新年度が始まるまで、あと少し。
就職を控えた新社会人の皆さんは「バリバリ仕事を頑張りたい」「周囲に迷惑を掛けずに働けるだろうか」などと、期待と不安でいっぱいではないだろうか?
こうした中、社会福祉士のNikovさん(@NyoVh7fiap)が、新社会人に向けたツイートが話題となっている。このツイートがユーザーの共感を呼んでいるようで、9万以上のリツイートと20万以上のいいねを獲得している。(3月27日現在)
そのツイートがこちら。
もうすぐ新社会人の皆さま、
ほうれんそう=報告、連絡、相談 ですが、
こまつな=困ったら、使える人に、投げる。
きくな=気にせず休む、苦しいときは言う、なるべく無理しない。
最もしてはいけないのは、 ちんげんさい=沈黙する、限界まで言わない、最後まで我慢。
社会人の心得として、昔から言われている“報告・連絡・相談”の「ほうれんそう」だけでなく、「こまつな」や「きくな」があるのだとか。逆にしてはいけないことが、「ちんげんさい」だというのだ。
上手に葉物野菜でまとめられているが、聞きなれない言葉ではある。働き方改革が進められる中、時代の変化に合わせた今っぽい内容に思えるが、実際の現場でも有効なのだろうか?
社員研修などを行うキャリアコンサルタントのADVANCE代表・井手奈津子さんに話を聞いた。
「ほうれんそう」は組織で働くうえでの義務
――ほうれんそうは、今の時代でもやはり必須か?
「ほうれんそう」の中でも、私は特に「報告は義務」と常々、話しています。報告というのは時代に関係なく、組織で働くうえでの義務です。「新人の仕事はほうれんそう」だと思われる方もいますが、管理職など全ての社員において重要です。
ただし、昔と違って必ず対面でしなければならないということはありません。電話などで済ますことも増え、時代に合わせて変わってきています。
今は、「緊急時以外はいかに相手の仕事の邪魔をしないか」が求められているようで、さりげなく「ほうれんそう」をするとよいでしょう。相手に合わせて、メールなどのツールを上手に使う必要があると思います。
――なぜそこまで報告は重要なのか?
組織においては、リスク管理となるからです。仕事は上司などから指示を受けて、完了報告をもって終了となります。もちろん、相談や連絡も随時する必要はあります。
このときに、万一トラブルなどが起きた場合に、早く報告することでリスクを最小限に抑えることができるのです。ですので、役職などを問わずに全員で共有しないといけません。
また、「ほうれんそう」をしっかりとやっていれば、最終的には自分の身を守ることにつながります。報告をせずに大きなトラブルになってしまうと、誰も手助けしてくれない可能性があります。もし早い段階で報告をしていたら、周囲がカバーするなどの手を打つこともできるのです。
「こまつな」「きくな」「ちんげんさい」は専門家も初耳

――「こまつな」「きくな」「ちんげんさい」も一般的か?
どの言葉も初めて聞きました。「おひたし=怒らない、否定しない、助ける、指示する」は知っていましたが、この3つを使っている現場を私が知る限りではありません。
ただ、「こまつな」の「困ったら使える人に投げる」と言うと語弊がありそうですが、どの職場にも仕事をうまく振れる依頼上手な人がいますよね。確かに、困った時に同僚らをうまく巻き込み、お願いできたらいいと思います。
――「きくな」はどうか?
ストレスチェック制度などを導入した、今の時代に合った興味深い言葉だと思います。昔は「なんでも頑張れと発破をかける時代」でしたが、日本社会全体がメンタルヘルスの視点から、「無理せずに休もう。苦しかったら言おう」という時代になっています。ひとりで抱え込まないこと、決して無理をしないことが大切です。
――やってはいけないという「ちんげんさい」は?
これを続けていると、やはり心身の不調が心配です。しかし実際は、何かを発言するとすべて否定される環境、沈黙するしかない状況もあります。
「言わない」ならまだよいですが「誰にも言えない」という状況は心配ですし、これをやっていると、「ほうれんそう」にも影響が出ると思います。

――まとめとして、新入社員にとって1番重要なことは何?
入社してすぐはまだ仕事内容がわかっていない状況です。そして「ほうれんそう」と言っても、まだピンとこないと思います。そこで、今重要なのは、本当に基本的なことですが、普段から大きな声で挨拶をし、素直に返事やお礼をすることです。
これらを続けていると、先輩たちにかわいがってもらえ、円滑なコミュニケーションが図れます。かわいがってもらえて普段から雑談などができる新人さんは、総じて「ほうれんそう」が上手です。他愛ない会話の中で、さりげなく報告などができるからです。
「ほうれんそうを頑張ろう」というのもよいのですが、普段から先輩や上司とコミュニケーションを取っていることが、最終的に「ほうれんそう」のしやすさにつながると考えています。「飲み会はいらない」などと上の世代とのコミュニケーションを避ける傾向もありますが、そのような今だからこそ、逆によりたくさんの交流が必要なのではないでしょうか。

――一方の上司や先輩はどういう雰囲気を作っていけばいいいか?
「部下はほうれんそうができていないんだよね」という方に限って、ご自身に課題があることが多いようです。報告してこないということは、「ほうれんそう」の重要性をきちんと伝えていないとか、話しかけられたときに眉間にシワが寄っている、などの要因があります。そのような上司ですと、特に悪い報告をしたくないですよね。
「ほうれんそう」が周知されている職場というのは、話しかけられたら忙しくても手を止める、最後まで話を聴く管理職の方が多いです。
また、トラブル案件の報告でも頭ごなしに怒るのではなく、加えて「早く伝えてくれて助かった」などと素直に報告してきた態度そのものを認めることがよいでしょう。
「こまつな」「きくな」「ちんげんさい」も一理ある内容ということだったが、やはり大切なのは「ほうれんそう」のようだ。新社会人の皆さんには、まずは「ほうれんそう」をする習慣をしっかりと身につけ、仕事の経験を積んでいくとよいだろう。