福島第一原子力発電所では、燃料デブリを冷やすために原子炉への注水が続いているが、1号機では、炉内にたまった水が、地震の揺れなどで建屋に衝撃を与えることが懸念されている。
このため、東京電力は2024年3月から、約9か月をかけて、注水量を徐々に減らし、水位を約4.5メートル低下させようと作業を開始していた。
すでに1号機では経験がないほど低い水位に達していて、7月29日からは格納容器の中の核燃料が入っている「フラスコ型の部分」の底までの水位低下を目指し、1時間あたりの注水量を0.5トンほど減らしていたが、8月14日以降、注水量を減らしても水位がほぼ横ばいになっていた。
このため東京電力は注水量を維持し、水位低下作業を終了した。
なお、水位の低下により、デブリとみられる「底部堆積物」は気中に露出していると推定されるが、東京電力は「注水した水が堆積物にかかっているので冷却には問題ない」とする。周囲の放射線量にも大きな変動は見られず「引き続き、慎重に作業を進める」としている。
水位の低下が止まった原因として東京電力は、「2011年の事故で原子炉が破損し水漏れがあると想定していたが、考えていたよりも破損箇所が上部にあり、水漏れの大部分が止まった」としている。
原子炉は”フラスコ”の底部周囲を囲むように”ドーナツ”のような水をためる部屋があるが、”ドーナツ”の部分には水漏れするような損傷箇所が比較的少ないと推定されている形。
当初の目的である「地震の揺れなどで建屋に衝撃を与えないよう内部の水を減らす」の課題を解決するため、水を汲み上げなくてはならないが、この”ドーナツ”に残された水は非常に線量が高いと推定されるため、希釈してから汲み上げる必要があり、作業には時間がかかる見通し。