山林火災で収穫が遅れるなど大きな影響を受けた岩手県大船渡市のワカメ漁。
三陸町綾里地区では地元の男性が「綾里ワカメ大作戦!」と名付けたプロジェクトでいち早く支援の手を差し伸べました。
大船渡市三陸町の綾里地区では、避難指示が出されていた影響でワカメの刈り取りや出荷が2週間から3週間ほど遅れました。
ワカメ漁のシーズンは3月上旬から4月末ごろまでと短く、遅れを取り戻そうと漁師たちは作業を急ピッチで進めています。
こうした中、人手不足を補うため全国にボランティアの参加を呼びかけた人がいます。地元に住む阿部正幸さん 42歳です。
阿部さんは「綾里にいろんな人が来てほしいと思っている」と話します。
綾里地区に住みながら東北の1次産業やその生産者を紹介する情報誌「東北食べる通信」の編集長を務める阿部さんは、仕事を通じて漁師たちと交流してきたほか、地元の水産物を販売するオンラインショップの運営も行っています。
今回の山林火災では自宅のすぐそばまで火の手が迫り、綾里地区全域に避難指示が出たことから、しばらくの間は避難所で不安な日々を過ごしました。
3月10日に避難指示が解除され自宅に戻りほっとしたのもつかの間、阿部さんにとって気がかりだったのは地元漁師への影響でした。
阿部正幸さん
「定置網漁は報道でも出ている通り、倉庫を全焼して漁業再開の見通しが立たない。ワカメで少しでも収入を上げないと」
困っている漁師の力になりたい…こうした思いから阿部さんは「綾里ワカメ大作戦!」というプロジェクトを発足し、特設サイトで出荷作業を手伝うボランティアを募りました。
その反響は大きく首都圏の大学生など県内外から申し込みが寄せられ、3月18日から順次ボランティアが派遣されています。
3月24日には鳥取県からの大学生など4人が参加し、漁師たちと談笑しながらゆでたワカメを冷ましたり袋に詰めたりする作業を手伝っていました。
こうした交流は漁師とボランティア互いの心を癒やすひとときにもなっているようです。
鳥取から参加した大学生
「山火事があって皆さん大変な思いをして気分も沈んでいるのかなと思って来たが、漁師の皆さんが明るくて本当に優しく迎えてくれた」
漁師
「本当に(ボランティアに)来てもらって心強いというか、みんなの気持ちが本当にありがたい」
漁具や自宅が焼けて海に出られない漁師もいる中、阿部さんはこうしたコミュニケーションが漁業や地域に活気を取り戻すために必要だと語ります。
阿部正幸さん
「これまで漁業に関わったことがない人は(漁業との)関わりができて、生産者を支えたいという気持ちになる。災害がきっかけではあるが地域のファンづくりには大事なこと」
今後はボランティアだけでなく漁業の体験など綾里地区に人が集まるイベントも計画しているという阿部さんは復興への強い思いを胸に地域の生業を支えていきます。