ご即位10奉祝曲「Anniversary」

ロックバンド「X JAPAN」のドラマーでピアニスト、YOSHIKIさんが、3月16日と17日、バレエの公演の中で、天皇皇后両陛下への感謝の思いを込めて、ご即位10奉祝曲「Anniversary」を演奏しました。
この曲は、1999年11月12日、皇居前広場で行われた「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民祭典」で初めて披露されたものです。この曲を20年ぶりに聞いた私の脳裏には、あの皇居前広場での様子が浮かび上がりました。

今回の演奏は、牧阿佐見バレエ団による「プリンシパル・ガラ」の中で披露されたもので、YOSHIKIさんはバレエダンサーによる踊りと共に、スポットライトの中で演奏したもので、ある意味バレエ作品として新たな形でよみがえりました。
YOSHIKIさんとバレエダンサーにだけ照明が当たり、漆黒の中に浮かび上がる様子は、まさに20年前、皇居前広場での演奏を思い起こさせるものでした。
平成11年皇居前広場に響いた歌声

平成11年11月12日、皇居前広場には多くの参加者が集まり、来賓として来ていた森繁久彌さんやスポーツ界を代表し王貞治さんが挨拶したほか、安室奈美恵さん、柔道の田村亮子さんらがインタビューに答えるなど、財界、政界だけでなく広い分野から多くの人たちが出席しました。

開会当時は雨が降っていましたが、途中から雨もやみ、そんな中、天皇皇后両陛下が二重橋の上に姿を見せられたのです。そして、提灯を持ち、皇居前広場に集まった人たちの祝意に応えられました。
静寂が広がる中、アナウンスと共にYOSHIKIさんはステージに姿を見せます。この日のため、主催者側がYOSHIKIさんに作曲と演奏を依頼していたのです。

緊張した様子で一礼しピアノの前に座ったYOSHIKIさん。静かにオーケストラが曲を奏で始めます。表現力に乏しい私がその曲を書き表すのは難しいのですが、壮大ながら美しいメロディーで、観衆の心を包み込む曲でした。
両陛下も二重橋の上から曲を聴き、微笑みながら言葉を交わされているようでした。

およそ5分。曲が終わると、YOSHIKIさんはほっとした表情で立ち上がって両陛下の方向へと一礼したのです。
今回、私にとり20年ぶりとなる奉祝曲は、やはり涙しそうになるほど美しい曲でした。
「希望を導いて頂いた」
公演終演後、YOSHIKIさんはぶら下がりに応じ、その時のことを次のように話してくれました。
「あの時のことは本当に鮮明に覚えています。ものすごく緊張していたんですが、ちょうど、僕らのバンドが解散して、僕の最愛の友人が旅立った後だったので、本当に自分が音楽家としてこの後、前に進んで行けるんかなって思っているときに、そういう話をいただいて、全力で曲を書いてみたんです」
「雨が降っていたんですが、演奏前に急に雨が止みまして、あの時のとても神聖なる瞬間っていうのが、自分が生かされているんだな、みたいな本当に、感謝の気持ちっていうんですか、陛下に見守られて、演奏できたというのは本当に自分のある種、転機にもなった。自分がまたこれからも音楽家として頑張っていこう、頑張んなきゃいけないんだなと思えた瞬間でした」
「あの瞬間がなかったら、僕は今こうやって活動できてるのかなあ、ぐらいに思います。あの時のことは本当に、第2の人生をいただいた気がしました」

そして、両陛下に対しての感謝の言葉も述べました。
「平成という時代は、決して楽ではなかった時代だと思うんですけども、そういう時代を国民の皆さんに寄り添っていただいて、なんて言うんですかね、希望を導いていただいたというか、それは、感謝しています」
YOSHIKIさんは平成元年に「X JAPAN」としてデビューしました。
それぞれの方に、平成という時代の思い出が詰まっていることを実感しました。
平成という時代が終わっても、記憶に残る30年となることでしょう。
【執筆:フジテレビ 解説委員 橋本寿史】
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