特集は学校給食です。食用油や米、野菜など食材の価格高騰の影響で給食費も値上げせざるを得ない状況です。そうした中、価格をにらみながら栄養のある献立作りに苦心している栄養教諭と給食の現場を取材しました。
■食育を推進する目的で「自校給食」
長野県諏訪市の諏訪南中学校。校内の調理場で作られているのは生徒・職員合わせて500人分の給食です。
市内の小・中学校は、「食育」を推進する目的もあり「自校給食」を維持しています。
諏訪南中では栄養教諭の伊東孝子さん(46)が献立を考えています。
諏訪南中学校 栄養教諭・伊東孝子さん:
「今、2月の献立考えていますけど、2月の季節に合ったものはどんなものあるかなとか、『おいしかったよ』とか『またこれが食べたい』という声を聞くと、頑張ろうかなという思いにつながる」
この日の献立はうどん、みそ煮込みスープ、だし巻き卵、海藻サラダなど。
*うどん、みそ煮込みスープ、だしまき卵、海藻サラダ、ヨーグルト、牛乳
生徒:
「だし巻き卵が甘くておいしかったです」
■生徒たちが考えた献立
2024年11月、伊藤さんは家庭科の授業で生徒たちに給食の献立を考えてもらいました。生徒は栄養のバランスだけでなく「1食360円」という費用も考慮。
生徒:
「(給食費の)値段が決まっているから、それに合わせて具材を選ぶのが難しかった。調理員さんが苦戦しているのがよく分かった」
この日の給食は生徒たちが考えた献立の中から選ばれた、北沢尚英さんの献立でした。
献立を考えた・北沢尚英さん(中学1年):
「値段を抑える中で、おいしさをどれだけ出せるかというのが大変でした。みんなもおいしいと言ってくれて、幸せならオッケーです」
■「何を削ったらいいのか…」
ウクライナ侵攻などに伴う国際的な物流コストの上昇や近年の円安によって食材は軒並み価格が上昇。さらに今は天候不順などの影響で米や野菜も値上がりしています。
このためー
諏訪南中学校 栄養教諭・伊東孝子さん:
「何を削ったらいいか、何を変えていったらいいかとその都度、献立を考えている状況」
調理の現場はさまざまな工夫をしています。肉や魚は、単品で提供するのではなく、カットしてほかの食材と合わせたり、大豆食品と置き換えたりしています。
献立を考える段階でも、現在は野菜が高値のため1人分の量を調節するようにしています。
また食用油は特に高いため揚げ物の回数を減らしています。
諏訪南中学校 栄養教諭・伊東孝子さん:
「気づいたら値上がっているという感じで、いつもと同じように使っていたら、赤字になるのではというぐらい値上がり幅がすごい」
■給食費を値上げする動き
諏訪市の給食費は1食当たり・小学校310円、中学校360円。食材高騰を受けて、市は家庭の負担を増やさないために小学校25円、中学校40円を公費で負担しています。
しかし、2025年度は給食費を15円値上げし、家庭の負担を増やすことも含め検討が進んでいます。
諏訪市・金子ゆかり市長:
「量を減らしたり、質を落とすということは、望ましいことではない。従って、今回も食材費は値上げをするということで保護者の費用負担、まだ家計において厳しい状況があることは見届けているので、それを加味して(令和)7年度も検討中ということになる」
他の多くの自治体も物価高騰には公費負担で対応してきましたが、2025年度から給食費を値上げするところが多く、これに合わせて家庭の負担も見直す動きが出ています。
県内19市では、現時点で長野市や松本市など14市が給食費を値上げする方針。
中野市は「無償化」の予定です。
家庭の負担で見ると上田市、千曲市など7市は据え置く方針ですが、飯山市や小諸市など4市は負担を増やす方針。
長野市、松本市、諏訪市など7市が負担割合などを検討するとしています。
■栄養教諭の苦心「値上げ終わって」
物価高のしわ寄せが出ている学校給食。栄養教諭の苦心は今後も続きます。
諏訪南中学校 栄養教諭・伊東孝子さん:
「いろいろな食材を知ってほしいという思いもあり、献立を考えている。値上げは早く終わってほしいし、できることなら元の値段に戻ってほしいというのが一番の願い」