたらいいかなと思って、このままやりたいと思ってます

さまざまな思いを込め、室蘭の夜空を染める日を迎える。

室蘭の夜空にレーザー光線を放ち、街を元気づけるプロジェクト「希望の光を照らしたい」。
その日がやってきた。

プロジェクトを企画した荒井純一さん:
点灯カウントダウンを行います

湾の入り口にある無人島の大黒島から、レーザー光線を放った。

五十嵐祐哉さん・幸江さん:
行ってきまーす

五十嵐祐哉さん:
きょうはすごくいい思い出になった

五十嵐幸江さん:
父さんに見せてあげたかったなって

ーーお父さんは見てないでしょうか?

五十嵐幸江さん:
きっと見てくれていると思います。この空のどこかで

会場となった港には、約3,000人が集まった。

室蘭市民:
こういうことをやってくれるのはうれしい

室蘭市民:
室蘭を盛り上げようと考えてくれてありがたい

室蘭市民:
これは長生きするもんだね

プロジェクトを企画した荒井純一さん:
これが始まり。今後、いろんな人たちを巻き込んで「室蘭はいい」と思われるように新しいことをやっていきたい

光のアートで室蘭の街を盛り上げたい。
荒井さんの挑戦はこれからも続く。

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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