1月14日朝、我々取材班はミンダナオ島・コタバト市にあるMILF=「モロ・イスラム解放戦線」の本拠地キャンプ・ダラパナンを訪れた。MILFは数十年に渡ってフィリピン軍と互角に戦ってきたイスラム武装勢力である。本拠地のキャンプに近づくと、イスラム教徒の好む「緑」色の旗が通り沿いに目立ち始める。

MILF(モロ・イスラム解放戦線)の本拠地キャンプ・ダラパナン

フィリピン南部ミンダナオ島では40年以上にわたり、キリスト教徒とイスラム教徒による紛争が続いてきたが、フィリピン政府とMILFは2014年に包括和平案に合意、自治区を認める代わりにMILFは段階的に武装解除を行うことが決まった。今後この「武装解除」がうまくいくかどうかが、和平実現の鍵を握っている。

MILFは常備軍4万人

MILFには現在、3~4万人の常備軍がおり、民兵を含めると12万人いる。キャンプ内で出会った兵士はカラシニコフで武装し、一見すると国の軍隊と何ら変わりないがない。軍事訓練を受け、重火器や爆発物などの扱いにも長けている。

MILF(モロ・イスラム解放戦線)の兵士

こうした兵士を「武装解除」させるためには、兵士以外の仕事で生活できるように道筋を付ける必要がある。ミンダナオ島は気候がよく台風もほとんど通過しないため、農業や漁業に適した土地である。日本のJICAは、兵士らに対して農業技術研修などを行っており、武器を手放した後も、安定した生活をおくることができるようサポートを続けている。MILFのムラド議長も、こうした日本の支援を高く評価している。

取材に応じたMILFムラド議長

虎視眈々と狙う過激派

一方で、こうした和平の動きに水を差す動きが現地では起きている。イスラム過激派の台頭である。ミンダナオ島では、MILFが分離独立を断念したことに反発し、MILF本体から分派した過激派組織が各地で爆弾などによるテロ攻撃を繰り返している。BIFF(バンサモロ・イスラム自由戦士)の一部やAKP(アンサール・ヒラーファ・フィリピン)、ダウラ・イスラミーヤ・トライフィなどは「イスラム国」に忠誠を誓い、国外のテロ組織からの援助も受けているとみられている。こうしたイスラム過激派が目指すのはイスラム国家の樹立であり、MILFが目指してきた分離独立とはそもそも根本的に異なる。

町に掲げられているテロリスト手配書(BIFFとDawlah Islamiyah Turaifie Group)

「武装解除」の過程でMILF元兵士らの生活が苦しくなった場合、元兵士らが資金力のある過激派に流入してもおかしくはない。過激派側も虎視眈々と勢力拡大を狙っており、戦闘経験があるMILF兵士は魅力的にも映る。MILFの「武装解除」は、一歩間違えれば過激派伸長のリスクをはらんでいるともいえる。

自治政府の成功もカギに

ミンダナオでは今後イスラム教徒が多く住む地域に、大きな権限を持つ自治政府が2022年にも樹立される見通しだ。この自治政府への参加について是非を問う住民投票の第一弾が1月21日に行われた。真の意味での平和を取り戻すためには、和平プロセスに加え、地元の治安部隊やフィリピン軍などによる徹底したイスラム過激派の取り締まりが不可欠となる。

【執筆:バンコク支局長 佐々木亮】