再選に「強力な武器」を得たトランプ大統領

2016年のアメリカ大統領選をめぐるロシア疑惑の捜査が終結した。民主党は捜査結果の全面公開を求めて追及姿勢を続けているものの、端的に言えば、最大の焦点だったトランプ陣営とロシアの共謀は「シロ」だった。ホワイトハウスはこの捜査結果を一斉に歓迎し、これを祝うトランプ支持者がトランプタワー前を埋め尽くした。

この捜査結果は、今後にどう影響するのか。焦点は、来年行われるアメリカ大統領選だ。ワシントン・ポストは、「トランプ大統領再選のための最高のシナリオ」などと伝えた。また、NBCニュースは「これまで民主党の追及の手段だったロシア疑惑が、トランプ大統領再選の強力な武器にかわる」として、仮に捜査結果の非公開部分にトランプ大統領の問題行為が含まれていても、今後は多くの有権者が「問題なし」と判断する、などと指摘している。

実際、トランプ陣営の公式ホームページをクリックすると、一面に「共謀はなく、完全に疑いが晴れた」との文字が掲載される。今後のキャンペーンでこれが「武器」になる模様だ。

乱立の民主党 トランプ大統領に勝つ“秘策”は…

“足枷”がなくなったトランプ大統領を迎え撃つ民主党側に秘策はあるのか。 

民主党候補者らの最新支持率(リアル・クリア・ポリティクス)
1位 ジョー・バイデン(男性・中道) 29,6
2位 バーニー・サンダース(男性・左派) 23,8
3位 カマラ・ハリス(女性・左派) 10,0
4位 ベト・オルーク(男性・?) 8,8
5位 エリザベス・ウォーレン(女性・左派) 6,6
6位 コーリー・ブッカー(男性・左派) 3,8

ジョー・バイデン前副大統領

最新の世論調査によると、1位はバイデン前副大統領。上院議員を36年、オバマ政権の副大統領を8年務め、「ジョーおじさん」のニックネームで広く浸透する重鎮だ。来月下旬にも出馬表明をすると伝えられ、動向が注目されている。なぜ、今バイデン氏なのか。

地元メディアが、こぞって伝えるのは「急進左派は選挙区で有利だが、大統領選を勝ち抜くのは中道派だ」という見方だ。急進左派はキャッチーな政策を打ち出せるため、選挙区単位では有利だが、最終的に1対1で争う大統領選は、無党派層の取り込みがカギとなる。そのため、急進左派より中道派の方が票をとれる、とする考えだ。実際、民主党支持者に話を聞くと、次の大統領選では政策よりも「勝てる候補」を優先させるとの意見が目立つ。民主党候補者に左派が目立つ中、バイデン氏には「勝てる中道派」としての期待が集まる形だ。

バーニー・サンダース候補

ただ、バイデン氏は現在76歳。2位のサンダース氏(77)とともに、高齢が懸念されている。仮に大統領になれば、70歳で就任したトランプ大統領の記録を塗り替え、歴代最高齢の大統領になる。この懸念を払拭するため、いくつかの戦略が浮上している。

まずは「1期禅譲」案だ。周辺からは、早期に1期4年のみで禅譲することを表明し、支持者の懸念を払拭すべきとの声が出ている。しかし、それではレームダック化するとの指摘もある。トランプ大統領もしかり、現職大統領は再選を狙い、一期目で成果を残そうとがむしゃらに働く。再選を狙わない大統領は、その作用がないため政策を実現できないという指摘だ。

もう一つは、「ランニング・メイト(副大統領候補)」に注目の若手政治家を起用するという案だ。万が一のことがあっても、副大統領が指揮を執れるというセイフティネットや若手目線の政策も取り入れるというイメージを打ち出すことができる。候補として、去年、保守王国ジョージア州の知事選に民主党候補として出馬し、僅差で敗れた黒人女性ステイシー・エイブラムス氏、またすでに大統領選へ出馬表明したカマラ・ハリス氏、オルーク氏などが取りざたされている。

カマラ・ハリス候補

しかし、懸念は高齢だけではない。バイデン氏は度々口を滑らせる「失言王」としても有名な他、出馬した場合には何らかのスキャンダルが明るみにでるとの観測もあり、不安材料を抱える。

ダークホースも意外と不人気!?

ベト・オルーク氏

一方、地元メディアが両氏と並んで注目するのは“ダークホース”のオルーク氏だ。他候補に知名度で後れを取っていたものの、出馬表明から24時間で610万ドル(約6億8千万円)を集めた。最初の1日で調達した額が今回の候補者の中でトップとなり、期待を集めている。この献金額は、選挙戦での人気を占う試金石となるため、重鎮バイデン氏ですらも自身が出馬表明した際いくら集められるかを気にしていると報じられている。

老舗ファッション誌が特集を組んで、その人となりを紹介し、一躍、若手ホープの座を手にしたオルーク氏だが、先行きは不透明だ。早くから期待が集まった反動か、意外なことに批判的な報道も目立つ。10代のころにハッカー集団に所属していたことなどが報じられ、オルーク氏は度々釈明に追われている。しかし、今度は簡単に謝罪に応じる姿が弱腰と映り、「若い頃の不正行為だけでなく、ありきたりなコメント、自分が白人男性であることにすら謝ってしまう」と批判されている。

大統領選まで1年7か月。候補者を取り巻く国内外の情勢はこれからまだまだ変わる。「武器」を得たトランプ大統領を迎え撃つ新たな策が出てくるのか、今後の動静に注目だ。

【執筆:FNNワシントン支局 瀬島 隆太郎】