参院選終盤 仙台の街頭演説で訴え
石破茂首相は19日、仙台市内で街頭演説を行い、2026年度中の設置を目指す「防災庁(仮称)」について、「仙台から防災の拠点をつくる。必ず実行する」と述べ、東日本大震災で被災した仙台市に地方拠点を設置する考えを明らかにしました。
演説では、震災当時の経験に触れながら「国民があちこちの省庁をたらい回しにされる状況を変えたい」と強調し、災害対応の司令塔となる「防災庁」の創設と分散配置の必要性を訴えました。
「悲劇の地から、防災の最前線に」
石破首相は演説の冒頭、2011年の東日本大震災当時を振り返り、「自民党政調会長として被災地を回り、避難所に一晩泊まらせてもらった」と述懐。「省庁をたらい回しにされた」という被災者の怒りの声を受けた体験から、「ここに頼めば全部のことが済む、そういう役所がなぜないのか。私は一生忘れない」と強い口調で語りました。
また、防災庁の構想については「現在、内閣府に防災担当はあるが、各省庁からの出向者が2年程度で元の省に戻ってしまい、経験の蓄積や伝承ができていない」と指摘。災害の多い日本において、常設かつ専門性を持った組織の必要性を訴えました。
「防災庁をつくる。それは私たちの悲願だ。仙台にその拠点を置く。そういうお話もいただいている」と明言し、被災地・仙台から「世界一の防災大国」をつくる意志を示しました。
自治体の誘致合戦も激化
政府は、防災庁を中央に設置する一方で、分局(地方拠点)を全国に分散配置する方針を掲げており、現時点で21の自治体が誘致に名乗りを上げています。
首相は「災害は“忘れたころ”ではなく“忘れぬ間もなく”やってくる時代になった」と述べ、2024年元日に発生した能登半島地震や9月の豪雨災害にも言及。「一番つらい思いをしている人こそ、一番温かい手を差し伸べる。それが国家だ」と述べ、被災者支援のあり方と迅速な災害対応の実現に強い意欲を示しました。
さらに台湾やイタリアの災害対応体制を例に挙げ、「24時間以内にコンテナ、トイレ、ベッド、キッチンカーが届く体制が整っている。なぜ日本にできないのか」と訴えました。
「誰が、いつ、どこに」まで決まっている体制へ
石破首相は、防災庁構想を「時間との戦い」と位置づけ、「南海トラフや首都直下地震は“来るか来ないか”ではない、“いつ来るか”だ」と述べ、制度面と実務面の両輪による抜本的な災害対応改革を掲げました。
そして改めて、「未来から、仙台から、防災の拠点を作る。それを私たちは必ず実行する」と訴え、演説を締めくくりました。