今、関心の高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースのコーナーです。2月19日は、岡山市が2031年度の完成を目指し進めている新しいアリーナ整備です。残されている大きな課題、莫大な建設費用について竹下さんがお伝えします。
(竹下美保記者)
「まずはこちらの数字をご覧ください。
【275億円~280億円】岡山市が計画している新しいアリーナの総事業費の見込み額です。先週、岡山市が発表した2025年度当初予算案には、アリーナ関連の費用は盛り込まれませんでした。岡山市は経済界に相応の負担を求めていますが、具体的な回答が得られていないため、負担額がハッキリするまでは、市の予算も組めないとして回答を待つ方針です。誰がどれだけ費用を負担するのか、課題は残されたままです。まずはこれまでの動きをまとめます」
(岡山市 大森雅夫市長)
「アリーナ整備について申し上げたい。愛着と誇りを醸成するものとして必要なものだとの認識に至りました」
岡山市が単独で事業に取り組むことを決断したのは、2024年6月のこと。スポーツ界や経済界から強い要請を受けた新しいアリーナ整備。それまで岡山市は、岡山県に建設費用の一部負担を求めていましたが、県は財政支援をする必要性を感じていないとして事業に参画しないことが決まりました。
当初の岡山市の計画では、客席数は5000席以上。総事業費は約145億円と見込んでいました。経済団体、有識者、地元トップスポーツチームなどで作る検討会議はこれまでに4回会合を開き、適正な規模や採算性などを探ってきました。
「5000席では採算が厳しいと。8000席以上を埋められるアーティストは限られているので、中四国エリアではアリーナコンサート需要が減少する、7000~8000席がベストという意見をいただいてます」
その結果、適正規模は7000席~8000席、最大収容人数を1万人とし、当初の計画より規模を拡大する方針に転換したのです。それに伴い費用の見直しも強いられます。
(岡山市 大森雅夫市長)
「物価高騰もあり275億円から280億円という数字が出た、われわれと経済界、相談しながら適切に額を出し合いながら良いもの作っていければと思っている」
岡山市は経済界に相応の負担を求め、2025年度当初予算案の編成に間に合わせるため回答期限を1月中旬に設定しました。
しかし・・・
(岡山商工会議所 松田久会頭)
「形の見えないものに対して協力してくれというのは結構難しくて、お願いをしているが苦戦している」
企業からの寄付金の協力には、なかなか理解が得られていないのが現状です。岡山市は、アリーナ整備の必要性を訴え、企業に理解を求めるのに必要なパンフレットや動画、新しいパースを作成することにしています。その費用を補正予算案に組み込み、開会中の2月定例岡山市議会に提案します。
(岡山市 大森雅夫市長)
「市民の皆さんに全てお願いするわけにはいかない本当に必要な事業だと思う、その中でこれからしなければならないのは、経済界からの寄付をお願いしていくこと」
Q:総事業費の総額が発表されてから、まだ2カ月時間が足りなかったということもあるのでしょうか?」
(竹下美保記者)
「費用の調達は厳しいというのが現状です。他の自治体では、こうした施設の建設について、どのように費用負担が行われているのか調べてみました。
まずは、沖縄市の「沖縄サントリーアリーナ」です。2月から、企業とのネーミングライツ契約で愛称が変わりました。こちらは、岡山市が目指すアリーナの規模と同じくらいで、4年前の2021年2月に竣工し総工費は約162億円。総工費の内訳は、米軍基地のある自治体に防衛省から出る補助金が大きく、それを含めた国の補助金が85%を占めています。その他は、沖縄市が負担しました。
沖縄市も当初は沖縄県に費用の負担を求めていましたが、市単独の事業となりました。
プロバスケットボールチーム「琉球ゴールデンキングス」の本拠地です。非常に採算性が高く、運営会社は2023年度と2024年度、市からの指定管理料を受け取らずに順調な経営が行われているということです。
続いてはお隣り広島県。
広島市で2024年2月に開業したサッカースタジアム「エディオンピースウイング広島」です。広島市が進めた事業で総事業費用は約286億円。費用の負担の割合です。国からの補助金が35.4%、28.1%は広島市と広島県の負担額を表しています。このうち地方交付税を除いた金額で、広島市と広島県が同じ額を負担しています。更に、企業からの寄付は26.9%、約77億円になっています。
メインは、広島市の家電量販店「エディオン」と自動車メーカー「マツダ」で約50億円を負担しています。「マツダ」など広島市外の企業は、寄付するのに「企業版ふるさと納税制度」が使われています。大きな企業の寄付があると市民の負担が減るわけです。
企業版ふるさと納税については、岡山市も想定しています。どういうものなのか。岡山市はどう取り組むのか?担当者に話を聞きました。
(岡山市スポーツ振興課 吉田武生課長)
「財源としては国の補助金がまず一つ、それから市内企業の寄付金、それから市外企業の企業版ふるさと納税制度を活用した寄付金、残りの部分を岡山市の一般財源」
【企業版ふるさと納税制度とは】
(岡山市スポーツ振興課 吉田武生課長)
「市外の企業が岡山市の事業に協力をしたいと市町村や国に払う税金を岡山市に付け替える制度」
通常の寄付の場合、3割の税金の軽減があるのに対し、企業版ふるさと納税制度では、最大9割となるため、支援したい事業に多くの寄付ができるというメリットがあります。
こうした寄付金を有意義に使えるように、岡山市は条例の改正を進めていて、開会中の2月定例岡山市議会に、提案しています。
(岡山市スポーツ振興課 吉田武生課長)
「通常寄付金は、もらった年度で対象事業で使っていくのが通常の流れ、アリーナについては複数年度何年もかけてやっていく事業なので、皆さんからの寄付金は複数年度にわたって積み立て、最終的に大きな負担が生じる時に使っていきたい。企業からの協力をなるべくもらうことで、岡山市民の負担をできるだけ軽減したい」
Q:アリーナの必要性をしっかりアピールすることも大切になってきますね!」
(竹下美保記者)
「岡山市は、スポーツ界・経済界と一緒になって取り組んでいくことにしていますが、いつかは決断が必要となります。経済界の負担額が分かった時点でその額を見極め、市民の税金の投入額を決めていかなければなりません。どれくらいが、どのように使われるのか、それに見合った施設になるのか、私たちがしっかり注目し、考えていくことが必要だといえそうです」