使用済みの「マンホールのふた」が買えるチャンス!
なかなか手に入らないレアアイテムに巡り合えたり、普段よりちょっと安く買い物ができた時の嬉しさは誰もが経験したことがあるだろうが、今、「購買意欲湧いてしまった…」「お買い得すぎる」とSNSを騒がせているものがある。
それが、福井県福井市が現在申し込み受付中の「マンホールのふた」だ。

福井市が販売するのは、実際に市内で使用された直径60cm・重さ40kgのマンホールのふた10枚。
購入希望者は10枚の中から第一希望・第二希望を選び、購入希望が複数あるものについては抽選で購入者を決定する。
県外からの申し込みも可能だが、購入したふたは福井市内の日野川浄化センターで受け渡しを行うため、直接受け取りができる人が対象となるという。
マンホールと侮るなかれ、マンホールのふたに関心を持ち、鑑賞・収集したりする愛好家のことを“マンホーラー”と呼ぶ、奥深き世界。
元々いくらするものなのか素人にはわかりづらいものだが、気になる価格は1枚1000円(税込)。“マンホーラー”にとってこの値段が「お買い得」との声には頷ける。
では、実際に購入できるふたのラインナップを見てみたい。

今回販売される10枚のふたは、格子状などシンプルなデザインのほか、福井市のシンボルであるフェニックスを描いた柄入りのものがある。
色褪せてしまってはいるものの“カラー版”のものがあったり、使い込まれて欠けてしまっているものがあるのも、なんともいえない味がある。
なぜ今回、販売に踏み切ったのだろうか?そして、今最も人気を集めている、注目のふたはどれなのだろうか?
さっそく、福井市役所下水道部 下水管路課にお話を聞いてみた。
「下水道のことを身近に感じてほしい」
――マンホールのふたを販売しようと思ったきっかけは?
下水道は、施設のほとんどが地面の中に埋まっており普段は人の目に映ることが少ないが、水道や電気と同じように大事なライフラインのひとつです。
下水道は、まだ繋がっていない市民の方への新規整備や、古くなった施設の入れ替えなどの維持管理に、多くの費用がかかり、それらを下水道使用料でまかなっています。そのため、「下水道がどういった施設で、皆様のお宅から出た排水、汚水をどのように処理しているか」わかりやすく広報していく必要があります。
そこで、下水道の施設で唯一地面の上に出ている「マンホールふた」を使い、下水道広報についての企画をいくつか考えているのですが、そんな中、昨年、前橋市で行われた「不用マンホールふた販売」をニュースなどで見て、本来鉄くずとして処分するマンホールふたが一般の市民へ販売できるということを知りました。
使用済みである不用マンホールふたを皆様の手元においてもらう事で、下水道のことを身近に感じてもらえたらと思い、企画しました。
――通常は捨ててしまうということ?
マンホールのふたは耐用年数が車道上にあれば15年、歩道上にあれば30年となっていて、毎年計画的に更新工事を行っています。
それに加え、壊れたり道路工事のときに一緒に更新したりと入れ替えを行うこともあります。
その時には工事業者に委託し、入れ替えが終わったマンホールふたはふた枠とともに鉄くずとしてリサイクル処分を行っています。
――1000円というお値段ですが、この理由は?
現在の鉄くずの引き取り価格を参考にし、1000円と決めました。(参考 鉄の引き取り価格:19円~21円/1kg、H31年1月建設物価掲載単価やH30年12月の実際の引取り価格)

2018年8月に、使用済みマンホールのふたを1枚3000円で販売し、話題となった群馬県前橋市。
福井市は今回、その前橋市をモデルにしたということだが、たとえば、2018年9月には秋田県秋田市が同じく1枚3000円で販売を行い、奈良県王寺町ではふるさと納税の返礼品として取り扱っているなど、実は「マンホールのふた」に注目している自治体は他にも多数存在しているのだ。
全国各地の“ご当地ふた”がコレクションできる「マンホールカード」も現在全478種類にものぼるなど、もはや「ひそかな人気」とは言えないマンホールのふた。
通常はリサイクル処理されてしまう上、公共物にあたるため個人で買える機会はないということで、コレクションに加えたい!という人には絶好の機会に違いない。
では、実際に「ぜひ買いたい!」という人に耳寄りな情報は他にないか、聞いてみた。
人気はフェニックス柄
――今一番人気のふたはどれ?
9番の色なしフェニックス柄と5番の色付きフェニックス柄が人気です。

公式サイトによると、1月25日時点で申し込みは63通あるといい、一番人気の「色なしフェニックス柄」には17通、二番人気の「色付きフェニックス柄」には14通が集中しており、反対に、現在申し込み0通という最も“狙い目”のふたは6番のものだそう。

1月24日時点では申し込みは55通というお話だったため、わずか1日のうちに8通の新たな申し込みがあったようだ。
福井市内や県内からの申し込みが多い中、京都府、滋賀県、長野県、兵庫県などからも申し込みがあったということで、熱い視線が注がれているのがうかがえる。
「生まれ年のふたを記念にどうぞ」
――購入したふたはどのように使える?
実際マンホールのふたを販売するということを行ったのが今回初めてで、身の回りにマンホールのふたを持っていると言う人がいないのでどういう風に使われるかはわかりませんが、庭や玄関先に置物として、最近マンホール愛好家の間で魚拓のようにマンホールで拓本を取るのも流行っているので、そういった使い方もできそうです。
――ちなみに、市役所イチオシのふたは…?
どれも福井市内で実際に使われていたマンホールふたで、全部がイチオシなのですが、マンホールのふたには製造年がかかれており、これらもいつ製造かをホームページでも紹介しています。もしあなたが生まれた年のマンホールふたがありましたら記念にいかがでしょうか。
「生まれ年のワインを記念に買う」というのはよく聞く話だが、「生まれ年のマンホールのふた」という斬新な提案をいただいてしまった。
ちなみに、この10種類のふたの製造年は古い順に
・1975年 ・1980年 ・1992年
・1996年 ・1998年 ・1999年
・2001年 ・2007年 ・2017年
のものがあるので、今年2歳~44歳を迎える方はチャンスありだ。
ちなみに話をもう一つ。
福井市のマンホール申込書の記入例の名前はなんと「下水道 万掘男(ゲスイドウ マンホルオ)」!!
遊び心あふれるインパクトのある名前に思わず笑ってしまう。

――この反響に一言…
さまざまなニュースに取り上げてもらい、たくさんの申込みもいただいております。ツイッターなどのSNSでもたくさんの人に投稿やコメントをいただき大変ありがたいです。
――反響を受けて、第2回の販売はある?
毎年マンホールふたの入れ替えは行っているので、今回の申込状況等を参考にさせていただき、今後の販売イベントの有無や実施方法等について検討したいと考えています。
申し込み期間は2月8日(金)まで、申込書は福井市役所の公式サイトからダウンロードできる。
“マンホーラー”も、そうでない人もこれを機会に、我々の生活を支える地下の世界を覗いてみてはいかがだろうか。