岩手県野田村に、津波の被害から立ち上がり村の人に愛される和菓子店がある。

新型コロナウイルスの逆境を乗り越えるため新しい商品を生み出した、村で唯一の和菓子職人と家族の絆を取材した。

野田村で90年続く老舗まるきん大沢菓子店。

外舘心さんは村で唯一の和菓子職人。

この店には2020年、新たに加わった和菓子店ならではの商品がある。

アイスキャンディーの「くずバー」。

外舘心さん

「溶けても流れ落ちて来なくてプルプルした状態」

和菓子で使われる「くず粉」を使用していてモチモチとした独特の食感が特徴。

この夏、地元の客を中心にリピーターが続出した。

外舘心さん

「コロナの影響もあり震災のあとすごくヒマで。今回このくずアイスというのをやってみたら人の流れも変わるのかなと思ってやってみました」

この「くずバー」にはある思いが込められている。

ここ大沢菓子店にも新型コロナは深刻な影響を与えていて、その苦難や葛藤は9年前のあの日の記憶を蘇らせていた。

2011年3月。

人口5000人に満たない野田村にも津波が押し寄せ、改装したばかりの大沢菓子店は高さ2メートルの津波に襲われた。

しかし、わずか2カ月後には再開をのぞむ地元住民などの後押しもあり、大沢菓子店はいち早く営業を再開。多くの人で賑わった。

(2011年)外舘心さん

「周りの人もオープンに向けて色々手伝ってくれたので、自然と笑顔になったというか」

あれから9年半が過ぎ、心さんの生活にも新たな変化が。

心さんは7年前に結婚。今では3人の子供の母親。

長男の成くん(6)。よくお店を手伝ってくれるお兄さん。

実は、この人気商品「くずバー」には、成くんのアイデアが生かされていた。

外舘心さん

「この棒が短いと持ちにくいって言われて。それじゃお母さん持てないって言われて。たしかに持てないなと。けっこう(子供に)気付かされることがあります」

食べる側の視点に立った子どもながらのアドバイスは、心さんの和菓子作りを支えていた。

外舘心さん

「子供がいると毎日が楽しいですね。みんなが元気で健康で笑顔でいてくれることが私の元気につながります」

夫・外舘隆夫さん

「家では家の顔があって、仕事では仕事の顔があるんでしょうけど。尊敬しかしてないですね。かっこいいと思います」

そして地域に住む根強いファンも心さんを支える大切な存在。

常連客は…

「おいしかったので、また来ました。(くずバーは)溶けずらいのでお勧めです」

「(震災から)10年経って、この辺見てもほとんどお店もなくなったし、店を守るために一生懸命頑張っているから応援してあげたいなと思ってます」

外舘心さん

「まわりの人の温かさというか、毎日いろんな人に来ていただいて。ほんとに笑顔をもらえたというか、そういう感じです」

「この野田村に恩返しをしたい」その思いこそ心さんがこの野田村で和菓子職人を続ける理由だった。

そして生まれ育った野田村を子どもたちにも好きでいてほしいと心さんは言う。

外舘心さん

「海で遊んだり釣りをしたりとか、子供は大好きで。(子供は)震災を経験していないので怖いっていうイメージがまだないと思うんですけど、やっぱり海は好きでいてほしいですね」

震災の教訓と自然豊かなふるさとの素晴らしさを子どもたちに伝える心さん。

長年、村民に愛される和菓子店には村民への思いと逆境に負けない家族の絆があった。