「米国は決して社会主義国家にはならない」

「今気がかりなのは、米国でも社会主義を取り入れるべきだという声が上がっていることです。米国は自由と独立の精神の上に建国された国で、政府による抑圧や支配そして統制とは無縁なのです。今夜ここで米国は決して社会主義国家にはならないという決意を表明します」
5日(現地時間)行われたトランプ米大統領の一般教書演説の中ほどでこういう一節があった。
白いドレス姿の民主党女性議員団

ベネズエラのマデューロ大統領を非難し、その社会主義政権は南米で最も豊かな国を悲惨な貧困と絶望に陥れたと言ったのに関連しての発言だった。これに共和党関係者は立ち上がって拍手と「USA USA」と声援を送ったが、議場の一角を揃いの白いドレス姿の女性の一団が身動き一つせず冷めた表情だったのが逆に異様に見えた。
彼女達は民主党の女性議員達で、昨年11月の中間選挙で民主党が大躍進して下院で多数派となった中心的な勢力だが、その多くが従来の民主党の政治的立ち位置よりも左寄りの考えを隠そうとしない。

その中心的な存在のニューヨーク選出のアレクサンドリア・オカシオコルテス議員は「私は社会主義者だ」と公言してはばからず、富裕層へ70%の課税を主張している。
トランプ大統領は彼女達の考えを批判すると同時に、彼女達を抱え込んだ民主党が社会主義化しているとけん制したことは間違いない。それは当然2020年の大統領選をにらんでのことと考えられる。
民主党 注目の3 候補
民主党から2020年の大統領選に出馬を表明した立候補者の中で今のところ有力視される次の3人はいずれも左派的な考えで知られる。

エリザベス・ウオーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)ウオール街批判の急先鋒として知られる。

カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州選出)大麻合法化法案を提出。

コーリー・ブーカー上院議員(ニュージャージー州選出)黒人など弱者集団を制度的に救済するアファーマティブ・アクションの推進者。
究極の右派と左派の戦いへ
今後バイデン前副大統領のような民主党でも中道派の候補者が名乗りをあげる可能性はあるが、2020年の大統領選で民主党は左派の候補者でなければ戦えないとも言われ始めている。
トランプ大統領が政府不干渉の「レッセフェール」という究極の右派的政策を推し進める中で、反対党としては左バネを効かせなければ対抗できないと考えられるからだ。
トランプ大統領は今後民主党の候補者を「社会主義者」呼ばわりして攻撃することは間違いない。今回の一般教書演説での発言はその宣戦布告だったのではなかろうか。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【イラスト:さいとうひさし】
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