防犯カメラなどの映像で容疑者を追う専門部署が、今年度、県警本部に新たに設置されました。広島県警密着24時シリーズ第8弾。
凶悪事件の解決に期待がかかる映像捜査の最前線に迫ります。
【警察官】「無施錠の玄関から犯人が入ってきた。これを鮮明化するという事で…」
【記者】「移動してますね」
【警察官】「そうですね。こっち側さきほどの映像では全くそうですねこちらは真っ暗だったので」
真っ暗で見えなかった犯行の手口が、映像の解析で、鮮明に…
防犯カメラの映像などから容疑者の足取りを追う捜査集団、広島県警の捜査支援分析課=通称「CISA」(シーサー)です。
今年4月に新設された映像解析のプロです。
【警察官】
「人の記憶は間違いとかあると思うんですけど、映像は間違いないので」
防犯カメラ捜査の最前線。
「CISA」の活動に密着です。
【竹内記者】
「ゲートパークプラザです。入り口には施設の案内掲示板があるんですが、その裏側紙がテープで止められた場所があります。今月1日、ここにらくがきが見つけたということです」
巡回中の警備員が見つけたという“らくがき”。
近くの街灯にも同じらくがきがあり、同一犯とみられています。
公園の管理人が今月3日に被害届を提出。
警察は器物損壊事件として捜査を開始しました。
【寺畠章太巡査部長(43)】
「防犯カメラを見させていただきたいんですけど、大丈夫ですか?」
容疑者の特定に向け映像収集を任されたのは、寺畠章太巡査部長(43)と山崎春奈巡査長(38)。
今月15日、現場周辺で防犯カメラを探します。
【捜査支援分析課(CISA)・寺畠章太巡査部長】
「(犯行)時間は特定できてないんですけど、それを防犯カメラで」
2人が向かったのは、らくがきされた街灯の目の前にある、こども文化科学館。
【職員】「これですね。みてもらったらと思うんですが」
【寺畠巡査部長】「外の画面って」
【職員】「これ」
入り口の防犯カメラが現場を写していました。
らくがきされた街灯も確認できます。
【寺畠巡査部長】
「ここの現場はこれが一番近いんでこれを見るしかないかな」
警備員がらくがきに気づいたのは今月1日の午後10時半ごろ。
前日の同じ時間に巡回した時には、らくがきはなかったといいます。
つまり、先月30日の午後10時半から丸1日の間。
さらに、人目の少ない夜間に犯行が行われた可能性が高いとみて、夜の時間帯をチェックします。すると…
【寺畠巡査部長】「警察官?」
【山崎巡査長】「そうなんですよ。私も思った」
【寺畠巡査部長】「通報があって職務質問してるのか?」
【山崎巡査長】「ちょっとその辺確認したほうがいいかもしれない」
先月30日夜、現場にいた人に職務質問する警察官の姿を確認しました。
【竹内記者】
「映像の確認が進んでいるんですが、私が見る限り小さくて警備員や警察官と判別できないですね。やはり目が鍛えられているんでしょうか」
手がかりとなりそうな人の姿はあったものの、犯行の様子は写っていませんでした。
【捜査支援分析課(CISA)・山崎春奈巡査長(38)】
「(防犯カメラが)欲しいところに必ずあるわけではないですし、みなさん守りたい箇所があってつけていらっしゃるものなので、私たちはその皆さんがつけていらっしゃるものの中で(容疑者を)追わせてもらえる形になるので、たった数ミリ数センチくらいの写っているものを追わせてもらうこともあります」
犯行が写っている映像の入手を目指し、そこから、収集の範囲を広げて映像をつなぎ合わせる。
「リレー捜査」といわれる手法で、容疑者の足取りを追います。
映像入手のため、防犯カメラを付けている施設や店舗、住宅に、協力を求めます。
【山崎巡査長】
「協力してくれて『頑張ってね』と声をいただく。すごく励みになる。デジタルでありながら一番アナログかもしれないです」
「CISA」発足のわずか2週間後。
世間が注目する事件が起きました。
【胡子記者】(4月・水分峡森林公園)
「警察関係車両が現場へと入っていきます」
府中町の夜の公園で起きた強盗殺人事件。
CISAは事件翌日から最大人員を投入してリレー捜査を実施。
県内外あわせて620カ所、3400時間分の映像を収集・分析し、事件への関与が疑われていた男女3人の足取りを突き止め、逮捕に至りました。
容疑者特定に向けた映像解析はどのように行われたのか。
「夜の公園を人が歩いている映像」を使って、解析の一部を見せてもらいました。
【竹内記者】「これだとなかなか識別が…」
【捜査支援分析課(CISA)・花田綾巡査部長(37)】
「女性なのかどんな服を着ているのかも難しいと思うんですけど、鮮明化するとこの暗い画像が…このように明るくなりまして、動画であればちょっと再生してみます」
【竹内記者】「こうなると女性?」
【花田巡査部長】
「髪を後ろで束ねている女性かな、リュックか何か背負っているかなというところまでわかるのかなと」
【竹内記者】「結構はっきりわかるようになりますね」
【花田巡査部長】
「暗い画面に関してはこれくらいきれいに鮮明化することができます」
顔や衣服の特徴、車のナンバーなど、容疑者につながる情報を鮮明化します。
専門部署となったことで、事件に限らず、交通事故などさまざまな事案の解析依頼が舞い込んでいるということです。
【花田巡査部長】
「それはもう防犯カメラの捜査というのが時代的に増えたからだと思うんですけど。(解析の)件数は増えてもこつこつ時間はかかるかもしれないですが、一つひとつ丁寧に鮮明化をしていきたいと思っています」
「早く見つけたいですね」
「ですね」
らくがきの容疑者特定に向け、映像収集を進める2人。
彼らが注目したのは駐輪場に設置された防犯カメラの映像。
ここから50メートルほど離れたところに、らくがきされた案内板があります。
寺畠:「ちょっといいっすか」
【山崎巡査長】
「行ってきます」
【山崎巡査長】
「(ダッシュ)写っているのかがちょっとわかりにくかったんで私が現場のところに立ってみてちゃんと写っているかどうか位置を2人で確認しあっている」
2人で、防犯カメラに写る画角を確認したところ、看板の近くにいる人物が写ることがわかりました。
【寺畠巡査部長】
「ここで特定しちゃいましょうか」
このカメラに、容疑者が写っていると確信した2人。
しかし…
【山崎巡査長】「近くを歩いている方はいるんですけど、『この人』という決定的なものはなくて」
【寺畠巡査部長】
「もうちょっと早く見つかる予定だったんですけど」
想像以上の苦戦…ただ、「写っていない」という事実も、貴重な情報だといいます。
【山崎巡査長】
「写っていないことで(容疑者が)こっちに来ていないことがわかったりとか写っていないことでそっち方向わたしたちが(捜査範囲を)広げていく必要がなくなったりとか見せてもらった箇所全てがわたしたちの捜査の流れになるので、どこもありがたい情報」
県警本部に戻り、収集した映像を細かく確認しても、犯行は写っていない事がわかり、関係者に再度話を聞き、犯行推定時刻を見直すことにしました。
【山崎巡査長】
「見ていない時間帯が確かにありますので、そこを確認したうえで防犯カメラは嘘つかないので。証拠能力が高い部分でもあるので捜査が重要になっていると感じている」
【寺畠巡査部長】
「これからの時代リレー捜査でどんどん犯人を逮捕していくことになると思う。“あきらめない”ということを思ってやっている」
県警・捜査支援分析課=「CISA」が行うデジタル解析の裏で行われていたのは、まさにアナログそのものといえる映像収集。
足で稼ぎ、最新技術を駆使して事件を解決に導く。
新たな試みはまだ始まったばかりです。
《スタジオ》
府中町の事件においては、620か所3400時間に及ぶ映像を解析ということです。疋田さん、膨大な資料ですね。
【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「公園や屋外の施設、パブリックなスペースは防犯カメラの死角ですとか、映ってない部分もたくさんあると思うので、防犯カメラ一つ一つをチームのようなに編成してやっていかなければいけない。なかなか地道な作業だと思いますね」
まだまだアナログな手法ということですけれども、今後のことを考えると技術の進歩は目覚ましいものがありますね。
【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「センサーもどんどん進歩してますし、計算機のスピードも上がることによってより分かりやすく、またAIが繋いでいくとかも考えられると思うが、今はまだ地道な作業が必要だと思います」