日本を代表する声優の皆さんが公開した動画。
生成AIで声が無断に使用されている現状について訴えているもので、大きな反響を呼んでいます。
こうした中、13日、声優などの業界団体が声明を出しました。
ドラゴンボールZ「フリーザ」役などを演じる声優・中尾隆聖さん:
“私の声”が勝手に売られていたんです。驚きました。“私たちの声”は「商売道具」で、「人生そのもの」です。
「私の声が勝手に売られている」。
YouTubeを通じて訴えているのは、アニメ「ドラゴンボールZ」のフリーザ役などで知られる声優の中尾隆聖さんです。
中尾さんら多くの声優が問題視しているのは、AI技術を使って作られた声優の声が勝手にSNSなどで使われ、投稿者の収益になっているという現状です。
声優・中尾隆聖さん:
無断で生成AIに使われている、私たち声優の気持ちを聞いてください。
13日、複数の声優業界の団体が共同で、生成AIに関する声明を発表しました。
現在、インターネット上にあふれている生成AIを使ったフェイク音声やフェイク動画。
2023年には、当時の岸田首相が実際にしゃべったかのようなフェイク動画がネット上に出回り、後に投降者が謝罪する事態となりました。
本物そっくりの声を作り出すことができるAIの音声技術。
番組で木村拓也キャスターの声を学習させた際には、本人も「怖い怖い、そっくりですよ。話し方の癖も似てますし」と、驚く結果となりました。
こうした生成AIによる音声の被害を多く受けているとされるのが、アニメや吹き替えなど、声の分野で活躍する声優たち。
ある調査では、生成AIによる音声の無断使用は、TikTokを中心に3カ月間で270件発見され、声を使われた声優は267人に上ります。
この現状に、映画「アラジン」のジーニー役などで知られる声優の山寺宏一さんは、生成AIを個人で楽しむ分にはいいとしたうえで、「それを商業利用っていうのはもってのほか。SNSなどでネットの世界に出してしまうことは問題だと思いますね」と動画でコメントしています。
また、「進撃の巨人」のエレン役などを務める梶裕貴さんは、「生成AIというもの自体が悪さをしているわけではなく、そこにある『無断』って言うところに誰かを傷つけてしまうリスクは隠れている」とコメント。
こうした声をよそに、事態の改善が見られない生成AIによる音声の無断かつ商業使用。
そこには法律の壁があると専門家は指摘します。
明倫国際法律事務所・田中雅敏弁護士:
声を法律で守ることが今可能かというと、権利として守っている法律はない。
こうした中、音声業界の3団体が13日午後、共同で会見を開き、生成AIによる音声について、「アニメや外国映画などの吹き替えには使用しない」「使用の際は本人の許諾を得る」「生成であることを明記する」という3つの要望を打ち出しました。