アメリカ大統領選挙まで1カ月を切る中、大きな争点の1つが「薬物と犯罪」だ。
アメリカでは、薬物の過剰摂取による死者は5年間で50万人を超え、18歳から48歳の死因ではトップとなっている。
今回FNNは、「地獄」とも呼ばれている麻薬汚染の現場を独自取材した。

街の中に薬物中毒とみられる人達が次々に…

アメリカ東部ペンシルベニア州フィラデルフィア。

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独立宣言が採択された場所としても知られ、映画「ロッキー」の舞台にもなった。

向かったのは、街の中心部から車で10分ほどの場所にあるケンジントン地区だ。

記者リポート:
ケンジントン地区に入ったんですが、ものすごい悪臭が漂っています。また、先ほどから緊急車両がひっきりなしにこちらを訪れています。

街の中では路上に倒れ込む人、前屈みになる人など、薬物中毒とみられる人達が次々に見つかった。

こちらの男性も、よくみると手には注射器のようなものを持っている。
さらに路上には、薬物の取引に使用したとみられる小さなビニールの袋も散乱していた。

記者リポート:
大勢の人が路上に倒れていて、何かしらの薬物を吸っている状態です。かなり危険を感じます。

特に目につくのは、前屈みになった薬物中毒者とみられる人達の姿だった。

この原因とされるのが、合成麻薬「フェンタニル」。
フェンタニルは、がん患者の苦痛緩和などに用いる強力な鎮痛剤で、効果はヘロインの50倍ともいわれている。致死量はわずか2mgだ。

違法に流通しているフェンタニルの過剰摂取で2023年、アメリカ国内では7万人以上が死亡している。

娘がフェンタニル中毒と語る住民の女性は、不安の声を漏らす。

薬物中毒の娘の母親:
犯罪者や麻薬常習者が多すぎます。ひどい状況です。

なぜここまで広がっているのか。
住民のガードナーさんは、麻薬の売人が無料でフェンタニルを配ったり、他の薬物に混ぜるなどして中毒者を増やしていると語る。

ガードナーさん:
多くの人が中毒者を「ゾンビ」と呼んでいる。ゾンビに近い状態だからだ。

夜になると街は一変する。

警察官も24時間体制で見回りをしているが、何もできず立ち去っていく。

さらに警察官が見回っていた場所にいた女性は、謎の小さな袋を取り出すと、鼻に近づけた。

11月の大統領選挙の大きな争点に

違法なフェンタニルは、中国で製造された原料をメキシコの犯罪組織が加工して密輸されていて、国境の管理や、麻薬汚染の防止は11月の大統領選挙の大きな争点にもなっている。

ハリス副大統領:
大統領として、私は米国に流入するフェンタニルの流れを断つことを最優先課題として取り組んでいく。

一方、トランプ前大統領は、バイデン政権が違法薬物の流入を急増させたと強く批判している。

トランプ前大統領:
麻薬の売人に死刑を課さない限り、麻薬問題は決して解決しない。

この地域で、薬物中毒からの回復を支援する活動を行っているアリスさん(71)。30年前には自身も薬物中毒者だった。

アリスさん(71):
第一に、政府は仕事していない。麻薬は長い間存在してきた。でも今はもっと悪くなっている。

アメリカ社会に蔓延する麻薬問題。
選挙まで1カ月を切る中で、大統領候補がこの問題にどう向き合うか、有権者が注目している。
(「イット!」 10月10日放送より)