「SDGs 持続可能な開発目標」、2030年に向けて世界で取り組むべき課題への17の目標のこと。環境問題などが含まれている。この「SDGs」に積極的に取り組む自治体を、国は「SDGs未来都市」として認定していて、2020年、岩手県内からは岩手町が選ばれた。2030年に向けて町の描く未来とはどのようなものなのだろうか

岩手・盛岡市の北、北緯40度に位置する岩手町。

町の基幹産業は農業、特にキャベツは東北一の生産・出荷を誇る。

しかし、地方の例に漏れず、人口は減少し高齢化が進んでいる。65歳以上の人口は

2030年には労働の中心となる15歳から65歳未満までを上回る見込みだ。

岩手町 佐々木光司町長

「人口減少や高齢化が課題というよりは、やはり人口の構成の中で若い世代がどんどん小さくなっていく。それが自治体にとって経営をしていくうえで大きな課題」

町の今後の道しるべを…。それが国際的に取り組みの流れが加速する「SDGs」だった。

国際的な目標を掲げることで、住民が町に誇りを持ち自ら関わる参画型のまちづくりを目指す。

岩手町 佐々木光司町長

「あと25年後には岩手町は今の人口の半分くらいになるという推計がされている。豊かさを感じてこの町で本当に良かった、ずっと住み続けていこうと思ってもらえるようなまちづくりを今から手を打っていく」

進めていくうえでは町の3つの特色が大きな柱となる。

その1つが町の基幹産業の農業。

農業はSDGsの2番目のターゲットの中に位置づけられ、生産性の向上は大きなテーマだ。

町にはすでに先進的に取り組んでいる人がいる。

アンドファーム 三浦正美社長

「冬は長いも、ゴボウ、雪下ニンジン、あとはニンニクの出荷もあるので、年がら年中忙しい」

こちらのアンドファームは4年前に法人化し1年を通じて出荷をしている。

育てている品種にも工夫がある。

このトウモロコシは地上に出た茎から根が張り、台風などでも倒れにくい新品種。

土づくりでも「循環型農業」に取り組んでいる。

アンドファーム 三浦正美社長

「町で畜産農家が発酵させた たい肥をたっぷり入れて土をつくっている」

また、技術革新の分野にも挑戦している。

トラクターのハンドルに手は触れていない。IT技術を利用した「スマート農業」。

データを入力するだけで新人でもベテランより高い精度で作業ができる。

アンドファーム 三浦正美社長

「実証試験をさせてもらっているけれど非常にメリットがある。お客さんにおいしい、また食べたいと思ってもらえる野菜づくりをしていけば、まだまだこれから農業は伸びしろがあるのではないか」

町を代表するスポーツも柱の1つ。

50年前の岩手国体をきっかけに町のスポーツになったホッケー。

この日は地元沼宮内高校の生徒たちが練習していた。

SDGsの中でスポーツは健康だけではなく、17の目標をそれぞれ推進する重要な鍵とされている。

沼宮内高校 ホッケー部 佐藤瑠衣さん(3年)「小学校2年生からやっている」

沼宮内高校 ホッケー部 今松優さん(3年)「小学校5年生からやっている」

今松優さん

「生活の一部みたいな感じ。父母どちらもホッケーをやっていたので、分からないことをいろいろ相談する」

佐藤瑠衣さん

「社会人でもやりたいと思っているので、みんなにプレーを見せて活発になったらいい」

延期となったが、東京オリンピックではアイルランドのホストタウンとなるなど、世界とつながる架け橋にもなっている。

そして、工芸・ものづくり。

彫刻も町を飾る文化だが、個人による工芸作品も発信していこうとしている。

そのうちの一人、工房芳純の白椛純一さん。

白椛さんは刺子の半纏に浮世絵の図柄を入れる絵付け師。

白椛純一さん

「絵は歌川国芳の絵が好きで手書きで絵を付けていく」

江戸時代の火消しがまとったとされ、「粋」を感じられると全国から祭りの装束として注文を受けている。

この絵付けをしているのは全国で唯一、白椛さんだけ。元々は好きが高じて独学で作品を作り始めたと言う。

白椛純一さん

「自分がほしくて相手にも喜んでもらえるものを作れるというのはやっぱり幸せなこと。ある意味ちょっとクールに、ちょっと熱く続けていけるような仕事にできればよい」

町では白椛さんのように自らが好きなことを仕事にする人を育てる起業塾を9月3日立ち上げた。

大企業のような生産活動が目的ではなく、働きがいを重視し町に新たなにぎわいをつくってもらおうという試み。

福岡県で古民家の再生や移住の支援に取り組む団体の代表が講師を務め、今後3カ月をかけ実際にプロジェクトを立ち上げる。

津屋崎ブランチ 山口覚代表

「お金を払う側あるいは商品を受け取る側が消費者になってはいけない。仲間にならなくてはいけない」

高校生をはじめ町へ移住してきた人など幅広く参加して取り組む。

沼宮内高校 佐藤琉亜さん(2年)

「(岩手町は)人と人の距離感が近いからこそみんなと協力して何かすることが多くあって、そこがいいと思う。町を盛り上げたい」

茨城から移住 庄子健一さん

「ずっと地域には仕事が無いと思っていたけれど、無かったらつくればよい。(岩手町は)新しい事業がどんどん生まれているので、この町だったらいろんなことに挑戦できるのではないか」

町ではさらに経済、社会、環境の分野にまたがり課題を解決する「未来塾」。

そして、SDGsに取り組む海外の街との姉妹都市としての連携など、構想を膨らませる。

岩手町 佐々木光司町長

「人口減少の中でも豊かさ、潤いがあることが持続可能性ではないか。小さな町だけれど、岩手町からモデルを提案して発信をできることはやりがいがあることで意義が大きいことだと思う」