富山市八尾にある小学校の一角に児童たちに人気の図書コーナーがあります。
コロナ禍に亡くなった、読書が大好きだった少年。
棚に並ぶ本には、少年と両親の特別な思いが詰まっています。
富山市の杉原小学校。
休み時間になると、多くの子どもたちが図書室の一角に集まってきます。
棚には並ぶのは、様々なジャンルの80冊の本です。
*児童
「色々な本がある。」
「彩矢さんのお気に入りの本」
「色々な種類があるし、おもしろい」
この一角は、「さや文庫」と呼ばれています。
本の持ち主で、おととし10歳で天国に旅立った新木彩矢くんから名付けられました。
読書が大好きだった彩矢くん。
本の背表紙には、彩矢くんお気に入りのパンダのシールが貼られています。
*彩矢くんの母 新木幸枝さん
「たった10年間の彩矢の人生、小学校にいられたのは5年生までだったが、”さや文庫”として彩矢が生き続ける。いてくれるような気持ちになる」
*彩矢くんの父 新木彰人さん
「(彩矢は)人の役に立つ人間になりたいという思いがあった。さや文庫を通して、少しでも児童の役に立てれば」
彩矢くんは小学1年生のとき、筋肉が壊れやすくなる難病と診断されました。
運動が制限されていた分、人一倍、好奇心が強く、読書家でもありました。
卒業式で伴奏したいと、ピアノの練習にも励んでいました。
しかし、新型コロナの第7波が猛威をふるっていたおととし、2022年10月。
コロナの陽性が判明した日の夜に 突然、亡くなりました。
*彩矢くんの母 新木幸枝さん
「奇跡が起きて(心臓が)もう1回動くかもしれないとの思いと、小さい体に大人の力でマッサージをされている彩矢を見ていると本当に可愛そうで、生きてほしいから頑張れ頑張れと言ったが、受け入れなきゃと」
クラスの人気者だった彩矢くん。
「卒業証書、新木彩矢」
今年3月、同級生たちと一緒に、学び舎を巣立ちました。
彩矢くんが亡くなって2年。
家族の心にも変化がありました。
*彩矢くんの姉
「スクールカウンセラーになりたい。こういう経験をして、同じような経験をした子の支えになれたらいい」
*彩矢くんの母 新木幸枝さん
「自慢の娘たちです。悲しいことがあっても夢をもって勉強したりしてくれるから、頑張ろうかな、生きていかないと、と思う」
10月25日、息子が亡くなった命日。
両親が続けていることがあります。
「さや文庫」に、本を贈ることです。
彩矢くんの愛読書に加え、いまは、新しい本を届けています。
*彩矢くんの父 新木彰人さん
「本屋に行って、子どもたちが喜んでくれるかなとか、彩矢だったらこんな本好きかなという目線で選んでいる。実際に持ってきて素直な反応が見られて嬉しい」
*彩矢くんの母 新木幸枝さん
「妹の趣味も入っているが、さや文庫にあれば、読むと言っているので。会話のなかで彩矢の名前が出てくるのはうれしい」
*先生
「毎年ありがとうございます」
*彩矢くんの母 新木幸枝さん
「親の自己満足もあるんですけど」
杉原小学校の子どもたちと彩矢くん。
大好きだった本を通して、これからもつながり続けます。
コロナ5類移行から1年半が経ちました。
辛い思いを抱えながらも、前を向く家族のみなさん、彩矢くんとともに、小学校に、本を贈り続けます。