「イット!」が12日に訪ねたのは、東京都内の「いとう王子神谷内科外科クリニック」です。
待合室の椅子は15人ほどの患者で埋まっていました。
このクリニックは今、次々と訪れる患者の対応に追われています。
現在危惧されているのは、3つの感染症に同時に感染する“トリプル感染”です。
訪れた男の子の診断結果は、マイコプラズマ肺炎。
このクリニックでは、先週1週間で20人ほどのマイコプラズマ肺炎患者が受診したといいます。
マイコプラズマ肺炎は子どもが多く感染し、潜伏期間が長いうえに多くの人にうつりやすいため、“歩く肺炎”と呼ばれています。
国立感染症研究所によると、11月3日までの1週間に全国で報告された患者の数は、1医療機関あたり2.46人。
前の週まで5週連続で過去最多を更新し、10週間ぶりにわずかに減少に転じたものの、高止まりの状態です。
マイコプラズマ肺炎だけではありません。
38度を超える熱に加え、のどの痛みや倦怠感があり受診した60代の女性。
診察中にもせき込んでしまいます。
診断は、インフルエンザA型の陽性。
インフルエンザも全国的な流行シーズンに突入。
1医療機関あたりの患者数は1.04人となり、流行の目安「1」を超えました。
さらに、今後の感染拡大が警戒されるのが新型コロナウイルス。
クリニックの伊藤博道院長は「マイコプラズマがかなり後半まで引っ張られれば、1・2月にマイコプラズマ、インフルエンザ、そして場合によってはコロナ、トリプルデミックがあり得る」と警鐘を鳴らします。
マイコプラズマ肺炎、インフルエンザ、そして新型コロナウイルス。
2024年の冬は、3つの感染症の流行時期が重なる“トリプルデミック”への警戒が必要だといいます。
院長によると、それぞれの前兆として、マイコプラズマが主にせきや熱が多いのに対し、インフルエンザやコロナは倦怠感やのどの違和感が出やすいといいます。
クリニックには、すでに2つの感染症に同時感染した患者も来ていました。
男性はのどの痛みがひどく、4日後に再び来院しました。
医師:
のどが真っ白ですね。白苔(はくたい)があるので粘膜が壊死(えし)、ばい菌がついているのかも。インフルエンザと新型コロナの“同時感染”は強力かもしれません。
同時感染のためか、強い症状が出た男性。
院長によると、3つの感染症は前兆や症状こそ異なるものの予防策は同じで、手洗い、うがい、換気が大切だといいます。
また、感染者の増加によって、主に処方している薬が足りなくなっているといいます。
いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長:
子どもの感染症が非常に多い。お子さんの第一選択になる「アスベリン」の粉がない。(普段は処方していない)2番目・3番目の抗生物質は、妊婦さんには非常に使いにくいです。お子さんにも副作用、発育の障害等で使いにくいと。(妊婦さんに)安心して使えるお薬が見当たらない。
今後さらに感染が拡大すると、子どもや妊婦への処方に大きな影響が出る可能性があります。
厚生労働省は、手指衛生やせきエチケットといった基本的な感染防止対策の実施を呼びかけています。