加山雄三さんが芸能活動の自粛を発表
9月2日、加山雄三さん(83)が所属事務所のホームページで、芸能活動の自粛を発表した。

加山さんは8月29日夜9時ごろ、自宅でトレーニング後、水を大量に飲んだことが原因で誤嚥(ごえん)を起こし嘔吐。妻が119番通報し、東京都内の病院に救急搬送された。その時に強くせき込んだことが原因で、軽度の小脳出血を起こしていたことも公表された。
加山さんの現在の状態について、事務所関係者は次のように話している。
「今は少量の血液が脳にまだあって、経過観察のため入院している。医師と相談して決めるが、1カ月程度での芸能界復帰を目指している」
加山さんの容体は安定しており、10月の復帰を目指して治療を行っているという。
加山さんは2019年11月に軽い脳梗塞を発症し入院していたが、12月にはステージに復帰し、その後も定期的に検査を受けるなど、健康管理に細心の注意を払っていたという。2020年7月には、自身初の生配信ライブを行うほど元気だったのだが…。
加山雄三さんを襲った「小脳出血」とは
突如、加山さんを襲った小脳出血とは、どのような病気なのだろうか?帝京大学医学部付属病院の神経外科・松野彰主任教授に話を聞いた。
帝京大学医学部付属病院脳神経外科・松野彰主任教授:
高血圧による出血、いわゆる脳卒中の1つの形です。小脳というのは人間の頭の後ろの方にあって、運動のバランスをとっているところですね。そこに出血が起こると、ひどい場合は呼吸停止。比較的量が少なくてもめまい・嘔吐が起こったり、運動失調が起こる。むせ込む時には血圧が一時的に急激に上がるということが起こるので、そのために出血が起こったということじゃないかと思います。

松野主任教授は、加山さんは水を飲み、むせてせき込んだことで一時的に血圧が上昇し、出血したのではないかと推測した。さらに、過去の脳梗塞との関係については…。
帝京大学医学部付属病院脳神経外科・松野彰主任教授:
加山雄三さんの場合は、以前に脳梗塞をされてることもあって、血管に動脈硬化性の変化が起こっていて、血管が簡単に言うともろくなっていた状況かと思います。今回、小脳出血を起こしたということであれば、嚥下(えんげ)の機能がさらに落ちる危険性があり、誤嚥を繰り返す可能性があります。
運動機能をつかさどる小脳がダメージを受けると、物を飲み込む力が弱まり、誤嚥のリスクがさらに増す可能性があるという。
東京都の安全健康研究センターによると、誤嚥性肺炎で亡くなる人は年々増加し、2016年には男女合わせておよそ4万人が亡くなっている。一体なぜなのか?
帝京大学医学部付属病院脳神経外科・松野彰主任教授:
昔は今の食事と違って、堅いものが多かったと思います。食事が良くなって、食べるものも柔らかく食べやすくなっている。しっかり噛まないで飲み込んでしまう癖がついてしまう可能性があって、そういう状況がずっと続いて高齢になっていくと、十分物を噛んで食べている人に比べて誤嚥が起こりやすくなります。
誤嚥はなぜ起こるのか
誤嚥による事故や病気は、誰にでも起こり得るという。『直撃LIVEグッディ!』のスタジオでは、とうきょうスカイツリー駅前内科の金子俊之院長に、誤嚥のメカニズムについて解説してもらった。
倉田大誠アナウンサー:
加山雄三さん入院という一報が入ったのは、先週の土曜日のことでした。今回、軽度の小脳出血での入院ということですが、一番はじめの入り口が誤嚥だったんですね。
高橋克実:
私も水を一気に飲んで、むせてしまうことありますよ。金子先生、誤嚥というのはどういうことなんですかね。ふつうは水をバーって飲んでも、食道と気管の区別がつくわけですけど、その区別がつかなくなっちゃうんですか?
とうきょうスカイツリー駅前内科・金子俊之院長:
はい。きちんと飲み込む力があれば、飲み物や食べ物をきちんと気管の奥にある食道まで押し込むことができるわけです。だけど慌ててしまったりとか、あとは加齢によって飲み込む力が衰えてくると、食道の手前の気管にストンと入ってしまう。これが誤嚥のメカニズムです。
もう1つ、高齢者で誤嚥性肺炎が多い理由は「気道反射」です。若い方は気道に(飲み物や食べ物が)入ってもゴホンゴホンとなりますよね。そうすることによって、肺にストンと入っていかない。だけど、高齢者は気道反射も弱くなってきてしまっているので、そのままむせることなくストンと入ってしまう。これも、誤嚥性肺炎を引き起こす1つのリスクになります。

高橋克実:
むせないのは、それはそれで危ないんですね。
倉田大誠アナウンサー:
むせることは、反応があるから良いことではあるんですが、帝京大学医学部付属病院の松野主任教授は、加山さんの症状について「誤嚥によるせきで急激に血圧が上昇し、血管が切れてしまったんじゃないか」と推測されていました。金子先生、確かにせきをすると頭に血がのぼる感じがしますもんね。
とうきょうスカイツリー駅前内科・金子俊之院長:
そうですね。特に誤嚥をしてむせ込むとなると、かなり急激に血圧が上がっていることが想像されます。それに加えて、去年に脳梗塞をされていらっしゃいますので、加山さんが飲まれているか確認していませんが、一般的には血液をサラサラにする薬を継続して飲むんです。もしかしたら、その薬も今回、脳出血を起こしたリスクの1つになったかもしれません。
安藤優子:
せき込むと、顔が真っ赤になったりする時もありますよね。でも、血圧が上がっても小脳出血のようにいたらないことが多いと思います。それは血管が丈夫だったりするんでしょうか?
とうきょうスカイツリー駅前内科・金子俊之院長:
そもそも誤嚥によって脳出血を引き起こす事自体が、まれなケースです。今回はこういうことが契機で脳出血を起こしたんだろうということですが、基本的に誤嚥と脳出血はイコールにはならないです。
倉田大誠アナウンサー:
誤嚥から小脳出血というケースが少ないということですが、では誤嚥で何が一番怖いのでしょうか?
誤嚥が引き起こすリスク
・ひどい場合は窒息の可能性も
・細菌も侵入し、誤嚥性肺炎のリスクとなる
⇒誤嚥性肺炎は日本人の死因第7位、高齢者(75歳以上)肺炎の7割以上

とうきょうスカイツリー駅前内科・金子俊之院長:
誤嚥性肺炎は非常に多い疾患です。日本は超高齢化社会を迎えますので、その中でいかに誤嚥性肺炎を減らすかというのはとても大事なことですね。
安藤優子:
誤嚥性肺炎を減らすには、その人がいかに嚥下する力を持っているのか知ることが第一なんですよね。私は母が高齢者施設にずっといて、その飲み込む力を定期的に計っていましたよ。
倉田大誠アナウンサー:
では、皆さんには誤嚥するリスクがあるのかどうか?金子先生にチェックリストを作っていただきました。
2つ当てはまると要注意!? 誤嚥リスクチェック
(1)食事中やお茶の時間にむせることが多くなった
(2)飲み込んだ後、口や喉の中に食べ物が残っているような感覚がある
(3)体重の減少が目立つ
(4)睡眠中もむせたりせき込む
(5)飲み込んだ後にしゃべると、ガラガラ声になる
(6)発熱や微熱を繰り返す

倉田大誠アナウンサー:
以上6つの中で、2つ当てはまる方は誤嚥するリスクが高いそうです。発熱・微熱というのは、誤嚥と関係あるのかな?と思ってしまうんですが…。
とうきょうスカイツリー駅前内科・金子俊之院長:
(2つ以上当てはまる方は)あるいはもう軽度の誤嚥をしている可能性が高いと思います。発熱というのは、おそらく肺炎を起こしているんです。高齢者は気道反射がないので、せきが出づらいと申し上げました。高齢者の方は、一般的な肺炎のような症状が呈さないことがあるんですよ。全然せきが出ない、だけど実はひどい肺炎を起こしていたということもありますので、普段から声がガラガラしているとか。何度も繰り返す場合は、一度肺炎を疑って、X線検査かCT検査を受けてみる必要があるかもしれませんね。
安藤優子:
年齢だと、だいたい何歳くらいから危なくなるんでしょうか?
とうきょうスカイツリー駅前内科・金子俊之院長:
最近ですと、松本教授もおっしゃったように食べるものが柔らかいので、本当に若い方ですと40代くらいからですね。多くはないですけど、誤嚥性肺炎を起こされる方も稀にいらっしゃいます。
安藤優子:
やはり、堅い物をよく咀嚼(そしゃく)することが大事ですか?
とうきょうスカイツリー駅前内科・金子俊之院長:
はい。きちんと時間をかけて咀嚼するのが、大事ということですね。
(「直撃LIVE!グッディ」9月3日放送分より)