フィリピン南部ミンダナオ島では2017年5月以降、戒厳令が発令されている。イスラム過激派による爆弾テロや攻撃が止まらないためだ。主要都市コタバトでフィリピン軍の活動に密着取材すると、見えない敵と戦う難しさが見えてきた。

夜10時以降は外出禁止

夜9時半過ぎ。フィリピン軍第6歩兵師団に属する兵士たちが、とある場所に次々と集まってきた。コタバト市では夜10時から外出禁止令が敷かれ、一般人は外出することが禁止されている。この間にテロリストが町に入りこまないようフィリピン軍は警察と協力し、町の警備にあたっている。夜10時をすぎると、賑やかだった街の表情は一変し、車が1台も通らないゴーストタウンのような様相を見せる。

人通りの全くない道に装甲車が展開

侵入を試みる「過激派」

町の入り口には軍の装甲車が配置され、特に厳しい警備が敷かれる。武装したテロリストや、爆弾を運び込もうとするテロリストが頻繁に町への侵入を試みるからである。今年1月、このコタバト市の検問所でバイクに乗った不審な男が侵入を試みたため銃撃戦に発展し、男は射殺された。男は手製爆弾を市内に運ぶ最中だったことが後に判明した。

イスラム過激派の爆弾作戦

コタバト市はミンダナオ島の中では比較的安全とされる。しかしこの町でも、新年を迎える直前の12月31日、ショッピングモールの外に仕掛けられていた手製爆弾が爆発し2人死亡、30人以上が負傷するテロが起きた。さらにモール2階の手荷物預かり所からは、別の手製爆弾が発見され、当局によって解体処理された。爆弾テロはミンダナオ島各地で身近な脅威となっている。

頻発する爆弾テロを繰り返しているのは「イスラム国」に忠誠を誓う地元武装勢力だ。ミンダナオ島では去年5月、中部の都市マラウィが「イスラム国」戦闘員らに占拠され、フィリピン軍は奪還するのに5ヶ月も要した。「イスラム国」戦闘員らは、「第二のマラウィ」実現を目指して、武装闘争を続けている。

軍に押収された手製爆弾(2019年1月)

「イスラム国」戦闘員が目指すものは?

我々は武装闘争を続ける「イスラム国」系武装勢力BIFF(バンサモロ・イスラム戦士)の元メンバーに話を聞くことができた。部隊の元副司令官だったという46歳の男は去年10月、フィリピン軍によって拘束された。武装闘争の目的について男は「我々はコーランとハディース(ムハンマドの言行録)のみに従っている。ジハードに従うよう言われてきた」と述べ、フィリピン政府からの分離独立をこえた「イスラム国家樹立」が目的だと明言した。

ミンダナオ島では、40年以上武装闘争を続けてきたイスラム武装組織MILF「モロ・イスラム解放戦線」とフィリピン政府が、高度な自治を認める取り決めで合意し、和平に向けた動きが加速している。

一方で「イスラム国」系の過激派はフィリピン政府との対話を拒み、あくまでイスラム国家の樹立を目指して武装闘争を続けている。過激派の多くはMILFから分派した組織で、彼にとってMILFはイスラム国家樹立を断念しフィリピン政府と妥協した敵として映っている。

イスラム国に忠誠誓うBIFFの元メンバー

外国人戦闘員流入が後を絶たず

さらにミンダナオの武装闘争は外国人戦闘員の流入により大きく変容してきている。「イスラム国家樹立」という理想に惹かれ、ミンダナオ島には外国人戦闘員の流入が後を絶たない。去年7月にはミンダナオ西部のバシラン島で、「イスラム国」戦闘員のモロッコ人が自爆テロを起こし軍検問所で自爆し、軍人10人以上が死亡。このニュースはフィリピン国内に衝撃をもたらした。

「イスラム国」が公開したモロッコ人自爆テロ犯

フィリピン陸軍第6歩兵師団のサビハナ氏は、海岸線が長く、隣国マレーシアやインドネシアから海を経由して入るのが容易なことが外国人流入の原因と指摘、警備を強化していると話す。またミンダナオ島はフィリピン政府の統治が弱く、外国人戦闘員が潜伏しやすいというのも、彼らが島を目指す原因とも言われている。

日本にとっても重要な地

海岸線警備の難しさを指摘するフィリピン軍第6歩兵師団長

ミンダナオ島沖の海域では現在、フィリピン、インドネシア、マレーシアが合同警備を実施し、国境を超えて活動するイスラム過激派の監視を強めている。フィリピンは日本にとって近い国であり、多くの外国人労働者を受け入れる日本にとってさらに近い国になるのは間違いない。この地でイスラム過激派を封じ込めることは、日本にとっても死活的に重要な課題であることは間違いない。

【執筆:バンコク支局長 佐々木亮】