岩手県一関市で100年以上続く老舗「京屋染物店」が運営する「縁日」は、暮らしの中で使われてきた道具の販売やワークショップなどもあり、地域の文化を体験できる複合施設だ。
中條奈菜花アナウンサー
「2024年10月から販売されるのが、『マタギもんぺ』という作業用ズボンです。どんなズボンなんでしょうか」
「マタギもんぺ」を手掛けたのは、京屋染物店の専務・蜂谷淳平さんだ。
(Q:マタギとは?)
京屋染物店 専務 蜂谷淳平さん
「マタギは東北地方に暮らす狩猟採取を生業としている山の民のことで、秋田から発祥されたと言われている。秋田でもクマなど山の恵みを糧としながら生きる山の人たちのことをマタギと言う」
このマタギたちが着用していたのが「マタギもんぺ」で、身近にある木綿や麻などの素材を使い、山で快適に過ごすために作られたが、時代の変化と共にジャージなどに代わっていった。
京屋染物店 専務 蜂谷淳平さん
「(衣食住のうち)食と住は注目されるが、衣はなかなか注目されない。そんな中でマタギの衣の文化は、しっかりと(マタギもんぺ)にあった。『マタギもんぺ』を復活させることで、マタギ文化を衣の部分からしっかり継承させ、自分たちも関わりたいので一緒に作ることになった」
この「マタギもんぺ」を復活させるきっかけとなった人物が、広島から秋田へ移住してマタギとなった益田光さんだ。
マタギ 益田光さん
「マタギが昔着てた衣装はあるが、それは衣装ではなく当時の最先端のファッションだった。だからモンペがあって、着物みたいなもの、毛皮があって、笠をかぶっているあのイメージですね」
「あれからマタギの衣のイメージって更新されていなかったので、今の時代に合った服装を更新したい、作り直したいということで『マタギもんぺ』から始まった」
今の時代に合わせてつくられた「マタギもんぺ」は、作業に適した従来の機能性を受け継ぎつつポケットを追加し、さらに足袋や長靴を履きやすいよう細くなった膝下が特徴だ。
(Q:マタギもんぺをマタギとして実際に使用してどうだった?)
マタギ 益田光さん
「これは凄く良い。しゃがんだ時にスムーズに開閉しやすいようになっている」
益田さんも高評価の「マタギもんぺ」は、他にも多くのベテランマタギたちに話を聞きながら作り上げた。
(Q:どんなことを心がけて制作したか?)
京屋染物店 専務 蜂谷淳平さん
「まずは徹底的にリサーチしようと思った。マタギがつないできた衣装の文化に介入することになるので、その責任は重いと思った」
「しっかりリサーチして、分かったうえで何を変えずに何を変えるのか、しっかり考えて作ろうと決めていた」
昔から受け継いできたマタギもんぺをベースに、今の時代に合わせた機能性とデザインを取り入れた。
京屋染物店 専務 蜂谷淳平さん
「大きな特徴はおしりの大きなタック。昔のモンペは倒しが逆になっている。右利きの方が多いので右の方にポケットをあしらっている」
「シルエットも、もう少し太いつくりだったがさらに細くし、ゆとりを持っているので、よりスタイリッシュに動きやすい造りにバージョンアップしたと思っている」
「マタギもんぺ」の制作資金は100万円を目標にクラウドファンディングで募り、結果は1日で達成した。
募集期間のわずか1カ月ほどで、その10倍以上の約1000万円が集まった。
京屋染物店 専務 蜂谷淳平さん
「マタギの文化が、たくさんの人の所に届いた。凄く良い結果がもらえて本当に幸せだなと感じている」
多くの人が関心を寄せている「マタギもんぺ」は、カラーバリエーションも豊富でどんなシーンにも合わせて着ることができる。
(Q:マタギもんぺをどのように使ってもらいたいか?)
京屋染物店 専務 蜂谷淳平さん
「自然の中で活用できる暮らしの知恵がたくさん詰まっているので、自然が好きな方にたくさん履いてもらって、マタギ文化を感じてもらいたい」
マタギ 益田光さん
「この『マタギもんぺ』をきっかけに『マタギ』の存在を知ってもらえたらうれしい。マタギたち自身、このもんぺを履いて進んでいきたい」
「マタギもんぺ」の発売は10月中旬を予定している。