3月11日で東日本大震災の発生から14年となります。そこで2月20日から「あの時、そして今」と題してさまざまな角度から東日本大震災を見つめていきます。20日は当時小学2年生で高校時代から語り部活動を続ける22歳の若者です。

若生遥斗さん
「自分はこのお話を通していざ震災が起こった時に救える命を少しでも多くしたいということを言っている。これからもこういった語り部の活動を続けて行こうかなと思います」

七ヶ浜町出身の若生遥斗さん、22歳。震災の伝承活動を行う公益社団法人「3.11メモリアルネットワーク」のスタッフで、この日は鳥取、岐阜、福井県の小学5・6年生81人にオンラインで語り部を行っていました。

若生遥斗さん
「机の下に隠れたときに棚のものが落ちてきたり、小学2年だけど、この地震は今までのものとは少し違うんだなと、身にしみました」

東日本大震災が発生した時、若生さんは小学2年生でした。

若生遥斗さん
「ずっと忘れないんだろうなというのは、避難した先で見た津波の風景。当時から14年くらいたっているけど、そこだけほんと鮮明に覚えている」

掃除の時間に激しい揺れに襲われ、雪が降る中、学校裏にある高台の神社に避難した際に、車を押し流す津波を目撃したといいます。

若生遥斗さん
「この隙間から津波が見えたっていう感じですかね。海って、色で表すと青だと思うんですけど、グレーとかそっちの色の方だったと認識していて、仮に絵を描いてくださいと言われたら灰色を使うと思いますね」

若生さんが語り部活動を始めたきっかけは、中学2年生の時の職場体験。それまでは震災にあまり関心がなかったそうですが、被災した人と関わり、心境が変わったといいます。

若生遥斗さん
「震災の話を聞きたくない人がいるというのを聞いて、町の姿はもとに戻りつつあるけど、人の心についた傷は復興しきれていないんだなというのを再確認して、そこから意識が変わった」

高校生になると、部活動と並行しながら震災伝承のボランティア活動を積極的に行うようになり「将来、伝承の仕事がしたい」という思いを抱きました。高校卒業後、一旦は貿易関係の仕事に就職しましたが、その思いは変わりませんでした。

若生遥斗さん
「やっぱり伝承の仕事に就きたいという諦めきれない部分があった。家が流されたとか、身内が亡くなったとかはなかったけど、だからこそ伝えられることがあるのではと思って」

去年10月、4年勤めた会社を退職して「3.11メモリアルネットワーク」の職員となり、震災伝承により深く関わるようになりました。仕事が休みのこの日、若生さんは仙台市内の小学校を訪れました。高校時代に自分たちで立ち上げた震災伝承の団体で震災学習の出前授業を行うためです。

「ここの学校は高台にあったから、俺が思っている以上に。だから津波をクイズにしてもあまり実感が湧かない可能性があるから」「逆に地震の方がいいんじゃない?」
語り部を行う土地の特徴に合わせた内容について、直前まで話し合いを重ねるメンバー。震災後に生まれた小学4年生に対し、防災を身近に感じてもらえるよう試行錯誤して伝えます。

若生遥斗さん
「担任の先生とか、大人が周りにいない時って結構ありませんか?例えば休み時間、その時地震が来たらどうする?どこに避難するかとか、というのも考えてみてはいかがでしょうか」

団体の顧問を務める中学時代の恩師も優しく見守ります。

きずなFプロジェクト 瀬成田 実 顧問
「頼もしいし、話もうまくなったなって、どうしてもやりたいと中学時代から思っていた仕事のようなので、それが実現したのは私もすごくうれしいし、引き続き応援していきたい」

語り部の最後に、若生さんが必ず伝える言葉があります。

若生遥斗さん
「みなさんには、今私がやっているような語り部になってもらいたいです。語り部をやるにあたって、震災の経験とかは全く関係ないです。家に帰ったら家族とか他の友達に、こういうことを聞いてきたんだよとか言うだけでも十分語り部になります」

若生さんの思いは、震災を知らない小学生にしっかり届いたようです。

小学生
「東日本大震災のことをあまり知らないので、深く知れてよかったと思いました」
「震災は逃れることができないので、そのためにしっかり対策やハザードマップなどを読んで自分の命を守ってほしい。まだ震災を知らない子たちに伝えたい」

誰もが語り部になっていってほしいという若生さん。22歳の語り部は次の世代に震災を語り継いでいきます。

若生遥斗さん
「語り部は誰でもできるってことを今後も伝えていきたいし、もし次の震災が起きたときに後世につないでいく、自分の命を守る行動にもつながるかなと思うので、語り部っていう活動は今後も引き続きやっていきたいと思う」

仙台放送
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