菊池郡大津町の鍼灸師・古庄亮二さん(28)。2020年に「がん」と診断され、約1年半、闘病生活を送りました。そして、今回5年ぶりに空手大会に出場。決意の復帰戦に密着しました。
(去年10月/菊池市総合体育館 『第6回 熊本市空手道協議会錬成大会』)
久しぶりの感触に気持ちは高ぶっていました。この日、菊池市で開催された空手大会に古庄亮二さんは5年ぶりに出場しました。
【古庄さん】
「マスク、外した方がいいですか?」
(いや、いいですよ。マスク着けていた方がやっぱり体を守るためには・・・)
「そうですね。出かけたりするときはマスクをするようにはしているんですが、練習の時はマスク外して、体調を考慮しながらはやっています」
古庄さんは2020年7月、体調を崩して、病院へ。診察の結果、がんを患っていることが分かりました。抗がん剤治療や放射線治療など約1年半の闘病生活を送りました。つらい副作用に苦しんだといいます。やがて、空手の練習を再開し、今回、5年ぶりに個人トーナメント戦に出場することになりました。
【古庄さん】
「以前に比べると確かに試合勘やスピードとかも落ちてはいるかなと思うんですが、(以前の)60、70%ぐらいは戻ってきているんじゃないかなと思います」
試合前の古庄さんは緊張というよりもリラックスしている様子でした。
【古庄さん】
「最初、緊張するかなと思ったんですけど、ここにいるのはやっぱりうれしいですし、皆さんが応援に来てくれるのもうれしい、後輩たちと一緒にアップをしているのもうれしかったので自然と笑みが出ていました」
【友人・仲村 龍さん】
「すごく勇気づけられますし、また空手ができている姿を見られるだけでもすごくうれしい」
古庄さんは大津町にある『大津美咲野整骨院』で鍼灸師として働いています。大学生の頃から受付などのアルバイトをしていた縁で就職しました。
【片渕 佑馬 院長】
「患者さんにもすごく丁寧に対応をしていて、少しでも良くなるようにとその時できること、ベストなことを考えて、患者さんからの信頼も得ているのはやっぱり日々努力をしている成果だなと思います。復帰後は体力がやっぱりなくて、どうしても長時間働くのがなかなか大変で、コツコツと積み重ねる人なので徐々に(時間を)増やしていって、ブログとかいろいろ情報発信などもしてもらっていて、すごく心強いです」
古庄さんは小学2年生から空手を始め、熊本県立東稜高校の空手道部で主将を務めました。今、高校の後輩たちなどの指導に当たっています。
【県立東稜高校 空手道部 主将 スイスワヒュ カリファ ラシッドさん】
「古庄先生の練習を盛り上げようという姿勢、みんながきつそうにしている時でも誰よりも声を出して、みんなをとにかく盛り上げるために頑張っていらっしゃる姿とか憧れている部分があります」
【大津中学校3年 糸永 心幸さん】
「教え方もすごく分かりやすいし、優しいし。みんなの身体のこともサポートしてくださる、いい先生です」古庄さんを高校時代から指導してきた河内(かわち)さんは今回の古庄さんの復帰戦に不安を感じていました。
【隆心会 河内 博光 先生】
「正直、賛成しかねていた部分があります。まだ早いんじゃないかと。一応、退院してから2年は経過していたもののまだ通院して、検査等も定期的に受けていますし、万全ではないと。ただ彼としては自分が頑張っている姿を見せないと子供たちに胸を張って指導ができないと。そういう気概の持ち主なので、彼の意志を尊重することにしました」
【古庄さん】
「闘病後1年ぐらい、人と話したりするのが怖くなりました。外に出るのも怖くて、誰かと一緒じゃないと不安になったりすることがありました。道場には戻れないなと最初は思っていました。ここが引き際と思っていたんですが、空手の夢ばっかり見るし、空手の動画とかを見ると体がうずくんですよね。ああ、やっぱり僕は空手がしたいんだと思って、それから毎日、散歩やストレッチをするようにしました。父親が横になっていてくれたり、両親が一緒に散歩してくれたり、いろいろな方が散歩してくれたり、運動してくれたりしたおかげで、ちょっとずつ景色が変わってきたというか、できるかもしれないなと。そこからチャレンジしたいという気持ちがどんどん湧いてきました」
不安と闘いながら練習に励んで来ました。
「頑張る姿を子供たちに見せたい」
古庄さん、決意の復帰戦です。
【父・功拡さん】
「時間がかかりましたけど、また大好きな空手の試合に出られて、本当に良かったと思います。私たち家族もこの日を待ち望んでいたので、思いっきり声を出して頑張ってほしいです」
古庄さんと同じ頃、同じ病院でともに闘病生活を送った友人が応援に駆けつけました。薬剤師の畑中聡一郎さんです。
【薬剤師 畑中 聡一郎さん】
「たまたま同じ時期に同じ病気で入院していて、同じ治療を受けていて、治療もコロナの時期で本当につらかったです。外に出れなくて、誰とも面会とかできなくて、その中で同じような境遇の彼がいてくれたから僕も治療を頑張れましたし、本当に(彼が試合に)出ることに意味があるというか、ここまで来れたことに意味があると思っているので応援しています」
(5年ぶりの試合に挑んだ古庄さん。善戦するもののトーナメントは1回戦で敗退)
【古庄さん】
「何本が決まった突きは、すごく気持ちよかったというか。以前のような形には少しは近づけたかなと思うんですけど、相手が来た時とかにどうしても前に行けなくて、ちょっと後ろに下がる傾向があったので今回、一番の反省点かなと思います。でも、少しだけは元気な姿を見せられたんじゃないかなと思います。病気をした方は競技スポーツをやめる人いるので、その人たちにも少しでも勇気になれたら、それだけで十分です」
【先輩・弘津 大介さん】
「(闘病中の)きつい時のこともずっと知っていたので、負けたけど始まりなので次につなげて頑張ってほしいと思います」
【祖母・トシ子さん】
「病気が良くなって、試合に出るだけでもですね、良かったです」
【兄・一貴さん】
「本人「本人が空手を楽しむ姿をみんなが目に焼き付けた感じです」
【母・眞理さん】
「なんかいろいろなことが思い出されてよかったです、本当に。たくさんの周りの方が支えてくれたおかげだと思っています」
【隆心会 河内 博光 先生】
「古庄君は子供たちの気持ちをつかむのがうまいというか、ものすごく指導者向きの性格だと思っています。より良い指導者になっていただきたいというのが私のお願いです」
道場の教え子たちから復帰祝いのプレゼントが贈られました。
古庄さんは次の大会に向けて練習に励んでいます。そして、こちらのがんや脳腫瘍の
患者さんや保護者の方と一緒に同じ病気の人たちを支援する取り組みを始める予定です。5月には熊本市でチャリティーイベントを計画しているそうです。