警察官としての知識や技術、心構えを学ぶ「警察学校」。最近ではテレビドラマの舞台としても取り上げられ話題になった。今回、秋田テレビの記者が学生として秋田県警察学校に1日入校し、授業や訓練を体験した。警察学校は“厳しい場所”であることは間違いないが、それ以上にやりがいを感じ、絆を深められる場所だった。
秋田市にある県警察学校の1日を体験したのは下司七虹記者。「制服を着るとが身が引き締まる」と少し緊張した様子で体験を開始した。
1時限目の授業は「点検教練」。警察手帳や手錠、警棒などの警備品を素早く取り出し、号令に合わせて行進する。記者も挑戦したが、真っすぐ歩くだけでも一苦労だった。
1時限目の体験の様子について学生に聞いてみると「私たちもまだまだ足りない部分あるが、記者も上手にできていた」という声があった一方、「50点くらい。隊列が乱れていたかなと思う」と辛口の評価も。
2時限目は、事件で犯人を割り出すために必要な指紋や足跡を調べる「鑑識作業」。記者は指紋採取を体験した。採取のポイントは、付いている指紋がつぶれないように、優しく丁寧にはけを動かすことだ。
昼食をはさみ、最後の授業は「警察学校の授業で最も厳しい」と言われている「警備実施」。暴動などが起きた際の対応方法を学ぶ訓練だ。本来は7キロ以上ある装備品を身に着け、約5キロの盾を持つが、今回は盾だけで挑戦した。
1日だけでくじけそうになったが、学生たちは実技はもちろん、法律など警察官としての学びを深め、強い気持ちで日々の生活を送っている。
2024年4月に入校した力士出身の中川力斗巡査(30)は、入校式の際「相撲時代も寮生活で似ているところもあるので、教えられることがあれば教えていきたい。お兄ちゃん役として頑張らなければならないし、若い人に負けないようにフレッシュに頑張りたい」と話していた。
あれから約5カ月。
中川巡査は「年齢を感じる部分、昔だったらもう少し動けていたのにな…という部分がある。そこは気持ちと、同期が元気でやっているので自分も負けていられないという気持ちで頑張っている。力士の現役中は秋田の人にお世話になったので、今後はそれを恩返しする形で、警察官として県民を一人でも多く守れるような警察官になりたい」と語った。
一方、佐藤幹汰巡査(18)は、2023年8月に病気で亡くなった白バイ隊員だった父の背中を追いかけるように警察官を志した。
入校式で佐藤巡査は「父が警察官で、父の姿を小さい時から見ていて『かっこいいな』と憧れて決めた」と話していた。
そして、佐藤巡査の母親は、涙をこらえながら「主人の若い頃とそっくりなので、開会の言葉からグッときてしまった。頑張ってくださいの一言」と息子を励ましていた。
5カ月の警察学校での生活を経て、志はさらに高くなっているようだ。
佐藤巡査は「厳しい訓練もあるが、つらいとか辞めたいと思うことは全くない。同期とコミュニケーションをとって訓練や授業を乗り越えているから。警察官として県民の安全を守る姿を見せることが一番の恩返し。これから一人前の警察官になれるように学校生活を過ごせていけたらと思う」と意気込む。
県民の生活と安全を守る警察官。ともに過ごす仲間の存在と、警察官としての強い思いが一人一人を突き動かしてる。
1日の体験を終え、無事に卒業できた。大変なこともあったが、励まし合い、支え合う仲間がいるからこそ乗り越えられるのだと感じた。
2023年の秋田県の警察官採用試験の倍率は2.0倍で、全国で最も低い結果だった。
「厳しい世界」と思う人は多いと思うが、厳しさ以上に多くのやりがいや絆などを得られる仕事なのかもしれない。