オペラなのに、セリフも歌もない。新しいエンターテインメントに迫りました。

よく耳を澄ましてみると、セリフがありません。

オペラにはある、歌やセリフがない「サイレントオペラ」。

日本の古典文学『かぐや姫』を題材に、今回世界で初めてお寺で開催されました。

表情や息遣いだけでなく、風などの自然の音や床をたたく音などで、物語の情景や心情を表現します。

また、従来の観劇方法とは異なり、観客は会場を自由に歩き回りながら鑑賞が可能。
自分で選んだ視点で物語を追うことができます。

さらに観客を巻き込んだ演出で、演者との垣根がない没入型エンターテインメントを作り上げました。

観客は「感動した。自分の想像を働かせたり、昔から聞いている話を自分の中でひもといて思い出し、小さいころを思い出してみたりとか、その中に内面と対話ができると思った」と話します。

「今まで見た舞台はどうしても距離があり、細部まで見られないというのはあったが、セリフがあるので分かりやすい。今回、距離感が近く、役者たちの視線を感じ、この空間の一員になったような感覚がある。とても良かった」と話す観客もいました。

また、セリフのない演出のため、海外の方や聴覚などに障害のある方でも楽しんでもらいたいといいます。

翁(おきな)役・花柳琴臣さん:
(演者の)ちょっとした心情の変化で表情が変わることであったり、普段客席に座って見る演劇では感じられない繊細な部分を、全編にわたって感じ取ってほしい。

嫗(おうな)役・観月ゆうじさん:
このかぐや姫の物語を通じて、国境を越えて言葉が通じなくても、このサイレントオペラは色んな人々に見てもらえる。

主催者は、誰でも楽しめる日本の美しい芸術を世界に届けたいといいます。

Cilent Operaプロデューサー・黒瀬絵理香さん:
日々ストレスフルな社会だと思うが、そういう余裕がなくなるところに(サイレントオペラを通じて)感性や余裕を持ち帰ってもらえたらと思う。

五感で楽しむ新たなオペラの形。今後は海外公演も目指します。