人気アイドルグループ旧「関ジャニ∞」(現SUPER EIGHT)のファンから「聖地」と呼ばれている神社がある。東京・北区の「赤羽八幡神社」だ。
この記事の画像(6枚)お守りや、絵馬、御朱印帳にも「∞」のマークがあしらわれていることから、ファンの間で話題となり多くの参拝客が訪れるようになった。
この神社が国税から巨額の所得隠しを指摘されたことが判明した。その額は、7年間で2億5000万円に上るという。宗教法人が所得隠しを指摘されるケースが近年、全国で相次いでいるという。その訳を探った。
神社の収入を自分の口座へ 食事や買い物に私的流用
東京国税局は、宮司が人気のお守りの売り上げやお賽銭で得た神社としての収入を個人口座へと移し、食事代や買い物などに私的に使っていたと指摘。
そもそもお守りや御朱印、おみくじの販売などは「宗教活動」の対象であり、法人税法で納税の必要はなく非課税と定められている。だが、宮司はこの収入を個人口座に移し私的流用していたことから、国税は宮司への「給与」に当たると判断。神社が法人として所得税を徴収し源泉徴収税を納める義務があったのに怠ったとして約1億3000万円を追徴課税したとみられる。宮司はFNNの取材に対し「コメントを差し控えます」としている。
全国の宗教法人7割超で源泉徴収漏れ
国税関係者は「今回の件は宗教法人の所得隠しの典型例。税の仕組みをそもそも知らない場合も多い」と話す。2023年3月には和歌山で二つの宗教法人が大阪国税局から計1億5000万円の所得隠しを指摘された。国税庁によると、2023年6月までの5年間に全国8203の宗教法人のうち、7割以上の5824法人で源泉徴収漏れが見つかり、49億円以上を追徴課税したという。
背景には宗教法人ビジネスの広がりも
なぜ全国の宗教法人で所得隠しが相次いでいるのか。背景の1つに、宗教法人ビジネスの拡がりがある。今や宗教法人が手がける事業は、駐車場、霊園、幼稚園、物品の製造・販売などと手広い。(文化庁・宗教法人が行う事業に関する調査報告書 令和6年1月)。
神社側は、これら一つ一つが公益活動にあたるかを精査しなければならない。例えば駐車場の経営は、収益活動にあたり法人税を払う義務がある。神社が所有する宿泊施設での売り上げも同様に課税対象だ。
しかし、中には課税対象となるか判断が難しい事業もある。例えば結婚式だ。挙式料は非収益事業で課税対象にはならないが、披露宴での飲食物の提供や席貸しは、収益事業にあたり課税対象になるという。
昨今、インバウンドの増加やSNSでの”バズる”効果もあり、神社仏閣では生き残りをかけたあらゆる広報活動が行われ、多岐にわたった事業ごとに適切な税務処理の判断が必要となるというのだ。
現金収入が納税意識低減の要因に?
別の国税関係者は「お賽銭やお守りの購入は現金でのやりとりが多い。電子決済などと違い記録が残らないことも、納税意識が低減する要因のひとつではないか」と明かし、宗教法人に未だに残る現金での収入が、申告の甘さにつながっていると指摘する。
日本で採用されている「申告納税制度」は、納税者が自ら税務署へ所得などの申告を行うことで納税額が確定する。この制度の根幹は、国民が税法を正しく理解して正しい申告と納税を行うという性善説に則っているのだ。もちろん、申告が正しくない場合は国の機関によって是正される。例えば、宗教法人には税務署の行政指導により、照会文書の提出などが求められることもある。
細かい事業内容を正しく把握したうえでの適切な納税が、今の宗教法人には求められているのだ。収支を正しく申告せず信用を落とせば、参拝者も“御利益“も「∞」(無限大)とは行かないだろう。
【執筆:フジテレビ社会部 小溝茜里】