人の生活圏に山から下りてくるクマ。
秋はクマにとって冬眠前の栄養を蓄える期間のため、人を襲うなどの被害が相次ぐ季節です。
しかし、2024年は異変が…。
ヒグマの主食・ドングリがよく実り、10年ぶりの並作となったのです。
そのため、2023年まではエサ不足でクマの行動範囲が人の生活圏にまで及んでいましたが、2024年は山にエサがあるため、クマの目撃件数が減っています。
とはいえ、クマはいつどこで現れるかわからず警戒が必要。
そんな中、北海道でヒグマを駆除する猟友会をめぐり、大きな動きが。
自治体からのヒグマの駆除要請を今後、拒否することを検討しているというのです。
背景にあるのは、2018年8月の北海道・砂川市が要請したヒグマ駆除でした。
ハンターの池上治男さんが発砲した弾が建物に当たる可能性があったとして、猟銃所持の許可を取り消されたのです。
10月に行われた処分の取り消しを求めた控訴審でも、札幌高裁は「跳弾により弾道が変化するなどし、建物5軒に到達する恐れがあった」などとして、池上さんの訴えを退けました。
人が暮らす地域でクマ被害が起きた場合、どうするのか。
猟友会の幹部はこの判決に対し、「街中や住宅が近くにある場合など、駆除が難しい場所の判断をハンターに迫られ責任を負うのは問題だ」とコメント。
問題のきっかけとなったハンターの池上さんは、猟友会が駆除要請の拒否を検討していることに対して「『撃った弾があっちいったりこっちいったり飛ぶ。(撃った弾が)ぶつかっていくんだ』と言われたら、ハンターの人たちはどうしようもない状態に追い込まれる。拒否というよりも、やろうと思ってもできない状態になったということ。拒否ということは正確には当てはまらないと思う。依頼する以上は行政に責任があるということは間違いない事実。(駆除を)頼んだら『後は知らん』では、信頼関係はできない」と話します。
札幌市でヒグマの駆除を行っているヒグマ防除隊の玉木康雄隊長も、「ハンターが1人で、猟友会だけでヒグマを捕獲しているわけではなく、関係者一同の共通認識の中、信頼関係ができあがって初めてトリガーに指がかかる。どこまでの部分はハンターの責任に持ってこれるのか、ここからここまではハンターに指示した側が負うべき責任なのか。あるいは保険を導入するとか、インフラ整備はこれから必要」と訴えます。
北海道猟友会はヒグマ駆除の拒否について11月末にも幹部会合を行い、理事会を経て、道内71の支部に通知する予定です。
クマの目撃件数は2023年に比べて減ったものの、クマが駆除できない場合、被害に遭うのはその地域に住む住民。
クマ被害をどう防ぐのか、今後の動きに注目です。