1月24日、父親からの虐待を受けていた千葉県野田市の小学4年栗原心愛さん(10)が自宅浴室で死亡していた事件。
5日、柏児童相談所が緊急会見を開き、衝撃の事実が語られた。

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2017年11月、心愛さんは小学校のアンケートに父親から暴力を受けていると訴え、翌日、柏児童相談所は虐待の疑いがあるとして心愛さんを一時保護。
その後、「両親と同居しない」という条件で一時保護を解除し、心愛さんは親族の家で生活していた。

しかし、2018年2月26日、職員との面談の際に父・勇一郎容疑者が心愛さんを自宅に帰すように迫った。
その時、勇一郎容疑者が職員に見せたのは「心愛さんが書いた」という手紙だった。その内容は、次のようなものだった。

お父さんに叩かれたというのは嘘です。●●小学校の●●先生に聞かれて思わず言ってしまいました。
お父さん、お母さん、妹、(親族の呼び名)にたくさんの迷惑をかけてしまいました。ごめんなさい。
ずっと前から早く4人で暮らしたいと思っていました。この間のときにも言いました。お父さんに早く会いたいです。
児童相談所の人にはもう会いたくないので来ないでください。会うと嫌な気分になるので、今日でやめてください。お願いします。
(柏児童相談所職員の書き写しに基づく)

手紙には、父親からの暴力を訴えていたはずなのに「お父さんに早く会いたい」の言葉があった。さらに、当時小学3年生の女の子が書くには不自然とも思える行政への要望も書かれていた。

しかし、この面談のわずか2日後、柏児童相談所は心愛さんを自宅へ帰すという信じがたい決断を下したのだ。
心愛さんの命を救うことは本当にできなかったのだろうか。 
「直撃LIVEグッディ!」では、児童相談所に19年の勤務経験がある心理カウンセラーの山脇由貴子さんと教育評論家尾木直樹氏とともに検討した。
 

広瀬修一フィールドキャスター:
手を差し伸べれば、助かるタイミングがあったのではないかと思われるポイントが2点ありました。まず、当時のやり取りを振り返ります。

親族宅での面談で「傷痕が認められない」として虐待再発ないと判断

【2018年2月26日 親族宅にて面談】

・親族宅には親族1人と父・勇一郎容疑者、別室に心愛さんがいた
・「心愛さんが書いた」という手紙は渡されず、職員はその場で内容のメモを取る⇒この時、職員は「父親に書かされている可能性が高いと認識」していたが、心愛さんに確認することはしなかった
・勇一郎容疑者は「もう来ないでほしい」「これ以上家庭をかき回さないでほしい」「今日で家に連れて帰る」「名誉棄損も検討」などと発言
・面談からわずか2日後、会議で心愛さんを自宅へ戻すことが決定


【心愛さんを自宅に戻した理由】

・虐待再発については学校で傷痕が認められなかった
・学校での適応状態が悪くなかった
・親族が面倒を見ることが難しくなった


広瀬:
「傷痕が認められない」と言っているのですが、心愛さんは親族の家にいて父と離れて暮らしているのに、なぜ虐待再発がないと判断できたのかと、5日の会見では多くの質問が飛びました。

ーー父と一緒に暮らしていないのに、虐待再発がない判断ができた?

今指摘のことは大変大事と思う。
きちんと段階を迫って、父との接触や自宅アパートでの生活を見ながら判断したほうが良かったかなと、そういうふうに思う。


ーー父親宅に帰るのを認めた後、いつ帰った?

その辺については記録にない。旧担当者にも確認したが、具体的なやりとりは判明しなかった


広瀬:
質問に対して非常にあいまいな言葉で回答していて、その後の管理もどうだったんだろうかと感じます。

安藤優子:
親族宅にいるのに「体に傷がないから」とか、こういった矛盾した判断で心愛さんを自宅へ帰してしまうのは無責任に感じますね。

高橋克実:
この期間からこの期間までどこにいたとか、この日にちを持って一時保護を解除したとか、そういう書類がないっていうのはあり得ないじゃないですか。
じゃあ何のために管理してるんだということじゃないですか。それがなくて、いつ戻ったか分からないなんて、ちょっとありえないですよ。

安藤:
いつ戻ったか分からないっていうのは、いつ戻っても関係ないみたいな、ある意味放置に等しいと思うんですけど…

山脇由貴子氏(心理カウンセラー):
この事件は、児童相談所がすべてを放置した結果起こってしまった事件だと思います。
帰っちゃったんだしょうがないね、みたいな感じですよね。児童相談所は父親にかなわないとどこかで思っていて…

安藤:
父親に屈してしまった?

山脇氏:
そう。学校も教育委員会も児童相談所も父親に支配されているんですよね。
ものすごく悪質なクレーマーだとは思いますが、父親の言いなりになってしまっていて、だから一時保護解除になったんだと思います。
父方親族宅に帰すというのは、私はあり得ないと思います。

安藤:
親族宅ですらあり得ない?

山脇氏:
だって、父親がこうやって家に入ってきてるわけじゃないですか。父親の影響がかなりあるわけですよね。
「親族が面倒見るのが難しくなってきた」という理由がありますけど、だったら施設に入れればいいんですよ、別に家に帰さなくたって…
父親に「返せ」と言われても、この人は虐待をずっと認めていないので、まずそこですよね。虐待を認めてくれないなら、家に戻すという選択肢はありません。
「家庭をかき回された」というようなことを言っていますが、一番の原因はあなたの虐待ですよねという話ができないと、家に戻すという話にはならないんですよ。

生稲晃子:
こういう父親のようなクレーマーって、今までも例はたくさんあったんじゃないかと思うんですよ。
そういうノウハウはなかったんでしょうか。この人が特別すごかったんでしょうか。

山脇氏:
いえ、私も「訴えてやる」とか「付き纏って付きまとってやる」とか何度も何度も言われますけど、そんなの「どうぞ」って言えばいいんですよ。
裁判所で話すればいいだけでしょって思うので。悪いこと何もしてないわけだから、屈する必要はないです。
その意味ではクレーム対応の知識もなさすぎると感じました。

広瀬:
心愛さんを救えたのではというポイントは、その後にもありました。

小学校での面会で「職権保護」のタイミングを探るべきだった

【2018年3月19日 小学校での面会にて】

・柏児童相談所職員が、心愛さんに手紙について質問すると「(小声で)言っていいのかな?」
・勇一郎容疑者から母・なぎさ容疑者へ「こういう手紙を書くように」とメールがあり、メールの内容を書き写すように指示があったと心愛さんが打ち明け、手紙を書かされていたことが判明


広瀬:
なぜこのタイミングで、再び保護しなかったのか疑問ですが。 

山脇氏:
私は現場にいた感覚から、ここで保護するのは難しいと思います。
ここでしなければいけないことは、この子の置かれている状況を理解することと、職権保護をするタイミングを探すことです。

安藤:
職権保護とは?

山脇氏:
親の同意なく保護をすることです。
ここで保護すると材料は手紙だけなので、例えばこの後、家裁に申し立てるとなった時に材料不足になる可能性もあります。ここでやらなければいけなかったことは、「児童相談所の人間はあなたの味方だよ」ということを心愛さんに理解してもらうこと。
私たちはずっとあなたを見ているし、あなたを守りたいし、もう一度逃げたいんだったら必ず逃がすと。
その時は絶対家に戻さないから、つらくなったら必ず言ってねということをこの子に伝えて、信頼関係をつくる。
そして、それを守って定期的にこの子に会いに行き続けて、この子が訴えてきた時を狙って、職権保護して施設に入れる。
そういった今後の見通しを立てていくことが必要だったと思います。

 
柏児童相談所が心愛さんを保護しなかった理由は他にもあった。

【2018年3月19日 小学校での面会にて】

・心愛さんは、手紙は書かされたが「お父さんとお母さんに早く会いたい、一緒に暮らしたいと思っていたのは本当のこと」と打ち明けていた
 

安藤:
「実のお父さんお母さんがいい」と言われたら、自宅に帰してあげたいと思ってしまうのが、難しいところなんでしょうか。

尾木直樹(教育評論家):
子供たちと接していると、中学生でも親がいいと言うんですよ。ケガしても階段で転んだとか、僕が悪かったとか、親をかばうんですよね。
子供たちのある意味での本能かもわかりませんね。

安藤:
山脇さん、そこをどう引き離したらいいんでしょうか。

山脇氏:
この時点ではお父さんも優しくなっていたかもしれません。
(一緒に暮らしたいという言葉は)心愛さんの本心だったかもしれないし、期待もしていたと思うんです。
ここで必要だったことは、それでもこの父親は絶対に繰り返すであろうという見通しを持って、保護のタイミング、いつ保護できるか児童相談所がずっと狙い続けるってことだと思います。
この子がつらいと言ったり、叩かれたって言うタイミングをみて職権保護をする。つまり保護は絶対だよ、保護ありきの子だよという見方をしながら、学校訪問で面接を繰り返しながら、この子の生活の様子、虐待の再発をチェックしていくことだったと思います。

安藤:
絶対に放置してはいけなかったケースということですよね。

尾木:
会見で所長は、「現在抱えている事案が大変」だと言っていたでしょう。児相の職員の方が大変なのは事実なんです。
それに追い込まれて、(案件を)早く処理したいと思ったり、愛情込めて見ていこうという気持ちになれなかったんじゃないかって…こんな児相に誰がしたのか、そこも問われないといけないと思います。

(「直撃LIVE!グッディ」2月6日放送分より)