卒業アルバムに人種差別写真

CNNが1日(現地時間)の看板ニュース番組でこのニュースを伝えた時、画面の人物の写真説明には「ラルフ・ノータム知事(R)バージニア州」とあった。(R)とは共和党のことである。
同知事がイースタン・バージニア医科大学を卒業した1984年の同大学の卒業記念アルバムに、人種差別的な写真を残していたことが分かり辞任を迫られているというニュースだった。
アルバムのノータム氏のページには何枚かの若き日の同氏の写真が掲載されているが、その一枚は顔を真っ黒に塗った人物と、黒人を迫害した白人の秘密組織KKKの白い頭巾を被った人物が、いずれもコップを片手にしたポーズで写っている。
写真の下には「世の中には年老いた医者よりも年老いた酔っ払いの方が多い。だからもう一杯ビールを飲む」というコメントがある。
ノータム知事へ辞任を求める声

白人が顔を黒く塗るのは、かつて歌手アル・ジョルソンが黒人を真似て歌い有名になったが、今では黒人を蔑む表現としてタブーとされている。またKKKの頭巾に至っては黒人をリンチにした集団のシンボルでありこの写真は「悪ふざけ」では済まないものと考えられた。

それも1984年といえば、米国で公民権法が成立して20年も経っていた頃のことだ。それなのに公に残る記念アルバムに残した神経は理解に苦しむが、それだけ米国の人種差別意識の根が深いということかもしれない。
このアルバムの存在は、保守系右派のニュースサイト「ビッグリーグ・ポリティックス」が暴露したもので、黒人団体だけでなく広く知事の辞任を求める声が高まっているが、ノータム知事は「写真は自分ではない」と否定している。
「人種差別をするのは共和党の白人」という思い込みか?
それはともかく、同知事は共和党ではなく民主党所属なのだ。
それをCNNはなぜ「共和党」としたのだろうか。単純なミスなのかもしれないが、ニュースのスタッフが米国独立13州の一つで首都ワシントンの隣の州の知事の所属を知らなかったとは信じられない。「人種差別をするのは共和党の白人」という思い込みがあったのではないかとも勘ぐってしまう。
時あたかも2020年の大統領選挙がスタートしたタイミングで、民主党はトランプ大統領を白人至上主義者と非難している時に、反トランプ急先鋒のCNNを始め民主党支持者としては足元に火がつくような形になって当惑しているようにも見える。
政治家もマスコミも発言に配慮を

大統領選といえば、民主党からはバイデン前副大統領が出馬を検討していると伝えられていたが、やはり過去の人種問題発言で出足をくじかれた形になっている。
それはバイデン氏がデラウエア州選出の上院議員時代の1975年、学校で生徒の人種融合を図るためにバスで白人生徒を黒人の学校に、黒人生徒を白人の学校に通学区させる連邦政府のバッシング政策に対して反対を表明し「学校内の人種融合は黒人の個性を守ることにならない」と人種隔離を是認する発言をしていたことが明らかにされた。
これも44年前の話だが、政治家の過去の行動や発言はいつまでもその責任を問われるということなのだろう。またそれを伝えるマスコミにも、私情に惑わされないよう配慮が求められるわけだ。
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