特集はスキー場の集客アイデアです。インバウンドではなく、国内の利用客に目を向け、長野県信濃町のスキー場は愛犬と滑れるゲレンデ、木島平村のスキー場は空いていてゆったり滑れることをアピール。「差別化」を図っています。
■愛犬と一緒に滑走
信濃町の黒姫高原スノーパーク。
雪に恵まれ、積雪は1.2mほどです。
週末、続々と集まってきたのは犬を連れたスキーヤーたち。
こちらは、スキー場が2022年から設置している「スノードッグエリア」。
アイデアを出したのは、愛犬家でもあるスタッフの清水さんです。
黒姫高原スノーパーク・清水絵里花さん:
「ワンちゃんと一緒に走って滑り降りてくるのができるゲレンデ。地元の方も雪遊びをワンちゃんにさせていたので、需要はあるかなと」
スキー場の利用者はピークだった1990年ごろをピークに年々減少。
そこで、集客策の一つとして清水さんのアイデアが採用されました。
犬と一緒に利用できるスキー場は珍しく、この日も県外から多くの客が訪れていました。
千葉から:
「完全にその(犬と一緒に滑る)ためだけにここに来た。すごく幸せな気持ちになる」
「ワンちゃんが楽しそうなんで」
神奈川から:
「めったに犬と滑るのができないですよね、周り(のスキー場)が」
群馬から:
「楽しいですよね、(リードに)つながなくてもずっと滑れるので。(リピートも?)ありですね。また来たいと思います、近いうちに」
■チケット販売数は昨季の2倍
SNSや口コミで評判となり、利用客は年々増加し、犬用チケットの販売数は最初のシーズンはおよそ700枚でしたが、昨シーズンは2400枚。今シーズンはその2倍のペースで推移しています。
このため昨シーズンは2コースを充てていましたが、今シーズンは、土日に限ってもう2コース増やしました。
リードを付けずに利用できるコースもあります。
黒姫高原スノーパーク・清水絵里花さん:
「すごく効果を感じていて、あまり人の多いスキー場ではなかったんですけど、正直予想以上でした」
そりや雪遊びを楽しむ客も多く、スキー場は「気軽に愛犬と足を運んでほしい」としています。
黒姫高原スノーパーク・清水絵里花さん:
「特別な体験ができるゲレンデになっているかなと思う。エリアも増やしたので、ぜひ皆さん遊びに来ていただければ」
■ストレスなく滑走「100人限定」
(記者リポート)
「こちらゲレンデを見渡してみても、スキーヤーやスノーボーダーの姿、ほとんどありません」
こちらは木島平村の「Theきじまスノーパーク」。利用客の姿はまばらでゲレンデは空いていますがー。
実はこれで「狙い通り」。
Theきじまスノーパーク・本部正孝社長:
「100人限定ということで、スキーヤー・スノーボーダーがストレスなく滑れるゲレンデを目指しております」
スキー場は今シーズン「いつ来ても必ず空いてます宣言」をしました。
混雑をなくし、利用客の満足度を上げようと「1日100人」の入場制限をかけています。
リフト券は当日販売が20枚、インターネットの前売りが80枚です。
新潟から:
「自分初心者なんで、人があんまりいないという点で、人に迷惑かけないで自由に滑れるというのが魅力的」
「周りのお客さんに気を使わなくていいので、(仲間と)仲良く滑れる」
■「プライベートゲレンデのようだ」
こちらのスキー場は運営会社が変わり、新しい名称になって2シーズン目。認知度があるとは言えない状況です。
そもそも、前の運営会社の時代から、アルペンスキーの大会や練習に用いられる一方、一般利用客をどう増やすかが課題となっていました。
そこで、インバウンド客の増加で混雑するスキー場がある中、空いていることを逆手にとって、「いつでも快適に滑れる」とアピールを始めたのです。事故のリスクも低く、「プライベートゲレンデのようだ」と好評です。
飯山から:
「超気持ちいいです、人全然いなくて」
Theきじまスノーパーク・本部正孝社長:
「ぶっちゃけ採算度外視で、とりあえずやるだけやってみようかと思って。(昨シーズンと比べると?)もうすごいですよ。リピーターだとかYouTubeだとかSNSで発信されて、すごい反響ですね」
こちらは飯山市から訪れた2人組。
飯山から(準備中):
「(よく来られるんですか?)2回目。空いてるっていうので来ました。穴場かな」
“ほぼ無人”のゲレンデを滑走ー。
飯山から:
「思った以上に空いていて(笑)、最高です。誰も滑っていない斜面が、朝イチに来たんじゃないですけど、まだ残っていて、新雪も滑れるのはいい」
■知名度向上やリピーター獲得を
「100人限定」でも、人件費や維持費をまかなうだけの収入は確保できる見込み。
知名度の向上やリピーターの獲得につなげたい考えです。
Theきじまスノーパーク・本部正孝社長:
「ゲレンデを独り占め、貸し切りゲレンデのような形で滑れる。後ろを見なくても大丈夫なゲレンデを目指してつくります」
スキー離れやコロナ禍で厳しい時期が続いた県内のスキー場。インバウンドだけでなくこうした「アイデア」や「差別化」が巻き返しのカギとなっています。