日本初、水素由来の電気で稼働する撮影スタジオです。
スタジオに作られた教室のセットに見えますが、実際に存在しているのは手前にある机と椅子だけです。
実はこれ、スタジオ内のLEDパネルに3DCGの背景をリアルタイムで表示しているのです。
TOHOスタジオ・窪田義弘プロデューサー:
まるでこの場にいるかのようにこの場所で撮影できる、いわゆる「バーチャルプロダクション」といわれている設備になります。
東京・世田谷区の「東宝スタジオ」。
黒澤明監督作品や「ゴジラ」シリーズ、「踊る大捜査線」シリーズなど数々の大ヒット作がこのスタジオで生まれました。
年間300本のコンテンツが生み出される最新鋭の設備。
年間の消費電力は一般家庭1500世帯分だといいますが、このスタジオでは水素発電機で発電した環境に優しい電力で映画の撮影が行われるということです。
29日、「東宝」と発電会社「JERA」はJERAの子会社を通じ、東宝スタジオへ水素発電による電力供給を開始したと発表しました。
両者は2021年から映画製作の“ゼロエミッション化”に向けた取り組みを進めていて、ドイツから運ばれた水素発電機の設置や試験運転が完了し、電力の供給が始まりました。
水素だけを使って作られた電気の商用利用は日本で初めてです。
TOHOスタジオ・島田充社長は「映画づくりが、今まで環境にそれほど配慮した形でやってはこなかったものを、最初に東宝が一歩踏み出さないと、逆に他社や他の業界の方のきっかけにもならない。まずは東宝から何かやらないと、というところがあった」と話しました。
東宝全体では、2030年までに2017年と比べて50%の二酸化炭素削減を目標に掲げ、特に東宝スタジオでは2030年ごろに二酸化炭素の排出ゼロを目指します。
そこでカフェテリアなどに電力供給をリアルタイムで把握できるモニターを設置し、スタジオで働く全ての人が環境への配慮を意識できるようにします。
JERA Cross・一倉健悟取締役執行役員:
エンタメを代表するような東宝がこうした取り組みで、社会の課題に対して発信をすることが非常に重要。かつエンターテイメントを通じて一般の方々に広く身近に知ってもらうことにつながると思い、そういったことを期待している。
電力が必要不可欠な映像コンテンツ。
東宝は、その電力が環境に優しいものでなければ持続的に楽しむことはできないとしています。
こうした取り組みに対し、TOHOスタジオ・窪田義弘プロデューサーは「作品としても、環境に配慮した作品ということの付加価値というようなものが公開するときに広がっていくことで、受け取っていただく観客の方々や社会全体に環境配慮という気付きみたいなものにつながるのではないかという期待もある」と話しました。