「杜の都の早慶戦」とも呼ばれる、仙台一高・二高野球定期戦が5月10日に行なわれます。明治時代からの歴史がある伝統の定期戦は両校にとって「公式戦以上」という思い入れのある一戦です。
「一高だ!一高だ!」「二高!二高!」
5月9日に行なわれた行進と応援合戦。定期戦を前に、両校の生徒が応援団を中心に仙台市中心部を行進し、西公園でエールを交換。プライドと思いをぶつけ合いました。
仙台一高・仙台二高野球定期戦は明治33年(1900年)に始まり、これまで120年以上の歴史を重ねてきました。「杜の都の早慶戦」とも呼ばれますが、実は早慶戦より長い歴史を持ちます。
全校生徒の大応援の中、ライバル心むき出しでぶつかり合い、戦後の通算成績は仙台一高36勝、仙台二高32勝、引き分け9つと、ほぼ五分。
伝統校であり進学校である両校がこの一戦に注ぐ膨大な熱量、その正体は何なのでしょうか?仙台二高野球部の元キャプテンにして、現監督の金森信之介先生は「他の試合とは全く別物」だと語ります。
仙台二高野球部 金森信之介監督
「野球部にとっても学校にとっても二高生としてのアイデンティティーを構築する行事であり勝負だと思う。他の試合とは全く別物。この時期に楽天モバイルパークを借りて全校応援で、こんなにありがたい環境での試合は人生でもうないんじゃないかと」
両校の野球部員の晴れ舞台であり、生徒全員の愛校心を一気に高める場。しかし、ここ4年は一高が4連覇を果たしていて、もし今年、二高が敗れると5連覇を許すことになります。
仙台一高は去年、春の選抜高校野球の「21世紀枠」候補にも選ばれるなど、ここ数年は県内でも上位の成績を収めています。去年秋は公式戦でも対戦し、一高が勝利。二高は一高に水をあけられている状況です。
仙台二高野球部 金森信之介監督
「ポテンシャルというか、フィジカルとかは、客観的にみると圧倒的に一高が高い」
その一高に立ち向かう今年の二高も春の県大会出場を決め、調子は上向きです。
仙台二高野球部 金森信之介監督
「今年のチームはより野球理解度も高まってきていますし、技術的な面でも理解をプレーに落とし込むということも徐々にできてきているので、定期戦の時にいい状態で臨めたらと思っている」
2019年以来の定期戦勝利を目指し、練習に励む二高野球部。その中に、より特別な思いを持って定期戦を迎える選手がいます。3年生の高橋宏武選手です。
仙台二高 高橋宏武選手(3年)
「定期戦に向けて強い思いをもって取り組んでいる兄の姿を見て『かっこいい』と思った。そういう憧れの舞台に定期戦がなっていて」
実は高橋選手、兄2人も二高野球部出身。長男の敬大さんは2018年に、次男の祐充さんは2022年にそれぞれ定期戦に出場。いずれも一高に勝つことはできませんでした。
仙台二高 高橋宏武選手(3年)
「定期戦が近くなった時からずっと『勝ちたい』というのは兄から聞いていて、本当に強い思いを持ってやっていたので。負けて帰ってきたときにはすごく悔しそうというか、本当に勝ちたかったんだというのを感じました」
2人の兄と友人の影響で二高野球部を選んだ高橋選手は、2年生だった去年も、定期戦に出場しました。
仙台二高 高橋宏武選手(3年)
「歓声とかたくさん見られているなという興奮・高ぶりはあるが、プレーに入った時にはすごく集中できるというか。特別な感じでした」
高橋選手をはじめ現在の部員たちは入学以来一度も定期戦の勝利を味わっていません。それだけに、5月10日の一戦にかける思いはひとしおです。
仙台二高 高橋宏武選手(3年)
「負けた兄とか、いつも応援してくれている応援団とか、今まで一緒に戦ってきた先輩・後輩とか、応援してくれる全校生徒に感謝の思いを届けたい」
仙台二高 太見颯汰主将(3年)
「これまでたくさん努力してきて、その努力の集大成の場だと考えているので、チーム全員で精いっぱいプレーして勝利できるように頑張りたい」
仙台二高 佐々木望結マネージャー(3年)
「選手たちのやる気がすごくて、ずっと前から定期戦を意識して勝利を目指してやっているので、雰囲気はいいと思う」
戦後80回目の節目となる今年の仙台一高・仙台二高野球定期戦は、5月10日午後1時、楽天モバイルパーク宮城でプレーボールです。