これまでKTSライブニュースでは、「かごしま探究プロジェクト」という取り組みについてお伝えしてきました。
通称は「かごたん」。
これは地元の企業が持つ商品や技術、人材といったリソースと、生徒たちが見つけた食や自然、文化などの地域のリソースを組み合わせることで、地域をよりよくする新しい企画を考えるという取り組みです。
そんな「かごたん」の県大会に向けて、よりよい企画を目指して奮闘する生徒たちの姿を取材しました。
2024年12月18日。
そわそわした様子の大人たちが中学校の教室に入っていきます。
その教室の壇上に立つ生徒たちも、なんだかそわそわ、緊張した面持ちです。
鹿児島市立長田中学校でこの日行われたのは、かごしま探究プロジェクトの1つの集大成となる校内発表会です。
企業と地域のリソースをそれぞれ探究して生まれた、地域をよりよくする企画を生徒たちがチームごとに発表していきます。
そんな中、こちらのチームは…
「鹿児島市の歴史的名所に集まる『観光客』と企業の『AIロボット』を掛け合わせて、『街ゆく人のためのお掃除ロボット』を作ることを提案します」
ビルメンテナンスを行う南日本総合サービスとコラボしたチーム「Nexus」。
こんな案も飛び出します。
「『ホビスク』という掃除アプリを作ります」
「『ホビスク』とは、ホビー、スクリーン・画面、クリーン・掃除、の要素を掛け合わせたアプリです」
アイデアもりだくさんのチームが目指すよりよい地域の姿とは?
「人口減少が課題となっている鹿児島市を掃除の力で活気づけ、人口増加を図れると考えます!」
この発表内容に、企業の人たちの反応は…?
南日本総合サービスの担当者
「AIロボットがあるとすごく助かるというのは想像がつくが、どういうところに優先して置きたいと考えているか聞きたい」
「優先的に観光客や人が多い所に置きたいと考えている」
チームを引っ張るリーダーの桑園もも花さん。
質問にもしっかり答え、発表は無事終了!
企業の担当者たちは別室に移動し、県大会に駒を進めるチームを選びます。
「難しいね。めちゃくちゃ難しいと思う。どうしよう・・・悩みましょう」
リソース活用能力や企画力、そして地域への貢献度という3つの基準で審査。
熟考の末、南日本総合サービスが学校代表に選んだのは…
「チームNexus!」
掃除ロボットにアプリと企画内容の厚みや、明るく元気に発表する姿を評価したようです。
ところで発表の瞬間、安心したような表情を浮かべていた桑園さん。
そのワケは?
長田中2年 チームリーダー・桑園もも花さん
「『自分たちが(県大会に)行かなければ誰が行くんだ!』ぐらいの勢いで頑張っていたので、呼ばれてほっとした部分もありながら、県大会につなげられたら」
自信をのぞかせるNexusチーム。
その裏側にはそれだけ重ねてきた努力も。
企画のアイデアを練っていた2024年11月。
何度も振り出しに戻りながら“ワクワク”を追究し、企画を考えていたのがこのチームでした。
その情熱は、県大会に向けてもー。
大会20日前。
同級生が部活に向かう放課後の時間、空き教室に集まる5人の姿がありました。
「内容が大きく変わって、お掃除ロボットの要素を全部消して、アプリを膨らませた」
要素が膨らみすぎて、発表が制限時間内に収まらなくなることを危惧し、アプリに特化した内容に急いで修正しているそう。
「企業の方々からのアドバイスと先生方の意見をもらったのと、南日本総合サービスで他に取り組んでいた班の意見を聞いたりして『アプリの方が革新的だと思ったよ』って」
学校代表として選ばれたという自負もありつつ、放課後は毎日、時には始業前にも集まって作業しているという5人。
県大会に向けてー「かごたん」に、真剣に向き合っていました。
そして迎えた大会当日。
会場にそろって到着した5人。
改めて意気込みを聞いてみました。
長田中2年・久保香野子さん
「パワーポイントのスライドを担当する。しゃべりながら(スライドを)変えないといけないので頑張りたい」
長田中2年・国料凜桜さん
「発表でもちゃんと今まで練習してきたことを出せるようにしたい」
長田中2年・元山史琉さん
「もうずっと毎日放課後もやっていたので、多分大丈夫だと思う」
長田中2年・松山琉清さん
「負けてもいいので、とにかく楽しむことを大切にしていきたい」
桑園さん
「かごたんを始めてから仲良くなったメンバー。最後まで全力で楽しんでいけたら」
県大会には県内8つの中学校から24チームが出場。
4つの会場に分かれて発表し、それぞの会場で審査が行われ、最終的に県代表として4チームが表彰されます。
「みなさんこんにちは!Nexusです!掃除後、掃除した場所をカメラで撮影すると、減った汚れの分だけアプリのポイントがたまります。ためたポイントの使い道は2つあります。A・ハウスクリーニングの割引券に変える。あなたの身の回りを、地域を、ホビスクのワクワクと共に楽しく掃除しませんか?」
堂々としたNexusチームの発表に、会場からは大きな拍手が送られました。
そして審査の結果はー
「和田中学校のファミマニアチーム」
残念ながら県代表には選ばれなかったNexusチーム。
チームを引っ張ってきたリーダーの桑園さんの目には涙が浮かんでいました。
桑園さん
「一番は(全国大会に)行きたかったという気持ちはあるが、感謝の気持ちが徐々に大きくなってきていて、まず、ここまで来られたのはメンバーのおかげだし、たくさん協力してもらった先生方、企業の方があってこそのこの場所。ただただ楽しかったという思いが大きくなってきている」
「かごたん」を通して得られたアイデアを生み出す楽しさ、企業の人たちの前で発表をやり遂げる達成感、よろこびに悔しさー。
中学生にとってこの経験は、大きな糧となったはずです。
大人も一緒に、学校という枠組みを超えて地域全体で子供たちを育てていく、そんな新しい教育の形がここに生まれています。
県大会で選ばれた4チームは県代表として、今週末に東京で行われる全国大会に出場します。