琉球王国時代から現代に受け継がれる芭蕉布を巡る人々の思いと、沖縄の衣文化を支えてきたその歴史を紐解く「芭蕉布展」が、県立博物館美術館で開かれています。
沖縄の気候風土に適した着物として、琉球王国時代、老若男女を問わず着用されていた芭蕉布。
10月1日に開幕した芭蕉布展には、着物など約140点が展示されています。
八重山から奄美まで芭蕉布は沖縄の島々で織られ、それぞれ模様や色合い、糸と糸の結び方にも特徴があります。
庶民だけでなく王族まで幅広く芭蕉布は身に着けられてきました。
芭蕉黒地着物(黒朝衣)の解説:
「極上の芭蕉の細い糸を織っていて艶があって、まるで絹のような美しさ」
深みのある黒が特徴の「黒朝衣」は、男性士族の官服で最高級の着物です。
県内で初めて公開されたのは、江戸時代に芭蕉布で仕立てられた「火事羽織」。
琉球王国の交易品としても芭蕉布が重宝されていたことがうかがえます。
中には、かつて喜如嘉で最も上手な人が織ったといわれる極上の布で作られた着物なども特別に展示されています。
喜如嘉の芭蕉布保存会平良美恵子会長:
「本当は見せたくないぐらい、それぐらいいいもの。お宝は子どもの時隠しておくじゃないですか。そういう種類の芭蕉布」
今回の展示会は、喜如嘉の芭蕉布保存会の結成と芭蕉布が、国の重要無形文化財に指定されて今年で50周年を迎えることを記念して開かれました。
喜如嘉の芭蕉布保存会平良美恵子会長:
「とってもありがたいなと思っています」「全部をまとめてて芭蕉布。喜如嘉の芭蕉布以外のことも、その中で喜如嘉の芭蕉布の立つ位置というのが理解してもらえる」
先達が守ってきた手わざを磨き、のちに人間国宝となって2022年に101歳で亡くなった平良敏子さん。
戦時中、女子挺身隊として岡山県の倉敷にわたって航空機製作所に勤め、戦後、故郷・喜如嘉に戻ると途絶えかけていた芭蕉布の復興に力を注ぎました。
平良敏子さん縁の品々も展示されています。
芭蕉布の着物を召した女性:
「たくさんの芭蕉布、本当に美しいなとただただ素晴らしい歴史からなにまで知れてよかったなと思います」
神戸から訪れた男性:
「沖縄の歴史じゃないですか」「沖縄人々がもっともっと関心を持たれていくのが第一かもしれませんね」
芭蕉布展は芭蕉布の美しさと、人々の思い手わざに込められた心意気を次の世代につなぎます。
芭蕉布展は12月1日まで開かれ、これと関連して芭蕉布の里、大宜味村喜如嘉など各地でイベントや展示会が予定されています。詳しくは芭蕉布展のホームページをご覧ください。