新茶の季節到来ということで、今回のテーマは「お茶」です。

鹿児島は2024年の荒茶の生産量が日本一となり話題になりました。

収穫した生の葉をお茶っ葉にするため、乾燥や蒸すなどした状態が荒茶です。

収穫したお茶の葉は、煎茶や抹茶など種類や品種を問わず必ず荒茶にされるため、その生産量は県内で収穫されたお茶全体を指しているともいえます。

実は鹿児島の本格的なお茶栽培のスタートは戦後、そもそもなぜお茶栽培が盛んになったのか、そして、需要が高まる抹茶の県内事情など鹿児島のお茶生産をめぐる今と昔を取材しました。


開聞岳を望む南九州市。

一面に茶畑が広がります。

坪内一樹キャスター
「知覧の茶畑に来ています。春の日差しのもと、鮮やかな黄緑の新茶がいま収穫されています」

お茶どころ知覧にある汐見原茶生産組合です。

2025年は春先に気温の低い日があったことから、例年と比べて収穫のスタートが遅れたということですが、新茶の時期は毎年特別な気持ちで迎えるようです。

汐見原茶生産組合・前原公也代表理事
「期待と不安もある中で楽しみな時期。お茶農家の一年間の生活をを支えるものですから。一番茶が評価が高いので気合いを入れてやっていく」

収穫された茶葉はトラックに積み込まれ、荒茶にするためすぐに製茶工場に運ばれていきます。

坪内キャスター
「お茶を蒸した香りがします」

持ち込まれた生のお茶の葉は、まず蒸されます。

続いて、揉みながら乾燥。

こうした乾燥と揉みの作業を様々な機械で繰り返すこと約3時間半、そして…

坪内キャスター
「これが荒茶になった状態ですね」

この荒茶が市場に出荷され、各お茶メーカーが製品にします。

2024年、荒茶生産量が静岡を抜き、初めて日本一になった鹿児島。

そもそも鹿児島で栽培が盛んになったきっかけは何でしょうか?

統計が始まった1959年からの県内のお茶の栽培面積を見てみると、1965年からの昭和40年代に入り、面積が急激に増加したのが分かります。

実はそれ以前の昭和30年代、国は輸出用の紅茶の生産を奨励し、県内の茶畑も約4分の1は紅茶用でした。

しかし、その後、輸入紅茶の増加をうけ、紅茶栽培は緑茶へと転換。

また当時、全国的な緑茶の需要増を迎え、お茶農家が増加したのです。

県の茶業試験場に長く勤めた佐藤昭一さんは、その背景をこう話します。

カワサキ機工茶業 技術顧問・佐藤昭一さん
「端的に言うとお金になるから。サツマイモ、麦、大豆を作っていた人が経済的に有利なお茶に転換した。鹿児島はお茶にとっての環境がいい」

いわゆる換金作物としての価値と茶の栽培に適した気候を足がかりに、鹿児島の栽培面積が急拡大したのです。

その後、1974年に鹿児島で開かれた全国茶品評会をきっかけに、ブランド力をつけようという動きも高まります。

カワサキ機工茶業 技術顧問・佐藤昭一さん
「ただ作るだけでなく鹿児島茶に対して販売力をもたせようという動き。先陣を切って動いたのが知覧町」
「いいお茶を作るのに関して、静岡の川根(茶の産地)に行って技術を学んだ」

2000年以降、茶の栽培面積は8000ヘクタールを保ち、ついに日本一を達成したのです。

そのお茶業界で今、大きな需要が生まれています。

日置市にあるこちらの店は、日本茶を気軽に楽しんでほしいと4年前にオープンしました。

人気商品について聞いてみると、、、

HIOKI CHAHOオーナー・東昌輝さん
「抹茶ラテも緑茶ラテも置いているが、最初は抹茶ラテが多い。抹茶は人気のコンテンツという印象。まずはお茶に触れてもらいたいので抹茶を使っている」

そう、抹茶です。

店ではラテ以外にもプリンも提供し、根強い抹茶人気に対応しています。

さらに抹茶人気は海外にも広がり、鹿児島市内のお茶屋さんを訪れた外国人観光客も抹茶が大好きでした。

イタリア人観光客
「パリに住んでいて、以前はカフェオレだけだったが、抹茶オレ、抹茶ビスケット・クッキーがある。私の子供も抹茶が好き」

国内、海外で需要が高まる抹茶。

日置市の東製茶の茶畑では抹茶の原料のてん茶の収穫が行われていました。

実際、県内のてん茶の荒茶生産量は直近5年間を見ると、2019年の832トンから2023年は1585トンと倍近く増加。

東製茶では2024年からてん茶の栽培に取り組み、今やその割合は全体の6割を占めるといいます。

また、お茶の輸出を手がける鹿児島市の池田製茶でも需要拡大を見越して5年前に抹茶の工場を新設しました。

池田製茶・池田研太社長
「昔は緑色の飲み物は海外では異様な飲み物だったが、グリーンというのがヘルシーやビューティーなどのイメージに変わってきたのが注目された要因」

工場は完全なオートメーション。

県内で生産されたてん茶に火入れなどの仕上げ加工を行います。

そして…

坪内キャスター
「ご覧ください。いま石臼を使って抹茶にひかれています。石臼がぐるぐると回っています」

石臼でひくのは高級用。

1時間に40グラムしか取れません。

これとは別に一般用は大きな機械で細かく粉砕していきます。

できあがった抹茶は8割が輸出用、2割が国内の菓子メーカーなどで使われるということです。

池田製茶・池田研太社長
「海外でも抹茶を使ったビジネスをしたいという人が多くいる。体にいい、味わいがいいなど、色々なところに着目してビジネスとして広げたいという人も」

約50年前の生産急拡大からブランド力強化を経て荒茶生産量日本一へ。

そして高まる海外需要。

鹿児島のお茶生産のこれからにも注目です。

鹿児島テレビ
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