福岡・久留米市に2024年5月にオープンした「のぞえ牧場ギャロップ」。乗馬用の広い練習場と馬小屋が併設された敷地には、現在6頭の馬が飼育されている。精神科病院などを運営する久留米市の医療法人「コミュノテ風と虹」が、馬との触れ合いを通して患者が心身を癒やすホースセラピーを行う施設として開設した。
ヨーロッパで盛ん ホースセラピー
馬の体を手入れすることから牧場の1日は始まる。この牧場で働く岡崎星周さん(19)。岡崎さんは3月に特別支援学校を卒業。5月の牧場オープンからスタッフとして携わり、現在は週5日、牧場で働いている。仕事内容は馬小屋の掃除や餌やり、散歩など1日中、馬と関わり、馬と一緒に過ごす。
この記事の画像(8枚)ヨーロッパで盛んに行われているホースセラピー。馬と一緒に動き筋肉を使うことで、柔軟性や内臓機能など体の健康増進に繋がる身体的効果と馬の世話や触れ合いでストレス軽減や仕事に対する自信を持てるようになる精神的効果があるという。
動物や人と、少しずつコミュニケーションを取ることで、自信が芽生え、恐怖心が薄れていく。そしてその後、社会に入っていく。という流れを目指しているという。
「馬の力の大きさを認識している」
「ホースセラピーというのは、人が抱えるいろんなストレスとか生きづらさとか、少しでも柔らかく馬はしてくれる。ここで、たくさんの患者が働いていますけど、その人たちが本当に日々変わっていくんですよ。馬の力の大きさを私たちも再認識している」と「コミュノテ風と虹」の堀川公平理事長は話す。
医療法人が開設したこの施設は、病院に通う患者の療養と就労支援を兼ねている。岡崎星周さんの主な仕事は厩舎(きゅうしゃ)掃除。「馬たちが出ているときにキレイにしないと。清潔感がないからキレイにしています」と話す岡崎さん。小さい頃から、人とのコミュニケーションが苦手だったという。
「最初は恥ずかしがって、厩舎の裏に逃げたりしてたんですけど、いまではいろんな人と話ができるようになって、馬と触れ合いながら楽しんでやっているようです。休憩時間も自ら馬のところに行って、なでたりして」と働き始めて4カ月ほど経った岡崎さんに変化が見られることを牧場スタッフの山田麻由さんは話す。
岡崎さんも「最初はちょっとだけだったけど、だんだんなれて馬が横に来るようになった」と仲良くなっている感じがしているという。岡崎さんの気持ちは馬にも伝わっているようだ。
馬に伝わる人の思い そして変化
「お疲れ、星周!終わった?」。午後5時。迎えにきたのは、岡崎さんのお母さん。岡崎さんがこの施設で働き出して家庭でも嬉しい変化があると話す。「学生の頃とは、びっくりするほど大違いです。いままでは自分から話すことが少なかったので『きょう何した?』って聞かないといけなかったんですけど、自分や職場のことを話すようになった。馬に癒やされているのが、精神的にもいいのかなってすごく思っています」と笑う。
今後は牧場の一般開放も計画されていて、堀川公平理事長は心を休める場として利用してほしいと話す。「まずはホースセラピーに関心を持ってもらう。別に治療ということだけでなくて健康といわれる人たちもたくさんストレスを抱えています。みんなが馬に触れ合ってくれて何らかのきっかけにしてもらえたら」
欧米では盛んに行われているが日本では、まだまだ知られていないホースセラピー。関係者は、全国の病院でも取り入れられるようになってほしいと話していた。
(テレビ西日本)