千葉・山武市にある、高齢者向けシェアハウス「むすびの家」を取材した。ここでは現在70代から90代の9人が暮らし、自由に助け合う生活を送っている。高齢者シェアハウスの利点と課題に迫る。

政府も注目する高齢者のためのシェアハウス

シニアだけで共同生活を送る「高齢者シェアハウス」。今、政府も注目している。16日、イット!取材班は千葉・山武市の住宅街へ向かった。

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取材班:
こちら、一見普通のアパートのように見えますね。

訪ねたのは、シニア向けのシェアハウス「むすびの家」。

取材班:
こちらリビングのようです。こんにちは。

建物の中に広がっていたのは、共同生活を送る入居者がくつろげる共有のリビングだ。ここには現在、70代から90代の9人が暮らしている。

部屋を見せてくれたのは、最高齢91歳の入居者・伊藤さん。シニア世代の共同生活について聞いた。

伊藤さん(91):
みんな優しいよね。親切だしなんか困ったときは面倒見るっていうか、そういうのをやってもらったりしてさ。

実際に、ベッドから落ちて動けなくなった際には、すぐに見つけてもらえたという。

一方で、シェアハウスならではの気楽さも魅力だという。

伊藤さん(91):
ここで椅子に腰かけて、テレビ好きなように(見られる)。

このシェアハウスを作ったのは、夫婦でこの施設に暮らす田中さん。10年前のことだという。

田中義章さん:
自立できる年寄りが集まって、‟向こう三軒両隣”じゃないけど、そういう暮らしができればなと思って。

各部屋にキッチン・お風呂・トイレがあり1人部屋の家賃は月6万5000円〜7万円となっており、コンロは火災のリスクが少ないIHタイプになっている。

田中義章さん:
生の火というか、ガスはちょっと危険なので。

また、夫婦で入居できる部屋(家賃10万円/月)もあるほか、施設全体がバリアフリー設計で、階段にはリフトも取り付けられている。

各部屋のお風呂とは別に共用の風呂場も完備されていて、介護する人が中に入れる広さが確保されるなど、随所に高齢者施設ならではの配慮が見られる。

入居する高齢者に聞くと、介護施設ではなくシェアハウスを選んだ理由をこう話す。

入居者:
食事も自分で好きなように、お出掛けも自由に時間の制限なく、縛られないのが(良い)。

1人暮らしをする65歳以上の高齢者は今後も増加を続け、2050年には1083万9000人に上る見通しだ。

政府も、高齢者が安心して暮らせる新たな拠点作りを進めている。

3月には石破首相が長野・宮田村で高齢者から子供まで幅広い世代が集う複合施設を視察した。

石破首相:
高齢者の方と介護する人というだけではなくて、いろんな世代の人が集まってコミュニティーを作りましょうねという考え方。

入居者:
お茶の時間です~、共用室へ集まってください。

今回取材した「むすびの家」では、毎日午後3時になると共用のリビングに入居者が勢揃い…お茶を飲みながら話に花を咲かせるこの時間は、入居者の安否確認の機会にもなっているという。

伊藤さん(91):
楽しいなんてもんじゃない。

さらに16日は、週に一度のお楽しみ「歌の会」も開かれた。

伊藤さん(91):
週に1回だって。もっとやりたいような気がするけどね。

取材班:
1回じゃ足りない?

伊藤さん(91):
物足りないね。

介護が必要になった場合の対応に課題も

こうしてシェアハウス暮らしを楽しむ皆さんは、シニア世代だけでの共同生活に不安な点はないのだろうか。

入居者:
希望としてはずっとここにお世話になりたいけど、こういう(介護が必要な)状態になると考えないといけない。

専門家も、入居者に介護が必要になった場合の対応など、今後の課題は少なくないと指摘する。

高齢者住まい アドバイザー協会・満田将太代表:
寝たきりになった時にシェアハウスで生活できるのかというと、やっぱり厳しいと思う。皆さん終の住処にしたいと思って移動してくるわけだが、結局は最後はまた違うところに移らなきゃいけないことも十分ありえる。そこは今後の課題でしょうし、シェアハウスの難しいところ。
(「イット!」7月16日放送より)

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