自分を過小評価してしまう「インポスター症候群」

脱毛エステティックサロン「キレイモ」。
事業開始から、わずか5年で急成長。現在、運営会社のヴィエリスの社員は1,600人。
そのうち98%が女性。

脱毛エステティックサロン「キレイモ」
脱毛エステティックサロン「キレイモ」
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離職率が高いといわれる美容業界で、ヴィエリスは、業界平均の半分程度と圧倒的な低さを誇る。
その鍵となっているのが、「インポスター症候群」への取り組み。

昇進拒否や降格を願い出る場合も・・・

聞きなれない言葉である「インポスター症候群」であるが、「どうせ、わたしなんて」と、自分を過小評価してしまう状態のことをいう。
昇進拒否や降格を願い出る場合もあるそうで、女性に多いといわれている。

ヴィエリス 佐伯真唯子社長:
自分が自分のことを一番認めていなくて『わたしなんかダメ』と思っていた。

ヴィエリスの佐伯真唯子社長
ヴィエリスの佐伯真唯子社長

佐伯社長は、国連のSDGs会議で、社会のジェンダー平等について、2018年、2019年と2度スピーチしている。

国連のSDGs会議
国連のSDGs会議

佐伯社長の会社では、女性社員がインポスター症候群にならないために、2カ月に一度、全マネジャーに対して面談をしている。
そこでどのようにして、彼女たちに自己肯定感を植え付けているのか。今回、特別に面談の様子を取材させてもらった。

この日、面談を受けたのは槇島さん(27)。
若手ながら手腕を買われ、脱毛エステティックの営業部で統括マネジャーを担当していたが、プレッシャーから別の部署に異動したという。

面談を通じて自分を知り、自分を認め、自信につなげる

佐伯社長:
自信はあった?

槇島さん(27):
自信はなかったです。あると言いつつなかった...。

佐伯社長:
自信なかった理由は何だと思う?

槇島さん(27):
自分と人を比べてしまうことが多くて、この人にはない自分の強みは何だろうと思った時に、そこまで目立つ強みがないと思い、自信がなくなってきました。

槇島さん(左)、佐伯社長(右)
槇島さん(左)、佐伯社長(右)

佐伯社長:
今は自分の強みは?

槇島さん:
「一度決めたらやり通す」というのは、小学生のころから決めていたなと。
今までは言われても「絶対うそだ」、「お世辞で言ってくれている」と、すごくブラックな心で聞いていた部分もあったのですが、それを一度素直に受け止めて「責任感がある」と言ってもらえたら、責任感がある行動って自分自身ができたと思うことって何だろうと書いてみたり。

佐伯社長:
書いて自分を振り返っていたの?

過去の気持ちを1つ1つ丁寧に質問。
面談を通じて自分を知り、自分を認めることが、自信にもつながるのだという。
数日後、あらためて槇島さんの職場を尋ねてみると。

槇島さん:
CEO(最高経営責任者)と話をしている中で、本当の原因はここにあるのではということを一緒に導いてもらえるので、気づくこともたくさんあります。自己承認ができないと、たくさんのスタッフの上に立つことはできないので、自分自身で承認につなげて、それをスタッフに伝えていけるようになりたい。

面談を重ねるうちに、自分で自分を少しずつ認められるようになってきた社員たち。
佐伯社長が考える女性活躍の鍵とは。

佐伯社長:
自分で自分を認められるようになると、自分に自信を持つことができて、よりキラキラ楽しく仕事ができる。

萱野 稔人教授
萱野 稔人教授

自己肯定感を高めるには「教育」の見直しを

三田友梨佳キャスター:
萱野教授は女子学生と大学で接する中で、学生が「自分なんて・・・」と自己否定してしまう傾向は感じますか?

津田塾大学・萱野 稔人教授:
よくありますね。謙虚だというレベルを超えて「自分にはとても出来ない」と、可能性や能力に蓋をしてしまい残念だなと思うことはよくあります。 自己肯定感の低さは、女性に限らず日本の若者全般に言えることなんです。
高校生に「自分はダメな人間だと思うことがある」かを質問したところ、7割以上の若者が「ある」と回答していて、これはアメリカとも大きな差ですが、東アジアの中でも非常に高いんですね。

三田友梨佳キャスター:
どうして自信を持つ若者が少ないとお考えですか?

萱野 稔人教授:
1つの背景として「教育」があると思います。
日本では、「まだまだお前はダメだからもっと頑張れ、努力しろ」という形で指導する場面が結構あります。これが自己肯定感の低さにつながっている可能性があります。向上心を伸ばすにはいいかもしれませんが、未知の世界で一歩踏み出す人材を育てて行くには教育の在り方を見直す必要があるのかもしれません。

三田友梨佳キャスター:
インポスター症候群は聞き慣れない言葉ですが、症状は一般的なものなのかもしれません。教育もそうですが企業が対策を講じることが重要な意味を持ちそうです。

(「Live News α」11月4日放送分)